社員の採用の際にも反社チェックが必要だとされていますが、その理由や実施方法がよくわからないと悩んでいませんか?
反社チェックは取引先だけでなく従業員に対しても必要で、入社前(雇用契約を結ぶ前)に行うのがベストです。
本記事では、反社とは何かという基本から、入社前に反社チェックを行うべき理由と具体的な実施手順・方法を分かりやすく解説しています。
新入社員に反社会勢力がまぎれ込むのはレアケースですが、万一まぎれ込むと企業価値を損なう重大事態に発展しかねません。企業のコンプライアンスを守る入社前の反社チェックに、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
目次
従業員に反社がいることのリスク
反社(反社会的勢力)と一切関係を持たないのは、企業のコンプライアンスの重要な要件の1つです。したがって、反社排除を掲げる企業の内部(従業員)に反社がいること自体がコンプライアンスに違反します。
さらに、従業員が反社であることによって、下記のような被害を被るリスクがあります。
反社と勝手に取引する
従業員自身が反社の場合は、反社と関係を持つことへの抵抗感がどうしても小さくなります。
その結果、例えば自己の営業のノルマ達成が難しくなった場合などに、反社の構成員と販売契約や保険契約を結ぶ、反社のフロント企業のパーティー会場の予約を受けるなどのコンプライアンス違反を犯してしまう可能性があります。
企業秘密や個人情報を反社に漏洩する
反社の従業員には、反社の知人や友人がいる可能性が高いので、故意あるいは無自覚に企業秘密や会社の弱み、顧客の個人情報などを反社に漏洩する恐れがあります。
そのような情報が反社に漏れると、恐喝や企業の乗っ取りなどの悪だくみに利用されるリスクがあります。
会社の信用・評判を落とす
従業員が反社であることを会社が把握する前に、世間の噂になる可能性もあります。
例えば、取引先の社員が夜の繁華街で、従業員が見るからに暴力団風の男と連れ立って歩いているのを見かけるなどです。
そんな噂は取引先からさらにその取引先へと拡散して、会社の品位や信用を落とすことになります。
入社前に反社チェックが必要な理由
雇用関係が発生した入社後に解雇しようとしても、労働契約法で従業員の権利が守られており、一方的には解雇できません。
とくに、就業規則に「反社と判明したら解雇する」などの規定がないとトラブルになりがちで、解雇までには非常に手間がかかります。また、このようなトラブルをきっかけに反社が関係を持とうと画策する恐れもあります。
しかし、入社前なら「不採用」の通知だけで済みます。現実に採用候補者が反社であることが判明するのはまれだとはいえ、チェックをおろそかにすると、深刻なダメージを受けることがあります。
入社前の反社チェックの実施方法
入社前の反社チェックの実施方法について、①事前の準備、②実施手段、③実施のタイミングの3つの観点から解説します。
企業が準備しておくこと
入社前に反社チェックを行うことを候補者に理解してもらい、その後のトラブルなどを回避するために、下記の3つを準備しておきましょう。
①企業としての反社排除宣言
最近は、会社HPなどで、反社排除を表明する企業が増えています。反社排除宣言には反社からの接触をけん制する、顧客をはじめとするステークホルダーの企業イメージを良くするなどの効果があり、採用面では反社の応募を予防する効果が期待できます。
②就業規則に反社と判明した場合解雇することを明記する
就業規則に明記することで、万一入社後に反社であることが判明した場合に、トラブルなく解雇することができます。
就業規則に盛り込む内容には、次のようなものがあります。
・暴力団等の活動に荷担する、又はそれらの活動を助長する行為(資金提供や便宜供与等)を行わないこと
・自己又は第三者の不正の利益を図る、又は第三者に損害を与えるなど、暴力団等を不正に利用する行為を行わないこと
・自己又は第三者を利用し、自身や自身の関係者が暴力団員である旨を伝えないこと
暴力団等との関わりを将来にわたって持たないこと
・上記への違反が判明した場合、懲戒解雇又はその他懲戒処分を科すものとする
③採用前に反社でないことの誓約書を取る
反社に属していないこと、反社と関係を持っていないこと採用前に表明させる誓約書を用意しておきましょう。
誓約してもらう内容は次の3点です。
- 私は、反社会的勢力との関係を有していません。
- 将来においても関係を持ちません。
- 誓約に違反したときは、内定取消や解雇をされても異議ありません。
このような誓約書も、反社と判明した場合にトラブルなく解雇するのに役立ちます。
反社チェックの具体的手段とそのメリット・デメリット
反社チェックの具体的手段には次のようなものがあります。
- 公知情報を調べる
- 反社チェックツールを使いデータベースに照会する
- 調査会社や興信所に調査を依頼する
- 警察や暴追センターに問い合わせる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
公知情報を検索する
インターネットを利用して公知情報(一般に公開されている情報)を検索することで、採用候補者と反社の関係が判明することがあります。
具体的には、候補者の氏名を用いてWeb上の情報をGoogle検索やYahoo検索で検索します。
【メリット】
・Google検索、Yahoo検索は無料で行える
【デメリット】
・反社チェックに必要なのはネガティブ情報のみだが、それ以外の雑多な情報も同時にヒットする
・同姓同名の別人物がヒットする可能性がある
反社チェックツールを使い、ツール独自のデータベースに照会する
反社チェックツールとは、公知情報の中からネガティブを検索できるツールです。候補者の氏名や会社名をまとめて入力するだけで公知情報によるチェックを行えます。
新聞記事や雑誌記事をデジタル化したデータをデータベースで検索します。
【メリット】
・時間・工数をかけずに公知情報のチェックが完了する
【デメリット】
・ツールを利用する費用がかかる
調査会社や興信所に調査を依頼する
公知情報の検索でネガティブ情報がヒットした場合、それだけで採用を見送ると、実は同姓同名の別人で有望な人材を採りそこなう、WebやSNSの情報が根も葉もないフェイク情報だった、などの可能性もあります。
公知情報によるチェックは、あくまで一次チェックと考えて、そこで欲しい人材に黄色信号が点いた場合は、調査会社・興信所に依頼するとチェックの精度が高まります。大量採用をする企業でも、公知情報で怪しい点が見つかるのはレアケースなので、多人数の調査を依頼する必要が生じることはありません。
【メリット】
・公知情報では知りえない精度の高いチェックができる
【デメリット】
・費用が比較的高額で、採用コストを押し上げる
警察や暴追センターに問い合わせる
雇用契約前の反社チェックでは、警察や暴力団追放センターに相談するケースはほとんどありません。
警察や暴追センターに相談する必要が生じるのは、すでに雇用契約を結んだ従業員を解雇する場合や、取引先との業務契約をトラブルなく解除しようとする場合です。
反社チェックを行うタイミング
反社チェックを行うタイミングは、入社前(雇用契約を結ぶ前)がベストですが、入社前の採用プロセスのどこで実行するかは「採用手法や採用人数」と、実施する「反社チェックの手法」によって異なります。
例えば次のようなタイミングの選定が考えられます。
- 採用人数・面接人数が多い場合:内定前
- 人材紹介:面接前あるいは内定前
- ダイレクトリクルーティング:面接前あるいは内定前
- リファラル(縁故)採用:内定前
また公知情報チェックに工数がかからない反社チェックツールを利用する場合は、応募者(候補者)全員に公知情報による反社チェックを実施することも可能です。
入社前反社チェックの注意点
入社前の反社チェックは、入社後の反社チェックと違い、対応によってはトラブルに発展するなどの心配は少ないですが、調査する相手は人間なので、それなりの配慮が必要です。
反社の定義やチェックの範囲について経営層とよく話し合っておく
反社の定義は必ずしも明確ではないので、あらかじめ経営層を含めてよく協議し、チェックの範囲や手段、タイミングなどを意思統一しておく必要があります。
誓約書の準備や就業規則への反社項目の追加なども、もちろん経営層との相談が必要です。
反社チェックと個人情報保護法の関係
反社チェックのデータベースには、氏名、生年月日、住所、逮捕歴、指定暴力団への所属の有無などの「個人情報」が記載されています。
この個人情報を本人の了解なしに、企業間でやり取りしたり、共有・保管するのは、まさに個人情報保護法違反に該当しますが、反社チェックが目的の場合は例外として認められています。
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(法務省 平成19年)に関する同省の解説には、反社チェックにおいて個人情報をやり取りまたは共有するのは、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」に該当すると明記されています。
反社チェックは専用のツールがおすすめ
取引先や従業員の反社チェックには専用のツールがおすすめです。
RoboRoboコンプライアンスチェックは、チェック作業の多くの部分を自動化することによって、手間と時間がかかる公知情報による反社チェックを驚くほど楽にします。
チェックしたい個人や取引先をExelのドラッグ&ドロップで簡単に一括登録でき、1クリックでインターネット記事と新聞記事を同時検索できます。
検索結果は、AIが注目度を高・中・低の3段階に選別して、注目度の高い記事から配列します。
チェックによって得られた証跡(後々の証拠となるような痕跡)をまとめてダウンロードでき、その都度保存する必要がありません。
さて、ここまでは入社前の反社チェックについて説明してきましたが、以下ではそもそも反社とはどのような存在で、なぜ反社チェックの必要性が強調されるようになったのかを解説します。
反社とは?
反社とは、公正で安全な社会をおびやかす反社会的勢力のことです。反社チェックは、企業が反社会勢力と関係を持たないための、取引先や従業員に対するチェックです。
反社の種類
反社には、次のようなものが含まれますー暴力団、半グレ集団、暴力団関係企業(フロント企業、企業舎弟)、総会屋、社会運動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団
特殊知能暴力集団とは、反社会的勢力と結託して、法律やインターネットなどの専門知識を悪用して、インサイダー取引、株価操縦、企業乗っ取りなどをたくらむ集団です。
企業と反社会勢力の接点
ヤクザ映画では「カタギの衆に迷惑をかけないのが任侠道だ」などと言いますが、実際はカタギから金品をむしり取ることでしか反社は生き延びることができません。
そのため、反社はさまざまな機会に企業に近づき、ガードが甘いと見ると接触してきます。
取引先、従業員、顧客に反社の構成員あるいはその関係者がいると、知らず知らずのうちに、あるいはどこかにほころびが生じたタイミングに関係を持ってしまうリスクがあります。
企業が反社会勢力と関係を持ってはいけない理由
昔は、地上げ屋なと、企業がもめごとの解決に反社を利用することがありましたが、近年そのような行為は厳しく糾弾されるようになりました。それには下記のような理由があります。
- コンプライアンスに違反する(政府指針、都道府県条例への違反など)
- 反社に資金を提供することになる
- 世評を落とし企業価値を下げる
- 健全な取引先と契約を締結できないことがある
- 金融機関などから取引を断られる可能性がある
- 株式の上場ができない、あるいは廃止される可能性がある
コンプライアンスに違反し、企業価値を下げる
とくに2007年に政府から「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が示されてからは、反社との関係は重大なコンプライアンス違反とみなされるようになりました。
政府指針を受けて、すべての都道府県が「暴力団排除条例」を制定しています。反社と関係を持つのはこの条例にも違反することになります。
企業活動に支障をきたし業績が下がる。倒産に追い込まれることも
反社との関係は、企業活動そのものにも重大な不利益を招きます。
金融機関を含む取引先は、契約の際に「反社条項」(反社会的勢力の排除に関する条項)を盛り込むのが一般的になりました。反社と関係していることが分かると、一方的に契約を解消されても文句が言えません。
証券取引所も「政府指針」を受けて2007年に「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備について」を発表しました。反社と関係していると株式の上場が認められない、あるいは上場廃止になる可能性があります。
まとめ
反社と関係を持つことは重大なコンプライアンス違反となり、企業活動に深刻な影響を与えるので、従業員の採用においても反社チェックを行う必要があります。
採用の際の反社チェックは入社前(雇用契約を結ぶ前)に行うのが、トラブルを予防するために重要です。
採用プロセスの工数を大幅に増やすことなく反社チェックを行うには、専用の反社チェックツールを利用するのが便利です。
よくある質問
この記事で解説したポイントをQ&A形式でまとめました。 入社前の反社チェックについて確認する際におやくだてください。
反社ってなに?
企業はなぜ反社に関わってはいけないの?
企業が反社に関わると次のようなリスクがあるからです。
- コンプライアンスに違反する(政府指針、都道府県条例への違反など)
- 反社に資金を提供することになる
- 世評を落とし企業価値を下げる
- 健全な取引先と契約を締結できないことがある
- 金融機関などから取引を断られる可能性がある
- 株式の上場ができない、あるいは廃止される可能性がある
従業員に反社がいるリスクは?
入社前に反社チェックが必要な理由は?
雇用契約を結ぶ前に反社チェックを行えば、候補者が反社と判明したときに「不採用」を通知するだけで済みます。
反社チェックの前に企業が準備しておくことは?
- ①企業としての反社排除宣言
- ②就業規則に反社と判明した場合解雇することを明記する
- ③採用前に記入してもらう、反社でないことの誓約書を準備する