反社とは、不当に利益を得る目的で暴力、脅迫、詐欺などを行っている集団や個人のことです。反社とよばれる集団や個人には暴力団が関わっている場合が多く、悪質な手口により企業を攻撃しています。
この記事では、反社による被害にあわないための対策を講じようとしている企業へ向けて、反社を排除すべき理由や具体的な対策について解説します。
目次
「反社」とは何か
反社とは「反社会勢力」のことです。政府は反社の排除を目指しており、企業が被害にあわないための指針を発表しています。そのなかでは、反社について「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されました。
反社と関わりをもった場合、自社の従業員に対して不当な要求が行われたり、組織を乗っ取られたりするリスクがあります。
反社に該当する団体
政府は反社の排除について「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表しています。この指針において、反社に該当する団体が具体的に示されました。ここでは、どのような団体が反社に該当するのか解説します。
暴力団
反社の代表格として暴力団があげられます。暴力団員や暴力団準構成員などの個人も反社としてみなされます。暴力団員を辞めた後も5年が経過するまでは暴力団員とみなされるため、注意が必要です。
暴力団関連企業
暴力団関連企業は、運営に暴力団が関与している企業のことです。「フロント企業」ともよばれており、暴力団の資金源にもなっています。暴力団関連企業は一般企業を装って運営しているため、簡単には見抜けません。
社会運動・政治活動標ぼうゴロ
社会運動や政治活動を装って不当に利益を得ようとする団体も、反社に該当します。標ぼうとは、主義や主張を掲げて示すという意味です。このような団体は、主義や主張を掲げるために暴力や不法行為を行うケースもあります。
総会屋
総会屋とは、株主総会を悪用して企業へ金品を要求する人のことです。企業の株を保有しており、株主総会においてはほかの株主と同様に質問や議決を行います。株を保有すれば誰でも総会屋になれるため、対策が難しいといわれています。
反社による不当要求の手口
反社はどのような手口で不当な要求をしているのでしょうか。ここでは、具体的な手口について解説します。
接近型
接近型は、一方的な依頼や勧誘を行う手口です。機関誌の購読、寄付金、下請け契約などを依頼してきたり、物品やサービスの利用について勧誘してきたりします。反社からこのような依頼や勧誘を受けた場合は、どのような理由があっても拒絶すべきです。対等な会話にならない場合が多いため、注意して対応しましょう。
攻撃型
攻撃型は、クレームを入れたり脅したりして企業へ金銭を要求する手口です。企業のミスやスキャンダルについて質問状を出したり、街宣活動を行ったりするケースもあります。内容にかかわらず、要求は断固として拒絶しなければいけません。自社に何らかの問題があるなら、再発防止策や事実の公表によって適切に対処すべきです。
反社排除のための社会的対策
反社を排除するためさまざまな対策が実施されています。ここでは、実際に取り組まれている社会的対策について解説します。
政府の指針
2007年の犯罪対策閣僚会議において、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表されました。この指針では、その名の通り、企業が反社による被害を受けないようにするための基本的な原則がまとめられています。同時に、企業が反社との関係を遮断するよう強く求めているのが大きな特徴です。
企業が事業を運営するうえでは常にこの指針を意識し、反社と関わりをもたないようにする必要があります。
都道府県ごとの条例
各都道府県は、それぞれ暴力団排除条例(暴排条例)を定めました。暴力団との関わりをもたないようにすることを事業者の努力義務としています。具体的には、契約する際に取引相手について確認したり、契約書に暴排条項を設けたりすることが求められています。また、事業者からの反社に対する利益供与も禁止です。
金融機関の取り組み
証券業界
証券会社は「反社会的勢力との関係遮断に関する規則」を設け、反社との関わりを未然に防いでいます。また、証券取引所は「新規上場審査基準」を定めており、企業が上場する際の審査において反社との関係性を確認しています。これらの取り組みにより、反社との関わりをもつ企業の資金獲得を防止しています。
銀行業界
銀行業界では、金融庁のガイドラインに基づいて反社による被害を防止するための取り組みを行っています。反社との関係を遮断するための取り組みを統括する部署を設け、具体的な対策を実施している銀行が多いです。口座取引の規定にも暴力団排除条項を導入しており、口座が反社に利用されないようにしています。
反社との関わりで生じるリスク
反社と関わりをもつと、自社にとってさまざまなリスクがあります。ここでは、具体的にどのようなリスクが生じるか解説します。
法令違反となる
反社と何らかの関わりをもった場合、各都道府県が定めている暴力団排除条例に違反したと判断されます。暴力団排除条例に違反すれば、1年以下の懲役や50万円以下の罰金を科される恐れがあるため注意が必要です。また、反社と関わりをもった事実について勧告されたり、社名が公表されたりする可能性もあります。
企業イメージが低下する
社会全体で反社を排除しようという意識が高まっています。そのため、自社と反社の関わりが明るみになれば、社会から強く批判されるでしょう。
同時に、自社に対する世間からのイメージが著しく低下する恐れがあります。社会的信用が失墜し、その後の経営が立ち行かなくなるリスクもあります。一度低下したイメージを回復するのは非常に難しいです。
企業経営にダメージを生ずる
金融機関は反社を排除するための取り組みに力を入れているため、反社と関わりをもつ企業とは取引しないようにしています。そのため、反社と関わりをもつと、金融機関から融資を受けられなくなる恐れがあります。上場企業の場合は、上場廃止となる可能性もあるでしょう。さらに、役員が辞任したり従業員が離職したりする恐れもあります。
反社との関わりが判明したときの対処法
反社と関わってしまった場合は、適切な対処が必要です。ここでは、具体的な対処法について解説します。
契約の拒絶する
取引を検討している企業について反社の疑いがあることが発覚したら、契約を拒否しましょう。反社と言い切れない場合でも、疑いがあるなら契約を避けるべきです。契約自由の原則が認められているため、特別な理由がなくても契約を断ることは可能です。契約を断る具体的な理由を相手へ伝える必要はありません。
弁護士や暴力団追放運動推進センターへ相談する
契約した後に相手企業が反社だと判明した場合は、内容証明郵便により契約解除を通知しましょう。
また、弁護士や暴力団追放運動推進センターにも相談すべきです。暴力団追放運動推進センターは暴追センターともよばれており、暴力団の排除を進めるために組織された団体です。暴力団による被害を受けた場合の救済も行っています。
警察へ連絡する
反社から脅しや暴力行為などを受けて身の危険を感じているなら、警察にも連絡したほうがいいです。反社は警察への通報を恐れているため、早い段階で警察が介入すると事態の悪化を防げます。相手のペースに乗らないようにするには、冷静な判断により適切な対処を行うことが大切です。
反社との関わりを回避するには
反社との関わりを未然に回避するには、どのような対策をすればいいのでしょうか。ここでは、具体的な対策について解説します。
反社チェックを実施する
反社チェックとは、取引を検討している相手が反社でないか、反社と関わっていないか確認する方法です。反社チェックにはさまざまな方法があります。代表的な反社チェックの方法を解説します。
インターネット検索
GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使用し、取引相手について調べる方法です。社名や役員の氏名などで検索し、反社との関連がないか調べます。また、新聞記事のデータベースでも検索をかけると、反社との関わりについての報道がないか確認できます。
公的機関への照会
取引の相手企業が反社とつながっていそうな場合は、警察や暴力団追放促進センターに詳細を照会できます。照会を依頼したい相手の氏名や生年月日などがわかる資料を用意しておけば、よりスムーズに相談できるでしょう。
調査会社を利用
よりくわしく反社チェックを行いたい場合は、専門の調査会社に依頼するのもひとつの方法です。調査会社は独自に調査や情報収集のルートをもっているため、精度の高い情報を簡単に入手できます。
契約書に暴力団排除条項を定める
反社との関係を排除するためには、契約書に暴力団排除条項も盛り込む必要があります。相手企業が暴力団排除条項を確認した際に拒絶するような反応がみられた場合は、反社に該当する可能性があるため契約を断りましょう。
万が一、契約後に相手企業が反社であるとわかっても、暴力団排除条項を定めておけばスムーズに契約を解除できます。
まとめ
企業が事業を進めるうえでは、反社と関わりをもたないように対策を徹底する必要があります。反社と関わればさまざまなトラブルに発展するため、十分に注意しましょう。
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