反社チェックを自社でも取り組むよういわれたが具体的に何をしたら良いのかわからず困っているという担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、反社チェックを取り組む重要性、取り組みを怠った際のリスク、そして反社チェックの具体的な取組み方法についてポイントを解説していきます。
目次
反社チェックとは?
「反社チェックとは何ですか?」と説明を求められた際、意外と正確な回答に詰まりはしないでしょうか?
社内で聞かれても、自信を持って回答していただけるよう、ここではまず定義を解説していきます。
反社チェックとは
反社チェックとは、法人や個人が取引を開始する際に、相手が反社会的勢力に関係していないかを調べる作業のことです。

反社会的勢力とは
続いて反社会的勢力(反社)の定義について、解説していきます。
政府の指針によると、反社会的勢力は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、半グレ集団などの犯罪組織やその協力者がこの反社に含まれます。
出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針 法務省

反社チェックの重要性と難しさ
反社に含まれる集団や個人は、近年組織実態を隠ぺいしたり、企業活動を装う、政治活動や社会運動を標ぼうしたりするなど不透明化、資金獲得活動を巧妙化させています。
こうした背景もあり、反社と知らずに結果的に経済取引を行ってしまう事例や事件が増加しています。知らなかったでは済まない、そのため反社会的勢力と一切の関係をもたないことを掲げ、また企業防衛の観点からも「反社チェック」の取組みは重要性を増しています。
反社チェックを怠った場合の6つのリスク
それでは、反社チェック対策を怠った際に、具体的にどのような企業リスクがあるのでしょうか。起こりえるリスクは6つです。これらのリスクは企業存続の危機に陥る可能性もあるため注意が必要です。

法令リスク
反社チェックを怠って反社会的勢力と関係を持った場合、法令違反に該当するリスクがあります。地方公共団体の条例である「暴力団排除条例違反」においては、反社会的勢力との関係が明るみになれば、罰則を受ける可能性があります。
会社に対して行政指導が入る可能性もあり、社会的な信用を失うきっかけにもなり得ます。
契約違反リスク
十分な反社チェック対策を怠り反社会的勢力と関係を持ってしまった場合、既存の取引先から契約破棄を申し出されるリスクがあります。
取引先の企業が「暴力団排除の条項」を契約書に設けている場合には、契約違反を指摘されて損害賠償等の問題に発展する可能性もあるでしょう。
取引先からの信用も失い、結果的に今後の取引ができなくなることが考えられます。
監督官庁による処分を受けるリスク
金融機関を監督する金融庁では、独自の監督指針や方針を設け反社会的勢力との関係遮断を厳格に監督しています。
反社会的勢力と関係を持った場合、監督官庁の検査を受け、所属する団体の規則等で処分を受ける可能性があり、金融機関からの融資を得られなくなり、資金繰りが行き詰まるリスクもあります。
入札参加資格を失うリスク
公共事業に従事している企業の場合、入札停止等により業績悪化に陥ることがあります。自治体によっては指名停止措置等一覧表を公表している場合もございます。
福岡県の事例↓
暴力団関係事業者に対する指名停止措置等一覧表↓

出典:暴力団関係事業者に対する指名停止措置等一覧表 福岡県
金融機関との取引停止リスク
反社との関係が公になると銀行口座が凍結され経営が行き詰まるリスクがあります。
実際の事例として2021年5月に破産を申し立てた大分県に本社を置いていた管工事会社「九設」は福岡県警が「暴力団関係企業」として公表後すぐに銀行口座が凍結され、わずか10日ほどで破産を申し立てました。倒産時の負債総額は約30億円となりました。
証券取引所による処分を受けるリスク
上場企業の場合、上場廃止に陥る可能性があります。
東京証券取引所が公表している「上場審査等に関するガイドライン」では、反社による経営活動への関与を防止することが求められています。企業は、反社が経営に関与しないように、社内体制の整備と構築を果たさなければなりません。企業が反社との関係を持つことは、企業自身の社会的信用に関わる問題では済まされません。投資家の利益や権利の保護にも影響を及ぼします

出典:上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)日本取引所グループ
6つの企業リスクについて、いかがでしたでしょうか?知らなかったでは済まない、その理由について理解を深めていただけたのではないかと思います。
反社チェックの具体的な取組み方法5選
反社チェック対策の重要性を理解していただけたことを前提にここからは、反社チェックの具体的な取り組み方法について解説していきます。反社チェックの取り組み方法は以下5つになります。

インターネット記事検索
インターネット記事検索は、ニュースサイトやSNSなどで発信されているあらゆる反社会的勢力に関する情報を網羅的に確認ができる方法になります。口コミサイトにあるような情報も取得できるため、噂レベルの情報も収集できるのがインターネット記事検索の特徴と言えるでしょう。また、インターネット検索は無料でコストがかからないことも特徴の一つと言えます。
一方で、検索結果に膨大な記事がでてくるため、どの記事に疑わしい情報があるのかを探すことが課題になりがちです。
Google検索での反社チェック方法
インターネット検索は会社名(個人名)とネガティブワード(反社、暴力団など犯罪を示唆するキーワード)を掛け合わせて検索、探すのが一般的です。
Google検索では検索オプション(Google検索TOP右下押下)を利用すると複数のネガティブワードを一度で検索することができます。
下記の画面で「すべてのキーワードを含む」に対象会社名や個人名を入力し、「いずれかのキーワードを含む」にネガティブキーワードの間にORをいれて入力します。

新聞記事検索
新聞記事検索は、一般的に新聞・雑誌記事のデータベースサービスを使い反社会的勢力に関する情報を確認する方法になります。
各サービスによって内容は異なりますが、専用のサービスサイトから会社名で検索をかけ、取引を希望する企業について過去新聞に取り沙汰されている記事の有無を確認することができます。逮捕や行政処分などの公知情報を収集する手段としては有効と言えるでしょう。
またインターネット記事は古い記事は検索順位が下がり見つけにくくなりますが、新聞記事は古い記事でも見つけることが可能です。
一方で、インターネット検索では確認できる噂レベルの情報や口コミは新聞記事にはないため確認することができないこと、また検索対象が多い場合にサービスの利用料金がかさみがちになることは予め理解しておくと良いでしょう。
専門調査会社への調査依頼
専門調査会社は、法人から個人まで反社会的勢力との関わりについての調査を依頼、2~3週間かけて調査員がレポートをまとめてくれます。交友関係などを含む詳細な調査が可能な点が特徴です。経歴概要、評判、対外的な信用度、不芳情報の有無、民事訴訟歴の有無などの取得が期待できます。

一方で、1件あたり20~30万円がかかる場合もあるため、すべての取引先に実施することは現実的ではありません。インターネット記事検索や新聞記事検索で疑わしい記事が出てきた時に利用を検討すべき反社チェック方法となります。
専門調査会社の調査内容と方法に関する資料サンプル(一部)を参考までに下記に掲載します。

独自データベースを持つ業界団体への問い合わせ
業界団体によっては、業界内の情報を収集した反社会的勢力に関するデータベースを持っていることがあります。
特に反社会的勢力とのトラブルが発生する割合が多い不動産業界や飲食業界などでは、複数の団体が所属する企業や個人からの情報を集めています。
業界団体のデータベースには、その業界ならではの情報が集められているため、通常の調査依頼ではわからないような情報を検索することができます。
新規取引先について、業界団体になんらかの情報が寄せられていないか問い合わせるのは、効率がよく信憑性の高い情報収集の方法です。
業界団体は非常に多岐にわたり多くの団体が存在しています。同じ業界に複数の団体が設置されていることもあるので、情報を集める場合は一つの団体だけでなく複数の団体に問い合わせを行えるとより多くの情報が得られる可能性があります。
業界団体の一覧
これらは業界団体のごく一部です。業界団体は数百団体にものぼり、各業界に多くの団体が存在しています。また、同じ業界内でも分野によって異なる複数の業界団体が結成されています。
調べたい取引先が属する業界にどのような団体が存在しているのかを調べた上で問い合わせを行う必要があります。
不動産系
業界団体名 | 電話番号 |
社団法人不動産協会 | 03-3581-9421 |
社団法人全日本不動産協会 | 03-3263-7030 |
全日本不動産政治連盟 | 03-3239-4461 |
不動産保証協会 | 03-3263-7055 |
社団法人不動産証券化協会 | 03-3500-5601 |
一般社団法人マンション管理業協会 | 03-3500-2721 |
小売り系
業界団体名 | 電話番号 |
日本生活協同組合連合会 | 03-5778-8111 |
日本専門店会連盟 | 03-3255-0640 |
日本専門店協会 | 03-5937-5682 |
全国質屋組合連合会 | – |
東京都古物商防犯協力会連合会 | 03-3256-5839 |
暴追センターや特暴連の会員になり、特殊暴力の情報を入手する
インターネット記事検索・新聞記事検索を実施し、反社会的勢力の疑いが高いものの判断がつかない場合、全国暴力追放運動推進センター(暴追センター)へ相談することで、警察が保有する「暴力団関係者データベース」のリストと照会することが可能です。
ただし、上記リストと照会する際は、予め暴追センターの賛助会員に登録する必要があります。賛助会費は、年会費として1口 50,000円がかかります。
なお暴追センターは全国に48箇所あり、最寄りの暴追センターに相談することをお薦めします。

出典:都道府県暴追センター連絡先一覧表 全国暴力追放運動推進センター
反社チェック方法のベストプラクティス
ここまで反社会的勢力を見極めるための5つの対策方法について解説してきました。それでは自社にあった対策方法はどのように取り組めば良いでしょうか?
ここからは、反社チェックをどのように実施するべきか具体的な方法、ベストプラクティスについて解説していきます。
まず、3つのステップに分けて実施することが大切です。

次に、STEP1を日常業務の中で定期的に実施することが大切です。
前項で反社チェック5つの取り組み方法について解説をしましたが、それぞれの取り組みに特徴(メリット、デメリット)があります。その特徴を整理したものが以下の図になります。

上記の整理を踏まえ、日常業務では情報取得範囲が広く、対策コストが低いインターネット記事での検索もしくは新聞記事での検索を通じて対策を取ることが現実的かつ効果的な対策です。(STEP1)
インターネット記事検索および新聞記事検索の取り組みについては、上場支援をしている各証券会社でも推奨としている対策となっています。
STEP1の対策を踏まえて、疑わしい記事が見つかり、取引の可否判断については、最終的に自社でしなくてはいけません。ただ、現実的には、取引判断の可否に迷うケースもあるでしょう。
取引判断に迷われた際は、以下調査会社もしくは団体へ相談することをお薦めします。(STEP2)
- 専門調査会社への調査依頼
- 独自データベースを持つ業界団体への問い合わせ
- 暴追センターへの問い合わせ
ただ、こちらは実施にそれなりの費用が発生することもあり、活用するかどうかは会社の予算や取引の重要性に照らし合わせながら決める必要があります。
STEP2で限りなく反社の定義に当てはまるといった情報が得られた場合は、顧問弁護士に相談することをお薦めします。(STEP3)
自社の指針と収集した情報を弁護士と共有の上、取引を「否」とする根拠、根拠を明確にした上での対応方法について決めると良いでしょう。
取引先が反社だと判明した場合の対処方法
対策方法のベストプラクティスを解説した上で、取引先が反社会的勢力だと判明した場合の対処方法について2つの観点を補足解説します。
弁護士や警察に相談
取引先が反社の可能性があるとの情報を得た時は、担当者で解決しようとするのではなく、上司や関係する部署と情報を共有し、その上で、速やかに収集した情報を顧問弁護士に共有、円滑な取引解除の対応をしてもらうことをお薦めします。もし、顧問弁護士がいない場合は、警察に対応を相談することをお薦めします。
取引を中止する場合の注意点
反社と判明し、取引を中止する場合は、相手方に事実をそのまま伝えることをしてはいけません。あくまでも自社の審査基準による審査の結果として、取引ができないと伝えます。
自社の審査基準については、非公開であると伝えるにとどめ、内容は明かさないことが大切です。審査基準の公開を強要された場合は、警察に相談することをお薦めします。
反社チェックを行うタイミング
ここまで反社チェックの具体的取組み方法、反社と判明した際の対処方法について解説してきました。では、反社チェックは取引開始時のみ実施すれば良いものでしょうか?答えはノーです。
反社チェックは、取引を始める前に行う必要があることはすでに述べてきました。しかし、既存の取引先がいつのまにか反社会的勢力に入れ替わっている場合があります。
例えば、取引先の役員や代表が入れ替わる際や、取引先が企業買収を通じて取り込む企業に反社が紛れ込むケースがあります。また、経営経験の浅いスタートアップ企業等で創業メンバーと知り合った人物が入社した後、反社と関係しており、徐々に乗っ取られるという事例もあります。
そのため、反社チェックは新規取引先については都度、既存取引先についてはルールを決めて定期的に実施することが大切になります。

反社チェックを行う際に注意すること
最後に反社チェックを行う際の注意点についてお伝えしていきます。ここでは、重要な2点について解説します。
調査内容の証拠を残す
反社チェックでは、調査の証拠を残すことが重要です。反社との契約解除のトラブルとなった場合は、反社の判断が適切であることを証明しなければなりません。そのため、調査の日時や調査方法、調査結果などの証拠を残しておくことが不可欠です。

不当な契約解除として、損害賠償請求などで訴えられることを念頭においた備えが必要となります。
また、インターネット記事検索で取得した情報は閲覧していた記事が削除されることもあるため、URLを保存しておくだけでは十分ではなく記事の画像を保存しておくことをお薦めします。
ただ、証跡を残すことは面倒な作業でもあります。自動で証跡を残せる便利な反社チェックツールもあるため、有効に活用できると最小限の工数で、精度の高い反社チェック対策を実現できるでしょう。
継続的に行う
先にも記載しましたが、反社チェックは、新規の取引先候補だけに行えば十分ではありません。これまで反社と無関係だった取引先であっても、いつのまにか反社に乗っ取られているケースもあるためです。
また、既存の取引先が、気づかない間に反社と関わっている可能性もあるため、継続的な反社チェックが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?反社チェックを実施できていない場合の、企業リスクはどれも会社経営にとって重大なものです。
自社ではまだ反社チェックに取り組んでいない、もしくはこれから取り組むことを検討している場合は、この記事でご紹介した「反社チェック方法のベストプラクティス」を参考に、反社チェック実施の足掛かりになりましたら幸いです。
以下でご紹介させていただく「RoboRoboコンプライアンスチェック」は、上場企業に求められるコンプライアンスチェック品質基準がどなたでも実現できる、SBI証券監修の反社チェックツールになります。
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