コンプライアンス違反が明らかになれば、企業に多大な影響を与える可能性があります。適切に対応するためには、コンプライアンスに関する正しい知識を身につけておくことが大切です。
この記事では、コンプライアンスに関する実務にあたる企業の担当者に向けて、コンプライアンス違反の概要や発生する原因と対策、違反を起こした場合の具体的な対応手順などを解説しています。ぜひ役立ててください。
目次
コンプライアンス違反とは?
コンプライアンス違反を理解するためには、コンプライアンスとは何かを正確に把握しておかなければなりません。コンプライアンスとは、法令遵守を示す言葉です。さらに、倫理観や就業規則などの社内規程を遵守する意味も含まれており、コンプライアンスに違反すると、企業イメージが低下するだけでなく社会的な信用を失う場合があります。
コンプライアンス違反の一例は、長時間労働やハラスメント、情報漏洩、業務文書の偽造、不正会計、誇大広告などです。近年は、企業でコンプライアンス違反防止が重要視されています。
企業においてコンプライアンス違反防止が重要視されている理由
企業でコンプライアンス違反防止が重要視されるようになったのは、次の理由が挙げられます。インターネットやSNSが普及したことで、個人が簡単に情報を発信できる時代になったためです。企業内で不正が発生した場合に、社員がSNSを利用して匿名で内部告発し、事件が明るみに出ることも珍しくありません。
また、コンプライアンス違反がブランドイメージを低下させるケースも多く、企業の売上の減少に直結します。このように、コンプライアンス違反は企業にとってもマイナスになるため、コンプライアンス違反防止に力を入れる必要があります。
コンプライアンス違反は倒産のリスクもある
コンプライアンス違反は企業の売上の減少を引き起こすため、倒産につながるリスクも高まります。帝国データバンクの「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度)」によると、2020年度にコンプライアンス違反が原因で倒産した企業の件数は、182件となっています。
前年の2019年度は225件で19.1%の減少が見られますが、現在でもコンプライアンス違反で倒産している企業は多いといえるでしょう。コンプライアンス違反の種類で件数が多かったのは、粉飾の57件、資金使途不正が26件でした。
※出典:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020 年度)|株式会社帝国データバンク
コンプライアンス違反が発生する4つの原因
コンプライアンス違反はなぜ起きてしまうのでしょうか。以下では、コンプライアンス違反が起こる4つの原因を解説します。
コンプライアンス管理体制が甘い
企業のコンプライアンス管理体制が緩く、誰でも不正を働ける環境になりやすいことが、コンプライアンス違反を引き起こす原因の一つです。たとえば、機密情報へのアクセス制限を設定していないケースや、勤怠管理のルールが曖昧になっているケースが挙げられます。
コンプライアンス違反にあたる行為は、社員の間でも起こり得ます。経営層の目が行き届かないところで、個人情報の流出などの不正が発生しているケースも多いため、注意が必要です。
法律に関する理解が不足している
コンプライアンスに関する法的な知識が不足している場合、本人は違反行為だと知らずに行っている可能性もあります。経営層だけが法律に詳しくても社員が法的な知識が不足していれば、コンプライアンス違反が起こりやすくなります。社員がコンプライアンス違反になるとは知らなかったとしても、言い訳にはなりません。
コンプライアンス違反を防止するためには、労働基準法などの経営に関連する知識を身につけさせておく必要があります。
発見・報告できる仕組みが整っていない
コンプライアンス違反を防止しようと企業で取り組んだとしても、コンプライアンス違反を発見・報告しやすい仕組みが整備されていなければ、リスクは高まるばかりです。たとえば、コンプライアンス違反行為が社内で共有されていない、コンプライアンス違反を見つけても報告できる窓口がない、報告する社員のプライバシーが守られていないなどが考えられます。
社員の業務に対するプレッシャー・不平不満
社員へのプレッシャーが情報漏洩のリスクを高める場合があります。たとえば、社員に勤務時間外は残業しないことを徹底した結果、顧客情報などの機密情報や仕事を持ち帰り、自宅で作業したために情報漏洩のリスクにつながります。
また、社員が会社に対して不平や不満がたまり、愚痴をこぼした話の中で内部情報をおもわず口にした内容を、家族や友人がSNSで発信してしまうケースも珍しくありません。
コンプライアンス違反を起こさないための注意点
企業がコンプライアンス違反を発生させないためには、以下で解説する注意点に気をつけましょう。
社内ルール・マニュアルの作成・運用を行う
コンプライアンス違反を防止するには社内ルールやマニュアルを策定し、徹底した運用を心がけましょう。ルールやマニュアルに入れる内容の一例は、社内データを社外に持ち出すのは禁止、パワハラやセクハラ、マタハラなどのハラスメント行為は一切禁止、緊急性のない残業は禁止などです。
また、社員がプライベート上でSNSや講習の場で発言した内容が、企業のコンプライアンス違反につながるケースもあるため、発言時の注意点も共有しておきましょう。
コンプライアンス研修を定期的に行う
コンプライアンスへの理解を高めるために、社員を対象にした研修を実施するのも違反防止に有効な対策です。具体的には、どのような行為がコンプライアンス違反にあたるのか、コンプライアンスを理解するうえで必要な労働基準法や、パワハラ防止法などの法律も取りあげましょう。
また、情報漏洩の防止のためには情報管理や情報セキュリティーの研修を行い、社内に周知させる必要があります。コンプライアンス研修に外部講師を招くのも効果的です。
コンプライアンスのセミナーやイベントに参加する
社外で開催されているコンプライアンスをテーマにしたセミナーやイベントに、社員を参加させるのも有効です。セミナーやイベントに参加すれば、コンプライアンス違反の事例や具体的な対応例などの情報を集められます。企業を代表して参加させるなら、マネージャーやリーダー層の社員に受講させるのがおすすめです。
参加後は、自社のコンプライアンス違反の防止と照らしあわせ、対策が十分でない場合は改善し社内に周知しましょう。
コンプライアンスに関する専門チームを設定する
コンプライアンスに関する相談や報告が可能な環境が整備されていない場合は、専門チームを設けてコンプライアンスに関する相談窓口を明確にしましょう。社内の部署や人材だけで構成するのも可能ですが、適切に対応するためには専門知識がある人材が不可欠です。
自社に適した人材がいない場合は、コンプライアンスに詳しい弁護士や、社会保険労務士などの外部の専門家を加えることをおすすめします。
コンプライアンス違反が発生した場合の対応手順
自社でコンプライアンス違反が起きてしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。以下では、具体的な対応手順を解説します。
1.状況を把握する
コンプライアンス違反の発覚後にまず行うことは、現状の把握です。具体的には、コンプライアンス違反が発生した原因の究明と被害状況を確認しましょう。コンプライアンス違反がなぜ起きたのか原因を突き止めなければ、再発防止の対策を検討できません。
また、被害状況を把握しておけば、被害が拡大する前に適切な対処が行えます。弁護士と連携を図り、対応する際の注意点などのアドバイスをもらうことも大切です。
2.謝罪をする
社内で不祥事が発覚した場合は、マスメディアなどで報道される前に迅速に謝罪する必要があります。メディアに報道されてから対応したり、不祥事の事実を認めずに責任逃れをしたりすれば企業イメージは低下し、社会的な信用を失いかねません。
不祥事が明らかになったら、現状を把握したうえで事実を認めて謝罪しましょう。風評被害や憶測だけでメディアに取り上げられるリスクがあるため、謝罪後は原因や再発防止策などの発信を自ら行うことも重要です。
3.違反関係者への処分を検討する
コンプライアンス違反行為をした関係者に対する処分は、公正かつ慎重に行うことが大切です。甘い処分や関係者だけを厳しく処分するなど、迅速に処分を決定したことが、かえって世間にネガティブなイメージを与えてしまう場合もあります。
また、見せしめのように厳しい処分をした場合、従業員から不満の声が上がることもあるかもしれません。違反行為をした関係者の処分を検討する際は、弁護士などの第三者で構成した調査委員会に任せましょう。
4.企業全体でコンプライアンス強化を図る
コンプライアンス違反行為をしたのが一部の社員だとしても、企業全体の問題として認識しなければなりません。コンプライアンス違反が自社で起きたことを事実として受け入れ、再発防止のために企業全体でコンプライアンス強化を図りましょう。上述した社内研修の実施はもちろん、コンプライアンス違反にあたる行為を明確化するなど、対応フローを検討しておくことも大切です。
まとめ
コンプライアンスに関する知識の不足や体制が不十分の企業は、社員が違反とは知らずに不正行為をしてしまう可能性があります。また、取引先や関係先でコンプライアンス違反がないか、事前に把握しておくことも重要です。
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