反社チェックとは、企業と反社会的勢力のかかわりを避けるための手段です。健全な企業が反社と接点をもつと、企業ばかりでなく、周囲環境も大きなダメージを受けます。
ここでは、企業のコンプライアンス関連の担当者に向け、反社チェックを行う頻度や、チェックをすべきタイミングなどについて解説します。具体的な反社チェックの方法も解説するため、参考にしてください。
目次
反社チェックが必要とされる6つの理由
「反社」とは、個人または集団で活動する「反社会的勢力」を指します。反社は、暴力や恐喝、詐欺などの倫理観に欠ける手段により経済的利益を得ています。反社チェックとは、自社の取引先や契約する相手が反社ではないか、反社と繋がりがないかを確認する手段です。
暴力団や総会屋のように、明らかに危なそうな反社ばかりではありません。一般企業のように、社会に紛れ込んでいる反社にも注意する必要があります。
企業存続のため
反社との取引は、反社に資金を提供したとみなされる可能性があります。相手が反社であると知らなかったとしても、外部からすると真偽はわかりません。いずれにせよ、企業イメージの失墜や顧客離れ、取引や融資の停止などが懸念されます。
反社とのかかわりを隠蔽した場合も、行政処分や罰則を科せられます。
反社の資金源を遮断
反社の活動は、治安に悪影響をもたらします。反社と取引をすると、悪質な活動の資金源となってしまいます。反社チェックにより、反社の資金源を断ちましょう。
従業員を守るため
反社とのつきあいは、企業のイメージ損失につながります。反社とのかかわりを知った第三者から「要求を飲まないと、世間に反社とのかかわりを公表する」と脅迫される恐れがあります。従業員を不当な要求から守るため、反社チェックは重要です。
政府の指針
2007年に、政府は「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を示しました。指針では「反社会的勢力による被害を防止するための基本原則」が明記されています。基本原則をもとにすると、暴力団など反社に関する禁止事項や、反社とかかわりをもってしまった場合に取るべき行動がわかります。
暴力団排除条例
各都道府県が「暴力団排除条例」を定めています。条例の目的は、一般市民の暴力団との接触防止です。
条例では企業に対し、取引や契約の相手への反社チェックを求めています。反社チェックは努力義務であるため、チェックせずとも罰則はありません。また、条例の内容は自治体ごとに異なります。
金融庁の指針
政府の指針を受け、金融庁も2008年に金融機関を対象とする監督指針を定めました。指針には、反社会的勢力に対する被害を防ぐための、具体的な規定が盛り込まれています。たとえば、金融機関には、取引企業の事前審査やデータベースの強化などが求められます。
金融庁の指針は、金融機関のみならず一般企業にも有益です。反社にかかわるリスクを理解し、反社対策を強化しましょう。
反社チェックの頻度について解説
企業活動では折に触れ外部とかかわります。また、企業内の因子にも注意せねばなりません。具体的な反社チェックのタイミングを紹介します。
取引開始のタイミング
新規取引や新規契約の際には、先方の経営者や取引先から、先方と懇意な関係にある弁護士や税理士まで、広範囲にわたって調査してください。契約時に調査が間にあわないケースもあります。調査結果によっては契約を破棄できる旨を、契約の文面に加えておきましょう。
調査実績がなければ、既存の取引先に対しても反社チェックが必要です。チェックは1回で終わらせず、継続的に実施します。
役員就任時や社員の雇用時
企業内の人間に対しても、反社チェックを行うべきです。役員を選出する際には、本人と親族の調査を実施します。新規雇用の際も、反社チェックとして誓約書の提出を求めます。
新規上場のタイミング
新規上場の際は「反社会的勢力との関係が無いことを示す確認書」の提出が義務づけられています。確認書の裏付け調として、反社チェックを実施してください。
確認すべき範囲は、企業や子会社の役員、上位株主、取引先企業などです。提出した確認書をもとに、証券取引所の独自調査が行われます。
反社チェックの3つの要点
取引相手を注意深く観察すると、反社をいち早く見抜ける可能性があります。反社チェックのポイントを紹介します。
取引の経緯をチェックする
取引を開始した理由、流れなどをあらためて確認しましょう。相手が契約を急ぎすぎる、一般的にはあり得ないような好条件を提示されるなど、不審な点を見逃さないでください。加えて、取引相手に問題がなくとも、取引を仲介した相手が反社という懸念もあります。
契約書に反社条項を定める
多くの暴力団排除条例では、契約書に「暴力団排除に係る特約条項」を定める努力義務を定めています。書面を見た取引相手が、該当する条項の削除や修正を申し出た際は、反社の可能性があります。
取引相手に「反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」の提出を求める方法も有効です。相手が提出をためらう、拒否するなどの態度を示した際は、取引を見直すべきです。
現地で所在を確認する
取引相手の事務所や営業所におもむき、実態を確認しましょう。聞いていた情報と比べるとオフィスの規模が小さく感じられる、不審な人物が出入りしているなどの場合は反社かもしれません。人の出入りが見られなければ、ペーパーカンパニーの可能性もあります。
反社チェックの具体的な方法
反社チェックの具体的な方法を紹介します。自社での対応が難しければ、専門調査機関に依頼しましょう。
法人登記を調べる
登記簿とも呼ばれる法人登記には、企業情報がまとめられています。登記情報は、国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できます。
反社の可能性がある内容としては、商号や本社所在地が頻繁に変更されている、法人番号が存在しないなどが挙げられます。イメージがつかない事業が多数掲載されている場合も危険です。不審な点は、徹底的に調査してください。
インターネットで検索をする
GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使って、取引相手にかかわる情報を調べましょう。たとえば、法人名や役員名とネガティブキーワードを組みあわせて検索してください。ネガティブキーワードとしては「暴力団」「違法」「行政処分」「詐欺」「不正」などが挙げられます。
新聞記事のデータベース検索をする
新聞各紙は、過去の新聞記事をデータベース化しています。新聞記事を検索すると、過去の違法行為やスキャンダル、行政処分の内容がわかります。検索キーワードには、取引相手の法人名や役員氏名などを入力しましょう。
最近の情報はインターネットで調べられますが、過去の情報を見つけるには新聞記事が有利です。インターネットには情報量が多く、古い情報になるほど見つけにくいためです。
行政処分情報を調べる
許認可にかかわる業種であれば、それぞれの監督省庁のサイトで行政処分の情報を公開しています。たとえば、建築・宅建業者であれば「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」を見ましょう。
ほかにも、金融商品取引業であれば、金融庁の「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」で検索します。人材サービス業であれば、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」を活用します。
業界団体に照会をする
業界によっては、独自の反社データベースや照会システムがあります。それぞれの業界団体に問いあわせましょう。業界団体とは、利益目的で構成された、特定の業界にかかわる団体です。全国銀行協会、日本証券業協会、不動産流通推進センターなどは、反社のデータを照会できます。
暴追センターを利用する
通称「暴追センター」と呼ばれる「暴力追放運動推進センター」は、各都道府県に設置されています。暴追センターの対応範囲は、反社の判定や情報提供、相談、反社に被害を受けた企業や個人の救済措置などです。暴追センターの会員になると、反社に関するデータを定期的に提供してもらえます。
専門調査機関に依頼する
専門調査機関とは、信用調査会社や興信所を指します。まずは自社で、企業情報の確認やデータベースの検索などを行い、取引相手について調べてください。不審な点が見つかった時点で、専門調査機関に詳しい調査を依頼しましょう。専門調査機関は、内定調査や独自の反社データベースなど、あらゆる手を尽くして調査を実施します。
まとめ
反社にかかわると、企業の存続が脅かされるほどのダメージを受けます。反社とかかわらないためには、反社チェックが必須です。取引相手について自社で調査を実施し、より詳細な調査が必要なときは専門調査機関に依頼しましょう。
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