リスク管理とは、企業にさまざまな影響を及ぼすトラブルを防ぐためのマネジメントのことです。この記事では、コンプライアンス系業務の担当者に向けて、リスク管理とは何なのか、リスク管理の重要性などについて解説します。
あわせて、リスク管理の具体的な進め方や関連法律なども解説するので、リスク管理実施に役立ててください。
目次
リスク管理とは
リスク管理とは、ある物事の始まりから終わりまでに発生するかもしれないリスクを洗い出し、整理して分析することを指します。リスクとは、「これから起こるかもしれない不確定事象」、つまり予測や予期できない出来事です。
マイナスのリスクは、目標達成を阻害したり事業活動を妨げたりする恐れがあります。そのため、マイナスリスクはできるだけ回避し、プラスリスクは積極的に活用することが、リスク管理の大きな目的です。
リスク管理と危機管理の違い
リスク管理と危機管理は、どちらも今後起こり得るリスクについて整理し分析することは同じです。
しかし、リスク管理の場合はリスク予防に着目しており、危機管理は起こったリスクへの対処を重視しています。また、リスク管理は回避できるリスクの管理をし、危機管理は回避不能なリスクを想定して管理します。
どちらか一方ではなく、リスク管理と危機管理セットで考えることが重要です。
リスク管理が重要な理由
リスク管理は、プロジェクトの目標達成のために必要です。なぜならリスク管理ができていなければ、思わぬ問題が発生してプロジェクトの進行が不可能になるケースがあるからです。
また問題の内容によっては、損害賠償請求されたり行政からの処分が下ったりして、企業の経営維持に影響を与える可能性もあります。企業としてビジネスを展開していくうえで、リスク管理は重要であると言えるでしょう。
最近の社会の動き
2000年以降の規制緩和によって、企業の自己責任体制の確立や情報公開を求める動きが大きくなっています。そのため、企業として責任ある行動を促すための法制度導入が加速化や労働関連の法改正が積極的に行われています。企業の不祥事に対する社会の目も一層厳しくなっているため、リスク管理の重要性はより高まっているでしょう。
オペレーショナル・リスク管理
オペレーショナル・リスクとは、通常の業務活動に関わるリスクを総称した言葉です。オペレーショナル・リスクは、すべての企業に存在していますが、基本的には銀行などの金融機関で使われるケースが多くなっています。金融機関が経営不能に陥る可能性のあるリスクを管理することを、オペレーショナル・リスクと呼ぶのが一般的です
コンプライアンス・リスク管理
コンプライアンスとは、日本語では「法令遵守」となります。リスク管理がきちんと行われていない企業では、重大なコンプライアンス違反が起こる可能性があります。経営持続と継続的な成長を目指すのなら、コンプライアンスに関するリスク管理が必要です。一般的に、リスク管理という場合コンプライアンス・リスク管理を指す場合が多いです。
コンプライアンス違反が起こる理由
コンプライアンス違反とは、法律違反だけを指すのではありません。企業としての社会的責任を果たしていない場合も、コンプライアンス違反となります。経営者や上層部に絶対的な権力がある、管理体制が甘く不正が起きやすい、教育不足などにより過失が起きやすいといった環境だと、コンプライアンス違反が起こりやすくなります。
コンプライアンス・リスク管理のPDCA
PDCAとは「PLAN(基本方針・計画策定)」→「DO(対策実施)」→「CHECK(対策の検証)」→「ACTION(改善)」のことです。
コンプライアンス・リスク管理では、「現在のコンプライアンス体制の評価」→「改革方針の策定・対策の採用、決定」→「対策の実施」→「監査・問題処理」→「継続的な改善」の手順で、PDCAを回します。
主なリスクと関連する法律
企業のリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。また、リスクだけでなく関連法律について把握する必要もあります。代表的な企業のリスクと関連する法律を詳しく解説します。
労務リスク
労務リスクとは、働き方改革に伴うリスクです。政府によって働き方改革が推進されており、労働環境の改善や多様な働き方の導入などが求められます。そのため、長時間労働やハラスメント、雇用形態による不平等さなどの労務リスクの重要性が増している状況です。
関連法律としては、「男女雇用機会均等法」や「労働基準法」、「働き方改革関連法」な度があります。
契約リスク
契約リスクとは、契約内容が法律違反に当たらないかどうか、自社に不利益となる条文が含まれていないかなど、契約に関するリスク全般を指します。この他にも、契約書の紛失や内容漏洩などのリスクもあり、大きな損害を被る可能性があるため注意が必要です。関連法律としては、「金融商品取引法」や「改正独占禁止法」などがあります。
情報漏洩リスク
情報漏洩とは、プロジェクト内容や顧客情報、商品や製品の製造方法など、企業にとって重要な情報が漏洩するリスクです。情報が漏れると企業は大きなダメージを受けるため、就業規則や社内規定、秘密保持契約書などを定める必要があります。関連法律としては、「個人情報保護法」「不正競争防止法」「金融商品取引法」などが挙げられます。
その他の法令違反リスク
企業を経営するには、さまざまな法律が関わってきます。そのため、関連する法律をしっかりと把握し、法令遵守を意識・実施することが重要です。企業経営に関する法律としては、「下請法」や「会社法」、「景品表示法」や「公益通報者保護法」、「外国法」、「ISO2600」などがあるため、内容を把握しておきましょう。
プロジェクトのリスク管理にはPMBOK
PMBOKとは
PMBOKとは、アメリカのPMI(プロジェクトマネジメント協会)によって策定されたもので、プロジェクトマネジメントを体系立てた標準策定となっています。PMBOKでは、企業にとって脅威となるようなマイナスのリスクだけではなく、チャンスとなるような不確定要素も考慮している点が大きな特徴です。
1.リスク・マネジメント計画
リスク・マネジメント計画では、リスク・マネジメントをどのように行っていくのか、実行レベルなどの明確化、リスクを評価する際の基準などについて計画します。企業によって、リスクと感じる事柄やリスクレベルなどは異なるため、自社でどの程度許容できるのかを確認しましょう。その上で、リスク・マネジメント計画書としてまとめます。
2.リスク特定
リスク特定とは、プロジェクトに影響を与えるようなリスクを特定することです。起こる可能性のあるリスクを洗い出すために、リスク・マネジメント計画書やスケジュールなどを参考にしましょう。リスク登録簿にまとめるとリスクの優先度をつけるポイントになるため、リスク・マネジメントがしやすくなります。
3.リスク分析
リスク分析には「定性的リスク分析」と「定量的リスク分析」があります。定性的リスク分析では、リスクが発生する確率やプロジェクトへの影響などを参考にし、リスクの優先度をつけていくことです。定量的リスク分析とは、特定したリスクがプロジェクト全体に与える影響を数値などで表した分析手法を指します。
4.リスク対応計画
リスク対応計画では、プロジェクトの脅威となるリスクへの対策だけでなく、チャンスとなるようなプラスの影響を高める対策も必要です。そのため、脅威への戦略と好機への戦略、どちらも検討しましょう。リスク対応計画ではリスク分析の結果を活用して、リスクに対する戦略や対策などを策定することが重要です。
5.リスクのコントロール
リスクのコントロールとは、特定したリスクを追跡や新しいリスクの特定、残っているリスクの監視などを行って、リスクが与える影響を定期的に報告、コントロールすることです。リスク特定で作成したリスク登録簿をもとに、監視などをして、プロジェクトに影響を与えるようなリスクについては適切な対処を行っていきます。
ガバナンス強化に必須なリスク管理の構築と維持
リスク管理は企業のガバナンスにおける重要な機能であるため、しっかり取り組まなければいけません。ここではガバナンス強化に必要なリスク管理を詳しく解説します。
経営トップによる統制体制
まずは、経営トップにより統制体制を構築しましょう。リスク・マネジメントの基本方針を策定して、担当責任者や専門委員会、専門管理部署などを設置します。また、経営トップは必要に応じてシステムの見直しを行いましょう。
相談しやすい環境や報告する部署の明確化などにより、不祥事を黙認しない体制づくりをすることも重要です。
現場の管理体制
従業員に対して、リスク・マネジメントやコンプラインに関する考え方、自社の方向性などを浸透させることが重要です。方針などを経営層だけで共有するのではなく、現場にも周知徹底しましょう。業務のマニュアル化も有効な手段です。
企業としての統制体制だけでなく、各部署に必要な課題を明確にすることも重要です。
ステークホルダーへの対応
ステークホルダーとは、利害関係者のことです。例えば、消費者や顧客、取引先や従業員、地域社会など幅広い関係者がステークホルダーに当たります。企業とし法律遵守はもちろんのこと、企業倫理を重視して行動することも大切です。
リスク管理を徹底することで、ステークホルダーの利益を守ることになり、結果として企業としての信用度や信頼感を高められます。
まとめ
リスク管理とは、リスクを洗い出して整理・分析し、リスクを予防することです。リスク管理を徹底することで、企業経営におけるさまざまなリスクの予防につながります。
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