近年、「反社」という言葉をニュースで目にする機会が増えてきており、自分の勤務先に怪しげな取引先がいることや自分の身の回りに反社会的勢力が存在する可能性を考えたことがある人は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、反社会的勢力の意味や反社会的勢力と取引をしてしまうリスクについて解説します。また、リスクを事前に回避する方法もあわせて解説しますので参考にしてください。
目次
反社会的勢力の意味とは?
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の第二条第二項によりますと、「反社会的勢力」とは以下を意味しております。
暴力団 その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。
また、これらを細かく分けると以下の通りです。
- 暴力団
- 暴力団員もしくは暴力団準構成員
- 暴力団関係企業
- 総会屋、社会ゴロ等企業
- 社会運動標榜ゴロ
現代では警察庁の暴力団取締法により、1990年には暴力団員もしくは準構成員の数が9万1000人から2万4000人と減少しているものの、現在もなお普通の企業に装ったり株主を利用したりすることで反社会的勢力は続いています。
そのため、ニュースで「反社」を見ると詐欺や暴力団が強行するイメージを持ってしまいがちですが、実際にどこに反社会的勢力が関わっているかわからないことがあります。
自分には関係のない話と思う人が多いと思いますが、自分でも気付かないうちに反社会的勢力と関連する事業に携わっている、知り合いに反社会的勢力がいることも考えられるのです。反社会的勢力は見極めることが難しくなっていることから、「誰もが反社会的勢力に関わる可能性がある」ことを意識していく必要があります。
反社会的勢力が企業を狙った事例
反社会的勢力の意味を聞いても、実際にどのような企業が反社会的勢力と関わりを持ったり狙われたりしていたのかイメージがつかないかもしれません。
そこで次に、実際に反社会的勢力が狙った企業の例を4つ紹介します。
- みずほ銀行反社会的勢力融資事件に関する諸問題
- スルガコーポレーション事件
- 飛鳥会事件(三和銀行 現:三菱UFJ 銀行)
- 西武信金が反社会勢力に融資
それぞれ詳しく解説します。
➀みずほ銀行反社会的勢力融資事件に関する諸問題
2013年9月27日、金融庁はみずほ銀行で約2億円の問題取引が行われたと発表しました。
株式会社オリエンタルコーポレーションを保証会社としてローンを提供する際に、反社会的勢力にローンが提供されていることが発覚したことから、みずほ銀行に対して処分が下りました。
その理由として以下の通りです。
- 反社会勢力との取引が発覚してから2年以上もの間、取引の取り消しや解消といった対応を行わなかったこと
- 反社会勢力の取り引きの情報が多数存在していたにも関わらず役員止まりであったため、経営管理態勢・内部管理態勢・法令等の遵守態勢に問題があること
➁スルガコーポレーション事件
スルガコーポレーション事件は地上げをめぐって、弁護士の資格がないのにも関わらず違法な立ち退き交渉を行って資金を調達し、反社会的勢力に加担していたのです。
スルガ社は2003年に不動産業者の光誉実業と手を組み、立ち退き交渉を委託しました。物件の立ち退き交渉には弁護士の立会いが必要にも関わらず立ち退き交渉や仮装売買契約書の作成を行い、計5件の地上げに成功しスルガ社は総額約250億円の利益を取得し、光誉実業へ計約150億円が報酬として支払われました。
この背景の裏側として、光誉実業の社長は山口組と関わりがあったことから数十億円の資金が山口組へと流れるなど、大きな問題となっています。
スルガ社は光誉実業に暴力団との関わりがあったことに対して結果として関わってしまったと過失を強調していました。
③飛鳥会事件(三和銀行、現:三菱UFJ 銀行)
飛鳥会事件は現三菱UFJ銀行淡路支社(旧三和銀行支店)が暴力団の飛鳥会に対して、長期に渡る融資のやりとりが行われていたり、横領事件に関与していたという反社会的勢力に関わる問題です。
三和銀行は1970年代から飛鳥会に対して融資を開始し、金融庁や大阪府警によると約数十億円が飛鳥会に渡ったとされています。
不適切な取引が行われていたにも関わらず、経営陣は融資を止めることで不測の事態が起きかねないと反社会的勢力との取引に対して行動を取らなかったことに問題があると取り上げられました。
また、飛鳥会理事長による横領事件に三和銀行が関与したことによる経営責任を明らかにしなかったことから、三和銀行は金融庁によって一部の業務停止など大きな処遇を受けることになったのです。
④西武信金が反社会勢力に融資
西武信金は反社会的勢力である準暴力団幹部に関わりがあると思われる企業や個人対して、融資をしていたことで金融庁から処分が下りました。
西武信金の職員は反社会的勢力に対して、融資資料の偽造や見過ごしが行われていたことが明らかになり、職員が看過していたと思われる件数は127件、そのうち73件は約139億円が改ざんされていたと言われています。
他にも、融資を行うために外部専門家に融資を受けやすいように物件の耐用年数を指示した回数が259件に渡って行われていたなど、反社会的勢力への問題が多数明らかになりました。
これらの実態に対して金融庁は西武信金が反社会的勢力への取引排除への職員が1人であったことや業務優先で内部統制が整っていなかったなど、対策が不十分であったという指摘です。
それにより、西武信金は行政処分と信用金庫法に基づく業務の改善命令が出されました。
反社会的勢力と取引をしてしまうリスク
反社会的勢力と取引を行ったことにより、警察庁や金融庁などから処分を受けて業務に大きく関わった企業が数多く存在します。直接反社会的勢力と関わった企業もあれば、関わっていることに気付かずに取引をし、被害を受けてしまった企業もあります。
そのため、他社と取引を進める場合はリスクや被害を背負う可能性を考慮しながら対応をしなければいけません。
以下では、実際に反社会的勢力と取引をすることによって、どのようなリスクを負う可能性があるのかを解説していきます。
- 直接的な被害
- 法令違反による影響
- 取引中止・契約解除
- 上場廃止・中止
- 関係者の処分
それぞれ詳しく解説していきます。
➀直接的な被害
反社会的勢力は個人や企業に対して、以下のような直接的な被害を与える可能性があります。
- 業務ミスによる付け込み
- 暴力団に対して借りを作り、弱みへの付け込み
職員による業務ミスをきっかけに、暴力団から脅しを受けたり、対応に応じたことで暴力団の要望がエスカレートしたりしてしまうと、反社会的勢力との関係性を解消するのが難しくなります。
また、不当要求に対する顧客に困っているところを手助けしてもらい、借りを作ったことにより過剰なサービスをすることになった事例もあります。
これらの事例が起こった際は、組織として決められた通りルールに従い、警察や弁護士などの外部専門家と迅速に連携して問題解決を進めていきましょう。
➁法令違反による影響
反社会的勢力と関係性を持ってしまうことで、企業が大きな被害や影響を受ける事例が多々存在します。事例のひとつとして、暴力団組長を含む3人が風営法違反容疑で捕まった際に、ある企業の社長は定期的に食事をしていたことが明らかになり処罰を受けることとなりました。
当初、社長は過失を強調していましたが、取調べの中で暴力団と密接交際者であることが明らかになり、国や県から排除通告を受けることとなります。
排除措置を受けたその会社は民間企業からの信用を失い、他社との取引が厳しくなりました。社長は排除措置回避を試みましたが叶うことなく、銀行口座の凍結されたこともあり倒産という結果に終わりました。反社会的勢力と関わりを持つことで、様々な制限や影響を受けて倒産する会社は少なくありません。
③取引中止・契約解除
取引先の企業が反社会的勢力と関わりがあると発覚した際に、取引の中止や契約の解除いった対処が行われる事例があります。また、反社会的勢力と取引をしてしまうと、自社も反社会的勢力ではないかといった疑いをかけられてしまう恐れもあります。
現在では反社会的勢力との関わりをもたないために、事前に契約書に暴力団排除条項を記載しておくことで反社会的勢力と関係を持っている企業との取引をしない、もしくは取引の途中でもその事実が判明した時点で取り消しすることが可能です。
④上場廃止・中止
2007年に法務省が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」を発表したことにより、銀行や地方自治体で反社会的勢力への取締りが強化されました。
スタートアップや上場企業は多額の資金調達が必要となるために反社会的勢力から狙われやすく、反社会的勢力との関わりが表に出た後に上場中止になった事例があります。
2015年、株式会社オプトロンは第三者割当増資にを行うにあたって、割当先の企業が反社会的勢力に関わりがあると報告を受けました。しかし、オプトロンはその事実を隠蔽し上場していた名古屋証券取引所に報告しなかったことから最終的に上場廃止の処分が下されました。
⑤関係者の処分
反社会的勢力に対して企業が書類の手続きや融資の隠蔽をしていた事実や、暴力団の幹部と食事を数回している職員がいるなど反社会的勢力と関わりを持った企業や職員は、政府の条例に反しているとして処分を受けた事例が多くあります。
これらを事前に防ぐために組織の中に反社会的勢力に対する取引排除の職員を配置したり、反社チェックをしっかり行うなどして組織内や外部での対策が必要です。
また、関係者の処分だけでなく、業務改善命令が下りてしまうなど、反社会的勢力と取引をすることで企業にとっては大きなダメージとなることには間違いありません。
反社会的勢力に対する国・自治体による対策
多くの人が反社会的勢力に対してイメージしていたような恐喝や暴力行為、ノミ行為などの不当な行為が以前は目立っていました。それを防止するために国・自治体は暴力団排除条例を1991年に施行します。
各都道府県の事業や事務から暴力団排除、未成年に対する暴力団排からの保護措置、事業から暴力団への資金の供与禁止などの措置が記されており、暴力団排除条例により反社会的勢力による民事への介入への対策効果が推進し、民事への危害削減が可能となりました。
その後も暴力団排除条例のみではお金の流れに関する取締りが困難であるため、国・自治体は2007年に犯罪収入移転防止法を施行しました。
犯罪収入移転防止法は犯罪によって得たお金をマネー・ロンダリングしたり、反社会的勢力に資金が供与されることを未然に防止することができます。犯罪収入移転防止法により、資金の流れを事前に取り締まることで犯罪に繋がる恐れを事前に防ぐことが可能となっております。
これらの法令は多様化していく反社会的勢力を完全に無効にすることはできません。しかし、多くの反社会的勢力に対して犯罪を規制することができるようになりました。
反社会的勢力との取引を事前に回避する方法
反社会的勢力への取引や関与を事前に防げるかどうかは、事業の存続に大きく関わってきます。そのため、取引先と個々の職員に対して反社会的勢力についての対応をしなければいけません。
現在でも多くの企業が取引先との企業に対して、反社チェックをすることで、事前に対策を講じています。実際に反社会的勢力との取引を事前に回避する方法を具体的に解説していきます。
- 契約書に「暴力団排除条項」を入れる
- 反社チェックツールを導入する
それぞれ詳しく解説していきます。
➀契約書に「暴力団排除条項」を入れる
反社会的勢力に関与しないこと、暴力的な行為を行いわないことを相互に保証するために、企業が契約書を締結する際に暴力団排除条項を記載することが推奨されています。暴力団排除条項では、以下のような効果があります。
- 企業のコンプライアンスの強化すること
- 企業の社会的責任を果たすこと
- 反社会的勢力からの不当要求を回避すること
- 企業自身が反社会的勢力に所属してしまうことを防止すること
暴力団排除条項では企業や事業者が反社会的勢力を排除する対応を義務付けられています。自社内雇用者や取引先からの反社会勢力への関与を事前に回避するために、契約書に法力団排除条項を記載することは重要です。
➁反社チェックツールを導入する
反社チェックとは企業が取引をする際に、取引先の企業や従業員が反社会的勢力やそれに関する不祥事に関与しているかどうかについて調べるためのツールです。
反社チェックを行うことで、企業が新規取引を開始する前に反社会的勢力との関わることを防ぐことができます。反社チェックツールにおける主な内容は以下の通りです。
- 取引先の企業や従業員が反社会的勢力であるかどうか
- 過去の不正取引や不祥事の有無
- 事件や事故の有無
- 行政における処分の有無
反社チェックツールでは取引先のネガティブな情報が手に入ることから、反社会的勢力の可能性を効率的に調べることができます。
反社チェックツールとしてオススメなのがRoboRoboコンプライアンスチェックです。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら取引先の反社チェックがワンクリックでできるため、作業を大幅に効率化できます。取引先が多い場合、ぜひ導入を検討してください。
反社会的勢力についてよくある質問
最後に反社会的勢力に関するよくある質問について回答します。
- 反社会的勢力と暴力団の違いとは?
- 反社会的勢力の対応に困ったときはどうすべき?
➀反社会的勢力と暴力団の違いとは?
反社会的勢力は暴力や詐欺、恐喝といった手段を使うことで不当な要求をしたり、経済的な利益を追求する集団や個人を指します。一方で、暴力団は暴力や脅迫によって私的な目的を果たそうとする集団のことを指し、どちらの言葉の意味も似ていると感じるかもしれません。暴力団は反社会的勢力でも暴力や脅迫において経済的な利益を得るという意味では、反社会的勢力の一部に当てはまります。そのため、反社会的勢力の具体的な集団のひとつが暴力団と認識しておけば間違いないでしょう。
➁反社会的勢力の対応に困ったときはどうすべき?
事前に取引先が反社会的勢力に関与していることがわかった上で回避するのが最善ですが、気付かないうちに関わってしまって対応に困った際は警察や弁護士などの外部専門家にすぐに相談することがオススメです。時間が経つほど対応しづらくなる可能性があり、外部専門家に頼ることでスムーズに問題が解決、反社会的勢力に関与することを回避できます。
反社会的勢力のチェックにはRoboRoboがおすすめ
反社会的勢力との関わりを持つことは企業において大きなリスクを背負うことになります。
自分の中では反社会的勢力に関与していないと信じていても、取引相手が反社会的勢力に関与しているとも考えられます。企業との取引をスムーズに安全に進めていくためには反社会的勢力について理解し、事前に問題を回避することが重要です。
また、反社会的勢力との取引を事前に回避するために反社チェックツールの利用は欠かせません。
反社チェックをするにあたってオススメなのがRoboRoboコンプライアンスチェックです。
RoboRoboコンプライアンスチェックは取引先を登録するだけで、取引先の企業や従業員が反社に関与しているかどうか、過去の不正や不祥事、会社の信用など様々な情報がスピーディーに自動で収集できます。取引先が多い場合、ぜひ導入を検討してください。