企業がコンプライアンスを遵守するためには定期的かつ効果的な研修の実施が不可欠です。この記事では、コンプライアンス実務を担当する方のために、コンプライアンス研修のテーマ選び、実施の流れ、カリキュラム策定などのポイントを解説します。コンプライアンス研修の実施を通じて、企業全体のコンプライアンス遵守意識を高めましょう。
目次
企業におけるコンプライアンスとは
コンプライアンスは「法令遵守」を指す言葉ですが、企業に求められるのは単に法令を守ることだけではありません。法令遵守は大前提として、経営理念、企業倫理、社会的意義、モラルなどの多様な価値観を守ったうえでの活動が求められます。企業にとってのコンプライアンスは「社会的責任」と同義ということです。
コンプライアンス研修とは
コンプライアンス研修は社員教育の一環であり、新入社員向けに実施されるのが一般的でした。しかしながら昨今は、中堅以上の社員に対するコンプライアンス研修も継続的に実施すべきとの声も大きくなっています。
コンプライアンス研修の目的
1.リスクマネジメント
コンプライアンス研修の目的の一つが、リスクマネジメントです。社員は企業の顔だという自覚を持たせ、かつ、行動には責任が伴う旨を理解させることを目的としています。個人の行動が企業の不祥事につながるリスクや、「知らなかった」では済まされないことを、社員に周知することが重要です。
2.ルールの共有
コンプライアンス研修には、ルールの共有という目的もあります。従うべき法令や、社会人としてのルール、常識を社員全員に教育しなければいけません。また、法令や社会的ルールの変化に合わせ、定期的にコンプライアンス研修を実施し、認識や情報をアップデートします。
3.社員の意識づくり
コンプライアンスを研修で、「常識のズレ」を解消することが可能です。一般常識、社内の常識、個人の常識の間にはたいていの場合ズレがあります。常識のズレの放置は、不祥事の発生リスクを高めます。
コンプライアンス研修を実施し、定期的に常識のズレを是正することはきわめて重要です。
コンプライアンス研修で期待できる効果
1.社内風土の改革
コンプライアンス研修で期待できる効果の1つ目が、社内風土の改革です。社員は、研修を通じて自社の社会的責任を自覚します。その自覚によって芽生えるのが、企業人としての「誇り」と会社への「信頼」です。
誇りと信頼を持った社員は、企業がリスクを負うことにならないよう、慎重な判断を心がけるようになります。
2.企業価値の向上
コンプライアンス研修は、企業価値向上につながります。社員一人ひとりが、コンプライアンスを軸に行動できれば、顧客や取引先からの信頼が生まれます。地道な信頼の積み重ねなくして企業価値を上げることはできません。
コンプライアンスの種類
コンプライアンスは多種多様です。ここからは、研修で学ぶべきコンプライアンスの種類を大きく5種類に分けて解説します。
消費者関係
消費者関係のコンプライアンス違反によって社会的信用を失う企業は後を絶ちません。消費者関係のコンプライアンス違反とは、たとえば、誇大広告、虚偽広告、産地偽装、欠陥商品や有害商品の販売などです。
投資家関係
企業のなかには、投資家への体面を保つため、または不正に利益を得たりするために、コンプライアンスに違反するものがあります。違反の代表例がインサイダー取引、粉飾決算、カルテル、贈収賄などです。
従業員関係
従業員関係のコンプライアンスは、違反との認識が薄くなりやすいことから、問題が深刻化するまで放置されがちな部分といえます。セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、雇用差別や長時間労働、過労死などが違反の代表例です。
地域社会関係
4種類目は、地域社会関係のコンプライアンスです。この部分のコンプライアンスが薄れると、環境汚染や工場災害、産業廃棄物の不法処理などの問題につながります。定期的な研修によって企業内の環境意識を高く保ち、地域美化活動の実施により地道な意識改革を目指すのが効果的です。
政府関係
企業としての社会的責任に大きく関わっているのが、政府関係のコンプライアンスです。この部分のコンプライアンス意識が希薄だと、脱税、虚偽報告、租税回避など、重い罰則を伴う違反が発生しやすくなります。
効果的なコンプライアンス研修実施までの流れ
コンプライアンス研修を効果的に実施するためには、適切な流れに沿った実施計画を立てる必要があります。ここからは、コンプライアンス研修実施の流れについて解説します。
1.順守すべき法律の確認
最初にすることは、遵守すべき法律の確認です。遵守すべき法律は企業によって異なるため、最初にしっかりと情報を整理します。情報整理の際には、自治体による法令改正などの情報発信の有無も併せて確認するのが重要です。
2.行動規範(社内ルール)の策定
遵守すべき法律が確認できたら、次は、行動規範(社内ルール)の策定です。コンプライアンス遵守のためには、社員全員が社の方針を共有し、絶対的なルールに沿って行動する必要があります。
3.研修テーマ決め
ルールの策定が終われば、研修テーマの決定段階です。テーマの決定にあたって重要なポイントは2つあります。1つは、過去に社内外で起きたコンプライアンス違反の事例を参照することで、もう1つは「話題性」です。
社内や社会において話題性のあるテーマを選ぶことで、研修への関心と知識の浸透率が高まります。
4.対象者を決める
研修テーマ決定後に、テーマごとの受講対象者を決めます。全社員が同じテーマの研修を受ける必要はありません。社内での役職ごとに、最適な研修テーマは異なるからです。テーマごとに受けさせるべき社員の層を慎重に検討しましょう。
5.実施するタイミング
研修を実施するタイミングは、実際に社内外でコンプライアンス違反が起きた直後や、組織の変革や規定の改定があった時などが効果的です。また、新入社員の入社後すぐに実施することもおすすめします。
6.実施形式を決める
研修の参加率を高めるには、研修の実施形式選びが重要です。実施形式には、たとえば、オンライン形式、派遣講師招致、社外研修があります。自社の社員が参加しやすい形式を検討しましょう。
コンプライアンス研修の対象テーマ・ネタ
コンプライアンス研修の実施テーマ、いわゆるネタは多種多様です。ここでは、主要なテーマをいくつか紹介します。
ハラスメント
セクシュアル・ハラスメント、モラル・ハラスメント、アルコール・ハラスメント、パワー・ハラスメントなど、ハラスメントの種類は多岐にわたります。ハラスメントが起きる原因は、常識のズレや危機意識の低さです。
研修では、実際のハラスメント事例を研修の中で多く紹介し、守るべきルールを徹底周知します。
SNSなど情報セキュリティ
個人情報漏洩などの不祥事を防ぐためには情報セキュリティ意識の向上が必須です。また、インターネット上での炎上を防ぐため、SNS関係の内容も外せません。研修では、情報セキュリティに関する違反事例と、違反による具体的損害、違反しないための知識を周知します。
不正受給などの不祥事
不正受給、不正接待、横領などの不祥事を起こせば、信用回復にかなりの時間と労力を要するのが通常です。信用回復叶わず、倒産など最悪の事態に陥る可能性も十分にあります。研修では、不祥事の原因に着目し、予防のための管理体制や企業倫理、危機意識の保ち方などを教えます。
著作権・特許権などの権利
他人の文章や画像などのコンテンツを権限なく流用したり、無断転載したりした場合は、著作権法違反や特許権侵害といった責任を問われます。研修を通じて、著作物に対する社員の意識向上を図ります。
また、著作権法や特許権侵害についての法令的な知識の周知も重要です。
社内通報について
社内通報は、コンプライアンス研修における必須テーマです。違反を察知した社員が、スムーズに相談・通報できる組織づくりの重要性を学びます。また、社内通報のシステム不備によるリスクも、研修内容として取り入れるのが一般的です。
コンプライアンス研修のカリキュラム内容
コンプライアンス研修を効果的に実施するには、充実したカリキュラムが欠かせません。ここからは、コンプライアンス研修のカリキュラム内容を具体的に紹介していきます。
一般的なカリキュラム
まずは、一般的なコンプライアンス研修の内容についてです。具体的には、以下の内容を含むものが主流になっています。
・コンプライアンスの定義
・コンプライアンスが重要視される時代的な背景
・コンプライアンス違反事例
・コンプライアンス違反で企業が負うリスクと損害
・自社に必要とされるコンプライアンス(業務に関連する法令、企業倫理、一般常識)
なお、昨今は、業種に関わらず、「ハラスメント」と「情報セキュリティ」は必須の内容です。
研修資料の構成
コンプライアンス研修に必要なのは充実した研修資料です。主に、次の2つの構成ポイントに注意を払いながら資料作成を進めます。1つ目のポイントは「具体的事例の紹介」です。具体的な事例に目を通すことで、リスクを実感し、危機管理意識がわきやすくなるからです。
2つ目のポイントは、三部構成の研修資料を作成することです。導入・本文・まとめと、構成を三部に分けることで、伝わりやすい資料が完成します
まとめ
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