反社会的勢力の存在は、近年減少傾向にあります。政府による方針の提示や各企業の努力によって、反社会的勢力と接触する機会は減っているのです。
その一方で、未だ反社会的勢力による脅威には注意しなければなりません。この記事では反社会的勢力の定義や政府の示す指針、具体的な対処法まで解説します。
目次
反社会的勢力の定義
反社会的勢力とは、現時点で明確な定義を持たない存在です。一般的に暴力団(暴力団構成員)を示す言葉として使われることが多いですが、間接的に関わっている準構成員も含まれます。
準構成員とは、暴力団と関係を持ち、その背景を利用して暴力的な行為を行う人、もしくは暴力団や暴力団員に対して資金・武器などの供給を行って団の運営を支援する人を意味します。
その他にも、特殊詐欺集団、ぼうゴロ、特殊知能暴力集団なども反社会的勢力に含まれることから、近年その種類は多様化しているのが特徴です。
反社会的勢力の情勢
反社会的勢力は、1992年に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)」が施行されて以来、減少傾向にあります。社会的に暴力団を排除しようという動きが活性化したことから、結果的に被害に遭う人や企業が少なくなったと考えられるでしょう。
2018年には暴力団員関係者の数は3万人程度にまで減少したとも言われ、今後も数が減っていく可能性があります。
反社会的勢力に対する政府の指針
反社会的勢力への対応方法に関して、政府や市町村はさまざまな指針を提示しています。
1.政府指針
政府は2007年6月19日に、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針 」を発表しました。
そのなかに「反社会的勢力による被害を防止するための基本原則」が盛り込まれていて、以下のような方針が示されているのです。
反社会的勢力による被害を防止するための基本原則 組織としての対応 外部専門機関との連携 取引を含めた一切の関係遮断 有事における民事と刑事の法的対応 裏取引や資金提供の禁止 参考:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針 |
企業は反社会的勢力に対して、上記の基本原則を軸にした対応や備えが必要となります。
2.条例指針
全国の都道府県では、反社会的勢力対策として「暴力団排除条例(暴排条例)」を制定しています。
企業は仕事で取引を行う相手が、何らかの理由によって反社会的勢力に属していると疑われる場合には、その事実を確認する努力を行うべきと定められているのです。
例えば「東京都暴力団排除条例」には、以下のような条文があります。
(事業者の契約時における措置)第18条1 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。 参考:東京都暴力団排除条例 |
3.証券取引所の指針
証券取引所も、反社会的勢力への対策に関する指針を提供しています。
例えば上場審査に関するガイドラインのなかで、反社会的勢力と関係を持っていないことを証明する必要があると定められているのです。
具体的な内容は、東京証券取引所の「上場審査等に関するガイドライン」を参考にすると以下のようになります。
(公益又は投資者保護の観点) ⑶ 新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること。 参考:上場審査等に関するガイドライン |
反社チェックの方法とは
企業は政府や都道府県が示す指針に従って、反社会的勢力と関係を持たないための努力が求められます。
取引相手が反社会的勢力かどうかを確認するには、以下の方法で反社チェックを行うのがポイントです。
1.データベース照会
反社会的勢力かどうかを確認するには、企業や個人の情報が保管されているデータベースで過去の履歴を照会するのがひとつの方法です。その企業や代表者が過去に問題のある行動や、反社会的勢力との接点を指摘された経歴がないかを確認することで、安心して取引が行えます。
データベースにはさまざまな種類があり、インターネットの検索エンジン、新聞記事、雑誌のバックナンバーなどを活用することが考えられるでしょう。例えば、データベース上で相手企業や代表者の名前と、「暴力団」「反社」「恐喝」などのキーワードを一緒に検索することで、過去に問題行為があったかをチェックできます。
2.都度調査
反社会的勢力の疑いを排除するためには、取引先の関係者(代表者、役員、株主)などを調査することも重要です。特に役員や株主など社内関係者が変更になった場合などは、その都度反社チェックを行って潔白であることを確認しましょう。
既に関係を持っている企業相手にも、定期的に最新情報を収集して、反社会的勢力ではない確証を得た上で取引を継続するのがポイントです。
3.警察や暴追センターへの相談
取引先企業に反社会的勢力の疑いがかけられた場合には、警察や暴追センターなどに相談しましょう。
疑いの理由を提示することで、警察や暴追センターが対処法を指南してくれるケースもあります。
また、反社会的勢力である確証がない段階でも、警察や暴追センターに接触することで情報提供を依頼可能です。ネットや新聞などには露出していない情報を得られるケースがあるため、より精度の高い反社チェックを実施できます。
4.専門機関や調査会社へ依頼する
自社だけで反社チェックを行うのが難しい場合には、専門機関や調査会社に依頼することも考えられます。
専門機関や調査会社は、独自のデータベースを使って反社チェックを実施するのが特徴です。
自社では把握しきれない情報の収集をスピーディに行ってくれるため、反社チェックに多くの時間を取られずに済みます。情報の正確性も高いため、信頼できるデータを参考にできるのもメリットです。
反社会的勢力に巻き込まれやすい人の特徴と注意点
反社チェックは企業にとって重要な業務のひとつですが、可能であれば反社会的勢力に巻き込まれないのが1番です。以下からは、反社会的勢力とのトラブルに巻き込まれやすい人の特徴と注意点を解説します。
1.金銭トラブルが多い
普段から金銭トラブルが多い人は、その隙を狙われて反社会的勢力からアプローチをかけられる機会が増える傾向にあります。一時的に資金を融資してもらったために、その後違法な金利による返済を迫られるといったケースは珍しくありません。
また、金銭を使用するために夜の街に繰り出すことが多い場合も、反社会的勢力と接触する機会が増えます。金銭トラブルを理由に恐喝などを受ける可能性も考えられるため、企業のコンプライアンスを守るためにも普段から注意して行動すべきでしょう。
2.反社と距離が近い傾向にある業界
飲食、不動産、バー経営、クラブ経営といった業界は、反社会的勢力と近いつながりを持っている傾向にあります。すべての企業・店舗が反社会的勢力と関係しているわけではありませんが、上記の業界と取引をする際にはいつも以上に反社チェックを入念に行うことがおすすめです。
3.女性関係が派手な人
普段から派手な女性関係を継続している人も、反社会的勢力からの接触に注意する必要があります。
特にエグジットを行って利益を得たタイミングで近づいてくる女性には、警戒心を持つべきでしょう。
反社会的勢力が意図的に女性を利用して、企業関係者に接触するケースもあります。
女性に対して心を許した結果、会社の機密情報を話してしまい、それを理由にトラブルに発展することも多いです。企業のコンプライアンスを守るためにも、女性問題を理由とした反社会的勢力との接触にも十分注意しましょう。
まとめ
反社会的勢力への対処は、企業が健全な事業を営んでいくために欠かせない要素です。
この機会に反社会的勢力の定義や政府による指針を確認し、社内で明確なルール作りとその周知を行いましょう。
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