リスク管理(マネジメント)とは、リスクを未然に防ぎ、リスク発生時に損失をできる限り抑えるための考え方です。社会情勢や技術革新の結果、企業が抱えるリスクは年々増加しています。企業の存続を願うなら、リスク管理は欠かせません。
ここでは、コンプライアンス系の業務にかかわる担当者に向け、リスク管理の手法やプロセスを解説します。企業をリスクから守るため、参考にしてください。
目次
リスク管理(リスクマネジメント)とは?
リスク管理とは、リスクが起きないように対策を講じ、リスクが起きた場合に損害を最小限に食い止めるための考え方です。
リスク管理をしない、間違った対策を実行しているなどの状態では、いざリスクが発生したときに企業は大きなダメージを受けます。そのためリスク管理は、企業の存続のために必須と言えるでしょう。
リスクの意味
リスクとは、危険、不安、恐れなどの意味をもつ言葉です。保険業界では被保険者、被保険物などがリスクと呼ばれます。
企業や業界ごとにリスクの対象は異なるため、自社のリスクを把握しましょう。また、リスクの内容により、発生時に被害を受けるターゲットは変わります。
マネジメントの意味
マネジメントとは、組織や物事をコントロールするための活動、または団体を指します。ビジネスにおけるマネジメントには、経営・管理・統御・経営学・経営者・経営陣などが該当します。
リスクマネジメントの例
リスク管理の例として、社員教育や会計監査、機密情報にかかわる情報セキュリティ体制の整備などが挙げられます。
社員教育を行わなければモラルのない行動を起こした社員により、企業の信用が失墜しかねません。また会計監査は、財務諸表の正当性をチェックし粉飾決済の阻止に有効です。一方、情報セキュリティ体制の整備は情報漏洩を防ぎ、企業や社員だけでなく顧客も守ります。
リスク管理の類語
リスクヘッジやクライシスマネジメントは、リスク管理と混同されがちです。それぞれの言葉の意味を解説します。
リスクヘッジとの違い
リスクヘッジとは、リスク管理を実現する手法の1つです。正しいリスクヘッジは、リスク発生時の損害を抑制します。たとえば、株式投資における分散投資はリスクヘッジといえます。プランAに加え、プランB、Cなどの選択肢も用意し、リスク発生時の逃げ道をつくります。
クライシスマネジメントとの違い
クライシスマネジメント(危機管理)とは、発生済みのトラブルへの対応を指します。たとえば、謝罪会見は、クライシスマネジメントの一種です。
リスク管理の目的には、リスクの防止も含まれます。リスク管理の方が、クライシスマネジメントよりも大きな概念といえます。
リスクマネジメントはなぜ必要か
リスク管理の目的は、年々増え続けるリスクから企業を守ることです。社会環境の変化とともに、ビジネスのあり方も変革を求められるようになりました。
アウトソーシングを積極的に利用したり、テレワークを普及させたりすると、業務の効率化が見込めます。ただし、便利になる反面、企業が抱えるリスクは増える一方です。
いったんリスクが発生すると、インターネットにより情報がたちまち拡散されます。トラブルへの対応を間違うと、企業の存続が危ぶまれる事態に発展するかもしれません。企業が経営を続けるためには、リスク管理は必須といえます。
2種類のリスク
企業が脅かされがちなリスクを2種類にわけて紹介します。ときには、利益のためにあえてリスクを取るケースもあります。
純粋リスク|損失のみのリスク
純粋リスクとは、偶発的な事故や、火災・台風・地震など自然災害に由来するものです。偶発的な事故は、社員の人的ミスによってもたらされます。たとえば、機械や社用車の操作を間違って事故を引き起こした、規格にあわない製品を出荷してしまった、発注ミスで商品を無駄にしたなどが、偶発的な事故の一例です。
また自然災害とは、工場で火災が発生して稼働が難しくなった、地震で倉庫の棚が倒れ商品がダメになったなどの被害を指します。
純粋リスクは予防が困難ですが、リスク管理をしておくと損失を減らせるのが特徴です。
投機的リスク|損失と利益を伴うリスク
投機的リスクとは、政治的・経済的要因がビジネスに与える変動や、変化に伴うリスクです。たとえば、輸出先の国の情勢が変わった、政権が変わった、新しい技術により主力商品のニーズが大幅に下落した、などが投機的リスクに該当します。
投機的リスクが起きたときは、世の中の流れに対応できるかがポイントです。企業を存続させるためには思い切って事業を拡張したり、撤退したりなどの戦略が望まれます。
リスク管理の手法
リスクに対応するための手法は、リスクコントロールとリスクファイナシングに大別できます。それぞれの手法について解説します。
リスクコントロール
リスクコントロールとは、リスクの発生前後にわけて対策を講じる手法です。たとえば、契約書の見直しやプロジェクトの中止などは、リスクを未然に防ぐための対策です。一方、訴訟対策や分散投資などは、問題が起きた際の対策といえます。
なお、具体的なリスクコントロールは、「損失防止」「回避」「損失削減」「分離・分散」の4つにわけられます。
リスクファイナンシング
リスクファイナシングとは、経済的な損失をカバーするための対策で「保有」と「移転」に分類されます。
保有とは、企業内で損失をカバーする手法です。損失に備えて資金をプールしておく、明確な対策をとらず経費として処理するなどの対策があります。
移転とは、外部に資金を用立ててもらう手法です。一般的な移転の手法として保険への加入が挙げられます。
リスク管理に関する認証取得
PマークやISMS(ISO27001)について、認証の対象や、要求される項目を紹介します。
Pマーク
Pマーク(プライバシーマーク)は、個人情報をターゲットとする認証です。Pマークを取得するためには、個人情報の保護体制を、第三者に承認してもらわなければいけません。また、官公庁入札やビジネス上の取引では、Pマークが必須です。
ISMS(ISO27001)
ISMS(ISO27001)とは、個人情報を含む情報セキュリティの管理体制を証明するための認証です。ISMS(ISO27001)を取得するためには、第三者に情報セキュリティ体制を監査してもらう必要があります。
取引要件としてISMS(ISO27001)が挙げられているケースがありますが、この場合はPマークのみでは対応できないことを覚えておきましょう。
リスク管理を行うためのプロセス
リスク管理のプロセスを、手順にしたがって解説します。リスク管理の手法を決定したあとも油断せず、PDCAを回して改善を続けましょう。
リスクの特定を行う
まずはリスクの特定として、過去に発生したリスクを洗い出しましょう。方法としては社員にアンケートを取りリスクをたくさん挙げてもらう、ブレインストーミングを実施するなどの作業を実施します。このときリスクの重要性を、社員個人に判断させないことがポイントです。
見逃しがないように多くのリスクを収集したのちに、発生する可能性が高いリスクを特定します。
リスクの分析を行う
リスクを「発生しやすさ」と「ダメージの大きさ」で定量化して、管理すべきリスクの優先順位をつけましょう。すべてのリスクに対して平等に対応できないため、早急に対応すべきものからリスク管理に取り組みます。
リスクを評価する
縦軸を「発生しやすさ」、横軸を「ダメージの大きさ」に設定した表をつくり、リスクを配置しましょう。リスク分析の結果を可視化でき、リスク管理に取り組むべき順番が一目でわかります。改めて、リスクごとの影響度や発生しやすさを把握してください。
リスク対策を実行する
具体的にリスク対策を考案し、実行します。リスク対策には「低減」「移転」「許容」「回避」の4つのアクションが有効です。
低減とは、リスクの発生確率と、トラブル時に企業が受けるダメージを抑えるための手法です。移転とは、保険や契約などを利用して損失を補填できるよう検討する手法を指します。
許容とは、リスクの容認です。リスクが起きてもそれほど影響が出ない場合は、あえてリスク対策を取る必要はありません。リスク対策を取らなければ、リソースを節約できます。
最後に、回避とはリスクそのものをなくす手法です。回避の例として、事業の売却、自然災害が予想される場所からの引っ越しなどが挙げられます。
リスク対策のモニタリング・評価を行う
リスク対策の結果のモニタリングと評価により、改善点を確認します。継続してリスク対策の効果を観察しなければ、適切なリスク管理とは呼べません。講じた対策によって問題が解決されているか、対策を継続できているかを必ずチェックしましょう。
改善・PDCAサイクル回す
リスク対策をモニタリングした結果をもとに、改善点を修正しましょう。PDCAを回し、徐々にリスク対策をレベルアップしていきます。修正の経緯をまとめておくと社内の誰であってもリスク対策に取り組める、実用性の高いガイドラインができます。
リスク管理にしっかり取り組むためにも、継続的にPDCAサイクルを回すことが大切です。
リスク管理の実施におけるポイント
リスク管理にBCP(事業継続計画)対策を加えると、リスク管理体制を強化できます。BCP対策を検討すると、リスク管理の優先事項が明確になるためです。
BCP対策とは、有事の際に企業活動を続けられるように準備することを指します。また、有事とは、新しい感染症の蔓延や大規模な自然災害などの、予測が難しい事態を指します。
まとめ
リスクマネジメントは、企業の存続のために必須の考え方です。リスクを漏れなく洗い出し、優先順位をつけて対策しましょう。
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