企業が法令遵守し、社会道徳や社会常識に沿った活動をすることは、広い意味でのコンプライアンスとして定着し、コンプライアンスのマニュアルが策定される例も増えています。
経済団体や業界団体ではモデル例などを公表している例もあり、取引先や社会、消費者に対する姿勢を明らかにすることが大切です。
上場企業では証券取引所が中心となって公表の取り組みを進めています。
この記事では、コンプライアンスマニュアルって何を書いたらいいの?作成する手順は?といった疑問に答えます。
コンプライアンスマニュアルの記載内容や事例に触れつつ解説します。
コンプライアンスマニュアルは作成しただけでは不十分です!
実際に従業員から経営者にまでマニュアルを周知徹底し、実際にマニュアルが守られているかどうか、コンプライアンスチェックを継続的に行う必要があります。
また、ツールを使ったコンプライアンスチェックなら、面倒な作業を自動化できるので効率的!
コンプライアンスに対応する部門での対策に加えて、取締役への報告、弁護士など専門家との連携などの体制も整備して、ハラスメント相談、内部通報などの社内窓口もあるとよいでしょう。
目次
コンプライアンスマニュアルの必要性
近年、コンプライアンスは企業経営の常識となり、社会的責任が重視されています。
コンプライアンスとは法令遵守のことですが、今日では法令に違反するかどうかだけに限らず、企業の社会的影響力の大きさから、社会道徳、規範、倫理といった広義の意味でも、企業はコンプライアンスを守るべきと考えられています。
企業がコンプライアンスに取り組む理由は、企業存続の危機に発展する可能性があるルール違反を予防し、違反を見つけた場合には速やかに対応するためです。
インターネット、SNSが普及した今日、消費者は企業の評判やクチコミなどを共有し、情報を拡散することもあって、企業が法令遵守するのはもちろん、率先してルールを守らないと、たちまち評判がSNSなどで広まります。
コンプライアンスマニュアルは企業の行動規範
コンプライアンスマニュアルは企業の行動規範として、経営者や従業員が行動するルールを定める、企業内で参照される内部文書です。
企業行動規範とは、企業が守るべき行動のルールです。
コンプライアンスマニュアルは、企業の行動ルールである行動規範の基本的な考え方から、具体的な自社の業務内容、組織体制、業務遂行手順に応じた行動・報告・対応までをまとめたものです。
コンプライアンス違反を防止するため、社会道徳や企業倫理を守る企業独自の原則、方針を規定するとともに、業界団体等による自主規制、業界特有の事情や法規制などに準拠したルールや方針を定めている例があります。
消費者・社会に対する姿勢の表明
コンプライアンスマニュアルは企業の内部文書ですが、企業行動規範の根本にある理念は、企業の理念、姿勢、ブランドイメージを体現するものです。
コンプライアンスについての企業の考え方は、商品やサービスの販売、提供などを通じて関わる消費者、社会一般に対する企業の姿勢の表明でもあるのです。
企業の社会的責任を策定し公開することは、社会に対して自社の考えや姿勢を明らかにし、顧客ばかりでなく社会に対し宣言するものです。
コンプライアンスマニュアルは、策定しただけで終わりではありません。
いつでも参照できるようにし、研修も行い経営者、全従業員にコンプライアンスを浸透させることで、日頃からコンプライアンスに則った行動を意識してもらいましょう。
「しっかりとコンプライアンスに取り組む企業である」と、消費者や顧客、社会から評価されると、企業のブランドイメージも向上し、業績にも結びつきます。
取引先・投資家に対する表明・確約
上場企業の社会的責任は特に強調され、コンプライアンスのマニュアルを策定することは企業統治(コーポレート・ガバナンス)の面からも必要です。
証券取引所では、コンプライアンス・反社対策のための規則・規定が設けられ、会社法や会計監査でも、公正な取引や内部管理体制の整備などが要求されます。
コンプライアンスに対する考え方は取引先や投資家に対する姿勢の表明でもあり、上場企業にとっては有価証券上場規定などによる義務でもあります。
経営者・従業員・関係者に対する内部統制
コンプライアンスマニュアルは、経営者・従業員・関係者に対する内部統制、内部管理のための文書であり、具体的な方針、対応などを規定する社内の行動マニュアルです。
日々の業務のなかで実際に遵守すべき、経営者・従業員の指針であり、コンプライアンス研修の資料やマニュアルとしても利用や配布が可能です。
具体的に取り組むべきコンプライアンス体制・規定の整備や、社内の報告体制、コンプライアンスチェックの方針、問題が起きたときの対応などを取り決めて、日頃から内容を確認できる環境を整えましょう。
印刷したマニュアルや、電子書籍、WEBコンテンツ形式のマニュアルのほか、動画やeラーニングで学び、身に付けられる環境があれば最適です。
マニュアルが形骸化すると、コンプライアンス違反を未然に防げない、内容が古くなって社会の常識にそぐわないまま放置される可能性があります。
反社チェック・コンプライアンス対応の指針
コンプライアンスマニュアルは、実際に遵守されないと意味がありません。
具体的に取り組むべきコンプライアンス部署や、社内での報告・連絡体制などを整備するほか、就業規則、各種の社内規定の整備などが必要です。
コンプライアンス違反を発見するには、社内での報告や内部通報などのほか、従業員や、取引先との関係など日常業務のチェックも必要です。
日常的、継続的にチェックを行うには、コンプライアンス部署・担当者による確認のほか、チェックを自動化できるツールを導入して行うことがおすすめです。
問題が起きたときの報告や、外部の関係者への相談や、監査などのチェックができる体制もあらかじめ用意しておくべきでしょう。
たとえば法務の相談やリーガルチェックのための弁護士、会計監査を行う公認会計士、情報セキュリティ監査を行う専門家、社員研修や相談窓口対応のできる関係者など。
コンプライアンスマニュアルは、企業にトラブルや不祥事が発生した際にも役立ちます。
マニュアルにしたがって、速やかに対応しましょう。
200人以下の中小企業にもコンプライアンスマニュアルは必要?
コンプライアンス部などの専門部署は、中小企業ではなかなか設けることができません。
ちなみに中小企業とは、一般に製造業では従業員が300人以下、卸売業・サービス業では100人以下、小売業では50人以下とされています。
中小企業にはコンプライアンスマニュアルは必要ない? と決めつけるには早すぎます。
中小企業であってもコンプライアンス違反のリスクは同じ。
経営体力が小さいほど、いざという時のリスクには脆弱で、むしろ中小企業にとって命取りになりかねないコンプライアンス違反に対するマニュアルが必要です。
中小企業は、事業所数では全国の企業の99.7%を占め、従業員数でも約70%を占めています。(参照元:中小企業庁「中小企業白書・小規模企業白書2022年版」)
中小企業は人員が少ないため、一人で担当する業務範囲も広くなりがちです。
担当者が退職してしまえば、経験したことのない別の担当者だけで業務を行わなければならないこともあり、コンプライアンス部署が充実していなければ余計に、指針となるマニュアルを策定しておくべきです。
マニュアルが遵守されているかのコンプライアンスチェックでも、自動化ツール「RoboRoboコンプライアンスチェック」なら、少ない人員でも無理なく継続してチェックすることが可能です。
コンプライアンスマニュアルにひな形はある?
コンプライアンスマニュアルを策定しようと考えたら、参考にできるひな形や例文などのサンプルはあるのでしょうか?
経済団体や業界団体が公表している企業行動規範のほか、実際に企業が策定し社会に向けて公表しているマニュアルの事例を紹介します。
他社のコンプライアンスマニュアルをそのまま流用はできないにせよ、策定している内容などは大いに参考になり、自社で用意する際にも役に立つでしょう。
企業行動規範
企業行動規範は、大手企業や上場企業が定めたものが公表されていることも多いほか、経済団体や業界団体がモデルとなる企業行動規範を公表している例もあります。
①日本経済団体連合会(経団連)
経団連では、「企業行動憲章」を1991年に制定して会員企業向けに公表し、2022年12月に改訂版を策定しています(参照:日本経済団体連合会)。
その根底には、会員企業各社が、公正かつ自由な競争のもと、社会的責任や持続可能な社会の実現のため、国内外において法令、国際ルール、高い倫理観をもって社会的責任を果たすべきとの考えがあります。
「企業行動憲章」では、企業は人権を尊重し、働き方の変革と人への投資を行いつつ、グリーンやデジタルを通じて社会的課題の解決を目指し、社会や個人、多様なステークホルダーとの関係向上を目指す方針が打ち出されています。
特に、経営トップの認識が重要で、実効あるガバナンスを構築して社内、グループ企業に周知徹底を図ること、企業が社会からの信頼を失うような事態が発生した場合には、経営トップが率先して問題解決、原因究明、再発防止等に努め責任を果たすことをうたっています。(参照元:日本経済団体連合会「企業行動憲章 実行の手引き」)
②商工会議所
商工会議所では加盟社が守るべきモデル条項的な、企業行動規範を公表しています。
東京商工会議所の「企業行動規範」では、法令の遵守、人権の尊重、環境への対応、従業員の就業環境整備、顧客・消費者からの信頼獲得、取引先との相互発展、地域との共存、出資者・資金提供者の理解と支持など、多様なステークホルダーに対しての責任ある行動を規定しています。
同時に、政治・行政との健全な関係のほか、反社会的勢力への対処についても定めています。(参照元:東京商工会議所「企業行動規範」)
③業界団体
業界団体でも、「企業行動規範」を制定する例が見られます。
たとえば日本建設業連合会は、会員企業の行動規範のモデルとなる「企業行動規範」を公表しています。
日本建設業連合会 、海外建設協会、土地改良建設協会、日本埋立浚渫協会、日本ダム協会の連名により、社会の一員として社会的責任を果たすとして、コンプライアンス、人間の尊重、社会との共生を掲げた内容となっています。
ただし宣言色が強いため、社会に対する姿勢の表明としてはよいですが、社内向けのコンプライアンスマニュアルとするには、より具体的に、コンプライアンス体制・規定の整備、社内の報告・連絡体制、コンプライアンスチェックの方針、問題が起きたときの対応マニュアルなどを策定し、マニュアルに落とし込むことが必要です。
上場企業のコーポレートガバナンス・コード
証券取引所では上場企業に対し、企業行動規範のほか、さまざまな方針を開示することを指導し、推進しています。
東京証券取引所では、コーポレートガバナンス・コードを定め、上場企業に対応状況の報告書の提出や、企業行動規範を策定することを求めています。
上場企業が株主・顧客・取引先・社会に対し、透明かつ公正な意思決定を行うための、企業のコーポレートガバナンス(企業統治)に関する原則・指針を示したものです。(参照元:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」)
株式市場への新規上場などの際には、コンプライアンスチェック、反社チェックが必要です。
反社チェック・コンプライアンスチェックツールのRoboRoboコンプライアンスチェックはSBI証券監修の信頼があり、かつ1件200円からチェックできます。
ベンチャー企業でも導入できる安いランニングコストで、設定にしたがって自動検索、チェック結果の自動保管などができ、新規上場企業での導入事例も多くあります。
年間1000社に及ぶコンプライアンスチェックを一気に効率化し、1件当たりの作業時間を約30分の1に短縮することに成功しました。
株式会社サイバード取締役・佐藤貴信氏
以前は1件ごとに手作業で既存サービスやWebで検索したり、登記簿を調べたりなどしなければならず、1件当たり15分ほど時間がかかってしまっていました。
さらには1年に1回、取引先の棚卸しをするため、その時期になると一層大きな負担がのしかかっていたのです。
1年間で新たな取引先が800件ほどで、棚卸時の反社チェック対象件数は1000件にも及び、作業時間は年間250時間(1日5時間の作業として50日分)を優に超えていたでしょう。
ガバナンス的に反社・コンプライアンスチェックはより厳しく求められて、正直なところ心理面での負担もかなりのもので、棚卸しの次期が近づくと憂鬱でした。
何か良いサービスはないかずっと探していたところ、人づてにRoboRoboコンプライアンスチェックという便利なサービスがあると聞きました。
すぐに比較サイトなどでサービス内容を調べたところ、作業効率だけではなく、コストの面でも当社にとってとても魅力的なサービスだとわかりました。営業担当の方の話を聞いて信頼できるサービスであると確信し、RoboRoboコンプライアンスチェックの導入を決定したのです。
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新聞記事のデータベースは、見出し一覧と、記事本文の表示にそれぞれ料金がかかり、同じ記事でも閲覧するたびに課金される仕組みです。確認作業を重ねていくと膨大な金額になることが見込まれ、この点でも何らかの対策が必要でした。
いくつかのサービスを監査役が比較検討した結果、「新聞記事よりもサンプル数が豊富なGoogle検索から自動的に情報を絞り込める」という独自機能、また新聞記事データベースとの比較で格段にリーズナブルな価格体系が評価され、RoboRoboコンプライアンスチェックの導入が決まりました。
企業のコンプライアンスマニュアルの具体的事例
企業が実際にコンプライアンスマニュアルを策定し、従業員が参照できるマニュアルとして公表するためには、企業が実際に作成した具体的なマニュアルが参考になるでしょう。
➀関西電力グループ
関西電力グループでは、118ページに及ぶコンプライアンスマニュアルを策定し、ウェブ上でPDFファイルで公開しています。
Q&Aを豊富に入れて、わかりやすい体裁となっています。
巻末には、「コンプライアンス指針一覧」として、マニュアルで策定された内容をコンパクトに一覧表示しています。
さらに「関西電力グループのコンプライアンス相談制度」として、相談の流れを解説し、実戦的に活用できるように工夫されています。(参照元:関西電力グループ「コンプライアンスマニュアル」)
➁住友重機械工業
住友重機械工業では、2004年11月にコンプライアンスマニュアルを策定して以来、2007年、2009年、2012年、2014年、2019年、2020年と度重なる改訂を重ね、2021年には最新の増補版を公表しています。
コンプライアンスマニュアルは、法制度や社会の動向などにより見直しをする必要があるほか、社内の体制整備の必要が生じた場合にも、改訂することが大切です。
同社のマニュアルの巻頭には、「住友重機械グループの皆さんへ」との社長の言葉があり、過去に起きた品質管理問題への反省と、折に触れてマニュアルを読み返すことの大切さが述べられています。
コンプライアンスマニュアルは「住友の事業精神」から始まり、1650年頃の住友家の原典から、1882年に初めて成文化された「住友家法」にまで言及されており、次いで2015年に改訂された同社の「経営理念」に話が及びます。
具体的な法令についての遵守事項、禁止事項や、社内通報、社外通報までがマニュアル化されています。(参照元:住友重機械工業株式会社「コンプライアンスマニュアル」)
③丸紅グループ
(引用:丸紅)
丸紅グループの「コンプライアンス・マニュアル」にも、工夫が凝らされています。
「遵守事項」の章では、マニュアル本文に詳細な説明がありますが、マニュアルの目次を見れば、その内容が一覧でわかるようにされています。
巻末にはQ&Aがあるほか、全体を通してビジュアルも多用し、膨大な情報をわかりやすくまとめています。(参照元:丸紅グループ「コンプライアンス・マニュアル」)
各社それぞれのコンプライアンスマニュアルは、自社の業務内容や、関係する法令、業務プロセス、業務フローに応じた内容となっています。
そのため、そのまま他社に流用できるものではありません。
しかし自社のコンプライアンスに必要な項目や、策定すべき内容、さらにはわかりやすく見せる方法など、参考になる点がたくさんあるでしょう。
コンプライアンスマニュアルの作り方・具体的手順
いよいよ実際にコンプライアンスマニュアルの作成方法を、基本理念・行動規範・行動基準の解説も含めて紹介していきましょう。
企業理念・行動規範を策定
コンプライアンスマニュアルは、単なる社内規定や手順を示す文書ではなく、企業理念、行動規範から規定しておくとよいでしょう。
考え方の基本から理解でき、マニュアルの内容が一貫するとともに、社会や消費者に対する姿勢の表明を明確にできるためです。
①基本理念の確認
コンプライアンスマニュアルを作成する際には、企業の経営理念が必須です。
経営理念とは、企業活動をする際の根本となる基本的な考え方です。
経営者が率先して守るべきものであり、すべての従業員が基本理念を理解する必要があります。
企業理念を明文化するとともに、すでに基本理念がある場合にも内容の見直しが必要かどうか、コンプライアンスマニュアルの策定、改訂の機会に検討してみましょう。
②行動規範を明確にする
行動規範とは、基本理念にもとづき、会社の従業員であるとともに社会の一員として、どのような考え方や行動が望ましいかを具体化したものです。
行動規範は基本理念が細分化して、法令遵守や、コンプライアンスの分野別に、それぞれについての企業の考え方をより明確化したものです。
たとえば「企業の利益と、社会のサステナビリティの優先順位」、「顧客の要望と、従業員や株主の権利とが相反する場合にどうするか」などが、行動規範により示されます。
業界特有の法令・制度・自社特有の要素を分析
コンプライアンスマニュアルを具体的な内容、項目にまで落とし込むためには、業界特有の事業内容や、業界を取り巻く制度・環境、業界を規制する法律・許認可などにも言及し、対応できるようにする必要があります。
さらに、自社のビジネスモデルや業務フローなどに沿った内容を盛り込むため、マニュアルの策定にあたり、必要な要素を調査・分析するのがよいでしょう。
各企業や所属する業界に応じ、ビジネスの仕組み、集客・商談・契約から取引までの流れ、業界の法規制など、業務フローをチェックして、専門家も交え、法的リスクを含めた問題の洗い出しを行います。
マニュアルをつくるにあたっては、自社に関係する法令や、会社の事業状況、業務遂行体制を確認し、リスクにつながりそうな内容を重点的に取り扱いましょう。
契約書や、反社でないことの誓約書なども整備しましょう。
契約前の商談や、従業員の入社前には、コンプライアンスチェック、反社チェックも必要です。
業界団体による規則
自社が所属する業種によっては、業界団体などの規則、ガイドラインが設けられていることもあります。
業界団体による自主規制や、法令遵守のための基準となるガイドラインの一例として、次のような例があります。
⑴日本証券業協会自主規制ルール
証券業界の自主規制ルールとして、金融商品取引法などの法令遵守のための業界独自の取り組みを規定したものです。
日本証券業協会に加盟する証券会社のために公表されています。
⑵不動産の公正競争規約
不動産業界のルールとして、不動産公正取引協議会連絡会が公表したもので、独占禁止法、景品表示法の遵守、違反に対する調査など、業界独自の取り組みを規定したものです。
マニュアル作成の際に、自社が属する業界や、加盟する団体のルールがある場合には、これらに準拠した内容、項目を設けることも大切です。
自社のコンプライアンス体制・対応方法を策定
企業の経営方針や理念、行動規範、コンプライアンス規定まで含めた方針を策定したら、それを運用する体制を構築します。
コンプライアンス体制の整備は、企業の規模や組織構成により、法務部や、コンプライアンス担当部署で行うのが一般的です。
大企業などでは各地に営業所や支店、大所帯の事業本部があるケースもある一方、中小企業では担当者が複数の部門を掛け持ちする場合まであります。
自社の実情に即して、具体的に対応をマニュアル化することが必要です。
コンプライアンスの組織体制・人員、必要な社内規定、業務フローのどの段階で誰が何を対応するかといった対応方針を策定し、社内での報告・連絡・通報体制も規定します。
マニュアルではわかりやすく図解したり、実際の連絡先や相談窓口などを明記するのがよいでしょう。
コンプライアンス指針の行動基準を決定
コンプライアンスマニュアルに入れ込む、具体的な項目と、項目ごとに盛り込む内容を決定します。
営業、接待、取引の契約、会計などの分野ごと、さらに業務の段階ごと、コンプライアンスの分野ごとに、行動基準を明確にし、対応方法や禁止事項などを決めていきます。
行動基準とは、行動規範をさらに具体的に項目ごとに落とし込んだしたものです。
法令違反、コンプライアンス違反が起きないように、企業も社会の一員として、あるべき行動の姿を盛り込みましょう。
行動基準には、関係法令の遵守事項や、日常の業務からクレーム対応までの、業務フロー全般にわたる内容を取り扱います。
社員が対応に迷うことのないよう、グレーゾーンを排除しましょう。
行動基準に不明確な点があり、周知がされないと、思わぬコンプライアンス違反が発生する可能性があります。
取引・契約時の確認・必要書類の整備
就業規則、内部統制方針や各種規定などを整備します。
既に整備してある企業でも、最新の法令や、社会状況に合致しているか、改訂する部分がないかのチェックを定期的に行いましょう。
契約書、誓約書、社内規定、就業規則などの整備には、分野により、弁護士や公認会計士、税理士などによるリーガルチェックも必要です。
上場企業であれば、有価証券上場規定やコーポレートガバナンス・コードに準拠して、情報開示体制、反社会的勢力のチェック体制を構築し、適正に運用することが要求されます。
社内でマニュアルを作成するのが難しい場合には、外部専門家への委託を検討してもよいでしょう。
しかしその場合にも、社内のコンプライアンス担当者、担当取締役、社外取締役などが参加、関与することが重要です。
経団連の企業行動憲章にもあるように、社内のコンプライアンスは経営者が率先して守り、従業員に周知徹底させるべきものだからです。
報告・チェック・承認手順の整備
コンプライアンスマニュアルの具体的な項目と、項目ごとに盛り込む内容を決定したら、日常業務で各部署において遵守するための、業務の報告、チェック、承認などの業務フローの手順を、確実に実行できる体制を全社的に整備します。
既に体制ができている場合にも、再度、現在の体制でコンプライアンスマニュアル通りに対応できるか、支障がないかを確認しましょう。
コンプライアンスチェックは、自動化できるツールであるRoboRoboコンプライアンスチェックの導入が便利です。
ツールを使ったチェックについては後述します。
違反が疑われる事案が見つかった場合に備え、事実関係の調査、関係部署への報告、問題への対応方法もあらかじめ策定します。
問題が発生したときに、マニュアルに基づきスムーズに行動できます。
コンプライアンスマニュアルを作成する
コンプライアンスマニュアルはまず、紙ベースのマニュアルか、電子的なマニュアルかといった形式を決定します。
その後、章、図解、フローチャート、チェックシートなどの内容、デザイン面も含めて、実際に制作を行います。
どこに何が書いてあるかをわかりやすくするため、目次、注釈やQ&Aなどにも工夫を凝らしましょう。
スマートフォンで外出先でも確認できるマニュアルや、eラーニングなどで繰り返し視聴できるコンテンツがあると、さらに便利です。
コンプライアンスマニュアルの内容を周知徹底
コンプライアンスマニュアルが完成したら、経営者・従業員に内容を周知するための研修が必要です。
作成したマニュアルの内容を役員と従業員全員に周知させ、企業全体でコンプライアンス遵守に取り組みましょう。
研修後にはアンケート、テストなどを実施して、従業員の理解度に応じ、研修の内容や頻度を調整するとよいでしょう。
文書を社内で公開する方法のほか、社外にも公表するかどうかも検討します。
コンプライアンスマニュアルは、会社に関係するすべてのステークホルダーが知ることがでる内容、公開方法であると理想的です。
コンプライアンスマニュアルの改訂時期は?
マニュアルの内容は、コンプライアンス担当部署が管理して、定期的にチェックすることが必要です。
関係法令の改正や、制度の変更のほか、マニュアルが社会の趨勢に合わないと感じられるなら、改訂を検討するとよいでしょう。
コンプライアンスマニュアル運用にあたっての注意点
コンプライアンスマニュアル策定後の、運用にあたっての注意点を解説します。
コンプライアンスマニュアルの遵守状況をチェック
コンプライアンスマニュアルが実際に遵守されているかどうか、日常的にチェックすることも忘れてはなりません。
マニュアルの内容を浸透させるため、各部署でも上長や担当者がチェックするほか、従業員からの内部通報や相談の窓口を設け、運用することが大切です。
コンプライアンス担当部門では、全社的にマニュアルが守られているかのチェックを担当します。
コンプライアンスチェック方法には、ツールを使ったチェック、社内調査などのほか、問題が発生したときには外部の調査会社に依頼するケースもあるでしょう。
法令違反、不祥事などのコンプライアンス違反を調査する専門会社もあります。
社内のチェック体制が適正に運用されているかの確認
コンプライアンスチェックには、社内でできる作業と、外部に依頼して調査する作業とがあります。
社内でのチェックは、所属部門ごとの上長による日常的なチェック、コンプライアンス担当部署によるチェックのほか、必要に応じ社外取締役、監査役などによるチェック、調査が有効です。
さらに、所属部門の長、コンプライアンス部署、担当取締役、社外取締役や顧問弁護士などの間での、報告、連絡、相談体制が適正に運用されているか、見直しを行うのがよいでしょう。
金融庁が金融機関の検査をするためのマニュアルですが、「法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」という資料があり、社内のチェック体制が適正かを社内で判断するための参考になります。(参照元:金融庁「法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」)
法務、会計監査などの専門知識・判断を要する作業は専門家に依頼します。
情報セキュリティは専門会社にチェックしてもらうことが可能です。
詳細調査や現地調査などの手間がかかる作業は調査会社で、日常的にチェックを行う作業は社内で、コストを抑えつつ効率的に実行することが、継続の秘訣です。
相談窓口やコンプライアンス対応部門の設置も必要
社内には、パワハラやセクハラなどの相談窓口や、法令違反・コンプライアンス違反の内部通報窓口を設けることが必要です。
コンプライアンスチェックは自動化ツールのほか、社内からの声を聞くことが意外にも効果的です。
相談窓口の開設を怠ったり、通報や報告を軽視していると、コンプライアンス違反を見逃す可能性があります。
必ず相談窓口を開設し、従業員からの報告を活用しましょう。
匿名での相談を可能にすると、従業員はコンプライアンス違反を報告しやすくなります。
コンプライアンスチェックツール
コンプライアンスチェックの方法として、クラウドツールを使ったチェックの自動化について説明します。RoboRoboコンプライアンスチェックは代表的な自動化ツールです。
社内で実際にコンプライアンス違反、反社会的勢力の排除が適正に実施され、コンプライアンスマニュアルが遵守されているかどうかは、コンプライアンスチェックをすることで確認できます。
ツールを使ったチェックでは、取引先名簿、従業員名簿、役員名簿などの各種名簿に基づき、どのタイミングで誰が実行するかの規定を設け、運用することが重要です。
コンプライアンスチェックは、取引先、商談相手、従業員や役員、その他の関係者のほか、求人の応募者、大株主などのすべてについて行うのがよいでしょう。
違反した事案を見逃した場合のリスクを考えれば、おわかりと思います。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら、名簿ファイルで調査対象者を一括登録し、SNSを含むインターネット検索、新聞記事検索で、膨大な情報から、あらかじめ設定したネガティブキーワードなどによる検索をリアルタイムに実行できます。
検索結果は自動的にフォルダに分けて保管され、AIによる自動判定で表示される3段階アラートのレベルに応じ、疑わしい記事を発見します。
自動化ツールのチェック結果を見て、データベース検索、調査会社への依頼、弁護士への相談など、次の対応を検討できるでしょう。
コンプライアンスマニュアル策定の効果
コンプライアンスマニュアルは、企業が法令違反や社会道徳・社会規範に反する行為を予防できるほか、万一、問題が発生した場合にも早期に対応し、影響を最小限にとどめるためのものです。
社内で共有でき、法令違反のリスクを下げられる
コンプライアンスマニュアルを周知させることにより、経営者から従業員すべてが法令遵守、コンプライアンス意識を共有できます。
コンプライアンス違反により、報道や風評、信用毀損による重大な影響を受けることを予防できるでしょう。
逆にコンプライアンスに取り組まない企業では、食品の産地偽造、請負偽装、不正会計、残業代の未払いなどの問題が発生しがちです。
世間からの信頼を失わないように、企業はコンプライアンスへの取り組みが欠かせません。
コンプライアンス違反を未然に防ぐために、早速コンプライアンスマニュアルの策定、見直しに取り組みましょう。
企業の社会的責任を行動規範として宣言できる
全社的にマニュアルに即した行動をしていれば、それが企業理念の社会への表明、ブランドイメージの社会への浸透につながり、単にリスクを下げるだけでなく、企業イメージを向上させることでしょう。
上場企業では証券取引所が中心となって公表するよう取り組みを進めてきました。
企業が守るべきコンプライアンスには、企業倫理・社会的倫理・社内規範が含まれます。
コンプライアンスマニュアルを、従業員だけでなく一般に公表し、企業姿勢を明らかにすれば、自社が社会的責任を重視する姿勢を、具体的な行動規範として宣言できます。
近年のコンプライアンス違反の特徴にも対応できる
近年、企業の社会的責任や、サステナブルな資本主義などの概念が広く受け入れられ、社会的な課題にまで企業は対応しなければなりません。
一方で、反社会的勢力の組織が多様化し、一般の従業員でも法令違反に関わってしまう機会が目立ちます。
SNSの普及に伴い不適切な書き込み・投稿が増えたほか、ネットセキュリティや情報漏洩の問題など、新しいコンプライアンス違反の傾向も顕著に見られます。
コンプライアンスマニュアルを作るだけでなく、必要に応じ見直し、研修を行い、コンプライアンスチェックを実行しなければなりません。
コンプライアンスマニュアルを最新の状態に改訂することにより、新しいコンプライアンス違反に特有の事案にも対応することが可能です。
コンプライアンスチェックをツールで実行する方法とは?
企業のコンプライアンスでは、企業自身による法令違反、事業活動でのコンプライアンス違反のほかにも、従業員、役員などの個人レベルでの法令違反にも注意しなければなりません。
刑法その他の法令違反を従業員個人が行った場合でも、事業活動に伴う事案であれば企業にも罰則が科せられるリスクがあります。
事業とは関係がない場合にも、企業の使用者責任、道義的責任が問われる可能性があるかもしれません。
RoboRoboコンプライアンスチェックは、取引先や従業員のコンプライアンス違反を自動的にチェックできるツールです。
簡単に設定でき、安いランニングコストで導入できるクラウドツールのため、定期的、継続的にコンプライアンスチェックができるほか、反社チェックをすることも可能です。
業務が飛躍的に効率化でき、担当する人員の少ない中小企業でも導入できます。
まとめ
コンプライアンスを軽視する企業では、法令違反や、たとえ法令違反ではない事案でも、不適切な対応をすれば企業の不利益になり、企業防衛やコンプライアンスの観点から重大なリスクを招く可能性があるでしょう。
この記事では、コンプライアンスマニュアルの必要性から、実際のコンプライアンスマニュアルの具体的な事例、マニュアル策定、作成、自社での運用について解説しました。
この記事や参照元の資料を参考に、コンプライアンスマニュアルを作成し、既にある場合にも見直し、改訂を検討してみましょう。
コンプライアンスマニュアルを策定したら、社内の体制が適切に機能しているか、マニュアルが実際に遵守されているかのチェックも不可欠です。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、インターネットと新聞記事の同時検索が可能です。
SNSや掲示板なども含めて、自動的に設定し従いチェックが実行されるため、法令違反の記事検索やSNS投稿チェックもでき、直近の公開情報までをリアルタイムに取得できるため、おすすめです。
SBI証券推奨ツールとして、上場準備にも利用いただけます。
リーズナブルな価格設定にも、ご注目ください。無料トライアルが可能です。
コンプライアンスマニュアルについてのQ&A
コンプライアンスマニュアルについて、Q&Aで解説しましょう。
従業員が200人もいない中小企業でもコンプライアンスマニュアルは必要?
中小企業では、人員が少ないため一人で担当する業務範囲も広く、マニュアルがないと対応方法に困ることも想定されます。
ぜひコンプライアンスマニュアルを策定しましょう。
実際にマニュアルを策定し、制作物としてまとめる作業には、外部の専門家に外部委託を行ってもよいでしょう。
マニュアル策定後のコンプライアンスチェックも、ツールを導入すれば少ない人員でも業務を自動化、効率化できます。
コンプライアンスマニュアルは、よくできた他社のものを真似してもよい?
コンプライアンスマニュアルに盛り込むべき内容は、どの業種でも共通する汎用的な内容のほかにも、自社の業務内容・業務フローや、業界に特有の事項があります。
企業理念は当然、独自のものでしょう。
企業が異なれば、マニュアルの内容も変わります。
自社の実情にあったマニュアルを作成し、運用していきましょう。
コンプライアンスマニュアルの研修はいつ行う?
コンプライアンスマニュアルの作成後には、定期的なコンプライアンス研修が必要です。研修を行わなければ、マニュアルの内容が社員に浸透しません。
コンプライアンスや反社への対応は、規定を整備するだけでは終わりません。
社内研修を実施し、従業員や役員に周知徹底すること、ツールを使ったコンプライアンスチェック、反社チェックが必要です。