「不動産取引に反社チェックは必要?」
「具体的な調査方法は?契約書に記載すべき条項についても知りたい」
あなたはこんな疑問を持っていませんか?
不動産取引は比較的大きなお金が動くため、暴力団の資金源として狙われやすい傾向にあります。契約書にはきちんと暴力団排除の条項を定め、取引先もチェックしてください。
この記事では、不動産取引における反社チェックの具体的手法や、契約書の条項まで詳しく解説します。
当記事の内容を実践すれば、不動産取引におけるリスクを排除し、取引時の安心感が桁違いに変わります。ぜひ最後までご覧ください!
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目次
不動産取引では反社チェックが重要
不動産取引には売買契約、賃貸契約などさまざまな形がありますが、いずれにせよ取引先や入居者が反社会的勢力でないか確かめることは重要です。
反社チェックの重要性を理解するため、暴力団排除の指針や条例について知っておきましょう。
- 政府の指針
- 各都道府県の暴力団排除条例
- 不動産協会による反社排除の取り組み
①政府の指針
日本政府は、2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表しました。この指針では、暴力団との関係を一切遮断し、資金供与を禁止する旨の内容が記載されています。
反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入するとともに、可能な範囲で自社株の取引状況を確認する。
取引先の審査や株主の属性判断等を行うことにより、反社会的勢力による被害を防止するため、反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築する。同データベースは、暴力追放運動推進センターや他企業等の情報を活用して逐次更新する。
②各都道府県の暴力団排除条例
2009年から、各都道府県でも暴力団排除条例が制定されました。内容は自治体によって異なりますが、契約時には相手が暴力団関係者でないか確認し、契約書に「反社条項」を設置するよう記載されています。
事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
条例に違反すると、勧告や公表、罰則などの対象になる可能性もあります。
③不動産協会による反社排除の取り組み
不動産協会では、暴力団等反社会的勢力排除対策の取組みについて定めています。
不動産協会においては、不動産取引からの反社会的勢力の排除について真摯に取り組んでまいりましたが、今般、都道府県における「暴力団排除条例」の施行という状況に鑑み、会員企業の不動産取引に関し、当協会理事会において「反社会的勢力排除条項例(売買契約・賃貸借契約)」を決定致しました。
反社会的勢力の排除は大変重要な問題であるため、会員企業におかれましては、不動産取引の契約書に本条項例を参考に反社会的勢力排除のための条項を導入し、反社会的勢力排除の取組をさらに推進していただくようお願い致します。参照:不動産協会
不動産業は大きなお金が動き、反社会的勢力の資金源として狙われやすいため、反社チェックが重要になります。
不動産取引で反社会的勢力と関わる3つのリスク
反社会的勢力に関わってしまうと、故意であるかどうかにかかわらず次のようなリスクが生じるため要注意です。
- 不当な要求を受ける
- 罰則や行政指導を受ける
- 社会的制裁を受ける
①不当な要求を受ける
反社会的勢力に関わると、不当な要求を受ける可能性があります。
反社会的勢力は「威力を示して金品等の経済的な利益を要求する団体」とも表現される通り、経済的利益を得るためなら脅しや脅迫などの手段も用いてきます。
最悪の場合、会社を乗っ取られるリスクもあるため要注意です。
②罰則や行政指導を受ける
反社会的勢力と関わると、暴力団排除条例違反となります。
自治体によって対応は異なりますが、場合によっては罰則が科せられたり行政処分の対象になったりする可能性もあります。
大分の設備業者九設は、社長が暴力団の組長らと飲食を共にしたとして、福岡県警に「社会的に非難される関係を持つ」と認定されました。同社は公共事業から排除され、最終的に倒産に至っています。(参考:朝日新聞)
③社会的制裁を受ける
反社会的勢力と関わると、社会的制裁の対象になります。具体的には、取引先から取引停止を持ちかけられたり、銀行から融資を止められたりするケースもあります。
実際、反社会的勢力に立ち退き業務を依頼したスルガコーポレーションは、不動産の売買や銀行からの融資が困難になりました。同社は最終的に、黒字のまま民事再生手続をするに至っています。(参考:ダイヤモンドオンライン)
反社会的勢力との取引は非常にハイリスクですので、会社を守るためにも反社チェックは非常に重要です。
不動産取引における反社会的勢力の事例
次に、不動産取引で反社会的勢力と取引を交わしてしまった事例を紹介します。
- ヤクザと知らずに賃貸契約を結んでしまった
- ヤクザに立退交渉を依頼してしまった
①ヤクザと知らずに賃貸契約を結んでしまった
家主がヤクザと知らず、賃貸契約を結んでしまった事例です。
入居者は数ヶ月も家賃を支払わず、10ヶ月分以上(170万円ほど)もの家賃を滞納していました。退去させることには成功したものの、保証人も家賃の支払いに応じず、泣き寝入りとなってしまっています。
家主は後から、相手が指定暴力団だと知ったとのことです。
②ヤクザに立退交渉を依頼してしまった
企業が反社会的勢力と取引し、社会的制裁を受けた事例です。
スルガコーポレーションは用地取得の際、反社会的勢力に立退交渉を依頼したことで問題となり、ニュースで取り上げられました。その後、同社は銀行からの融資が止まり、さらに不動産の売却も困難になって黒字のまま倒産してしまいました。
反社会的勢力と関わると社会的制裁を受けるなど、非常にリスクが大きいということを示す好例だと言えるでしょう。
反社会的勢力との取引を未然に防ぐ3つの方法
反社会的勢力は巧みな手口で契約を取り付けてきます。取引を未然に防ぐには、以下のような対策を立てておきましょう。
- 反社チェックを徹底する
- 契約書に反社条項を定める
- 暴追センターに相談する
①反社チェックを徹底する
最も大切なのは、反社チェックを徹底することです。
反社チェックとは、取引先などが反社会的勢力でないか判別する工程で、特に企業においてはコンプライアンス遵守の観点から非常に重要です。
具体的には以下のような方法があります。
- Google検索
- 調査会社に依頼
- 業界団体に問い合わせる
(1)Google検索
まずはGoogle検索で対象のことを調べてみましょう。
ネット記事やニュースサイト、SNSなどを見れば、取引先にネガティブな情報がないか確認できます。まずは対象の氏名と、以下のようなネガティブキーワードを検索してみましょう。
- 暴力団、反社、ヤクザ、闇、ヤミ
- 検挙、釈放、送検、逮捕、摘発、訴訟
違反、容疑、不正、処分、疑い、詐欺、脱税 - 課徴金、追徴金、行政処分、行政指導
ただし、ネットの情報は噂レベルの場合も多く、必ずしも信頼できるとは限りません。検索する際は、複数のデータベースで検索をかけて情報の信頼性を高めるのも大切です。
(2)調査会社に依頼
より詳しく調査したいなら、以下のような調査会社に依頼してみましょう。
- 探偵事務所
- 信用調査会社
- 興信所
調査会社に依頼すれば、2〜3週間かけてレポートをまとめてくれます。レポートを見れば過去の経歴や評判、対外的な信用度など、ネット検索ではわからないような情報が手に入ります。
また、調査会社が作成したレポートは、裁判でも有効な証拠として役立つでしょう。ただし、調査依頼にはまとまった費用がかかるため、全ての取引先に対して実施するのは現実的ではありません。
(3)業界団体に問い合わせる
業界団体に問い合わせるのも手です。
不動産関連の業界団体に問い合わせれば、反社会的勢力に関するデータベースにアクセスできる可能性があります。不動産業の場合、以下のような業界団体が挙げられます。
- 一般社団法人不動産協会
- 公益社団法人全日本不動産協会
- 全国不動産政治連盟
- 公益社団法人不動産保証協会
- 公益社団法人東京共同住宅協会
- 日本高層住宅協会
- 一般社団法人不動産証券化協会
- 一般社団法人マンション管理業協会
②契約書に反社条項を定める
契約書の反社条項は、取引の種類によって内容が多少変わってきます。この項では、以下の2つの場合におけるモデルケースを紹介します。
- 売買契約の場合
- 賃貸借契約の場合
(1)売買契約の場合
最も一般的な売買契約に関する条項です。
まずは互いに反社会的勢力でないと表明し、契約進行に応じて代金の支払いに言及することでトラブルを防止できます。
第X条 (反社会的勢力の排除に関する特約)
買主は、売主に対し、本契約締結時および第●条に定める本物件の引渡し時(以下「本物件引渡時」という。)において、次の各号の事項を確約する。
(1) 自らまたは自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいう。)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者またはその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
(2) 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約の締結および履行をするものではないこと。
2.買主は、売主に対し、本物件引渡時までの間に自らまたは第三者を利用して、本契約に関して次の行為をしないことを確約する。
(1) 脅迫的な言動または暴力を用いる行為。
(2) 偽計または威力を用いて業務を妨害し、または信用を毀損する行為。
3.買主は、自らまたは第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供してはならない。
4.買主が第1項から第3項の規定のいずれかに違反した場合、売主は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。
5.前項の規定により本契約が解除された場合、買主は売主に対し、違約金として売買代金の 20%相当額を支払うものとする。
第Y条 (再売買の予約)
買主が前条第3項の規定に違反した場合において、売主が買主に対して、第1号の金額から第2号の金額を控除した金額を売買代金として本物件を買受けることを書面にて申し入れたとき、売主を譲受人、買主を譲渡人として本物件の売買(以下、当該売買を「再売買」という。)に関する契約が成立する。この場合、買主は、売買代金全額の受領と引き換えに、売主に対して完全な本物件の所有権を移転し、本物件を第三者の占有のない状態で引き渡さなければならない。
(1) 売主が指定する中立な第三者である不動産鑑定士による再売買時の本物件の鑑定評価額。
(2) 再売買のために売主が負担する費用(登記費用、裁判費用、弁護士費用、前号の鑑定費用、本物件を本物件引渡時の原状に回復する費用等)。
参照:不動産協会
(2)賃貸借契約の場合
賃貸契約でトラブルが発生すると、退去させたり家賃を回収したりするのが困難になるため要注意です。
反社会的勢力排除の条項だけでなく、物件の出入りや周辺での迷惑行為に関しても禁止しておきましょう。
第X条 (反社会的勢力の排除)
借主(乙)は、貸主(甲)に対し、次の各号の事項を確約する。
(1) 自らまたは自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいう。)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者またはその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
(2) 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約の締結をするものではないこと。
(3) 自らまたは第三者を利用して、次の行為をしないこと。
ア 甲に対する脅迫的な言動または暴力を用いる行為。
イ 偽計または威力を用いて甲の業務を妨害し、または信用を毀損する行為。
第Y条 (禁止又は制限される行為)
乙は、本物件の使用に当たり、次の各号に掲げる行為を行ってはならない。
(1) 本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること。
(2) 本物件または本物件の周辺において、著しく粗野もしくは乱暴な言動を行い、
または威勢を示すことにより、甲、他の賃借人、付近の住民または通行人に不安を覚えさせること。
(3) 本物件を反社会的勢力に占有させ、または本物件に反復継続して反社会的勢力を出入りさせること。
第Z条 (契約の解除)
乙について、次のいずれかに該当した場合には、甲は何らの催告もせずして、本契約を解除することができる。
(1) 第X条の確約に反する事実が判明したとき。
(2) 契約締結後に自らまたは役員が反社会的勢力に該当したとき。
2.甲は、乙が第Y条に掲げる行為を行った場合は、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。
参照:不動産協会
③暴追センターに相談する
怪しい取引先がいる場合、暴追センター(全国暴力追放運動推進センター)に相談しましょう。
暴追センターとは、反社会的勢力排除活動を支援するための組織で、警察の持つ暴力団関係者データベースを保有しています。問い合わせれば、取引先が反社会的勢力かどうか照会できます。
データベースを利用するには、暴追センターの賛助会員(年会費5万円)になる必要がありますが、より詳しく調査したい場合は加入を検討してください。
相手が反社会的勢力だった時の2つの対処法
取引先が反社会的勢力だった場合、以下の方法で対処しましょう。
- 契約解除の通知
- 物件の明け渡し訴訟
①契約解除の通知
まずは、早急に契約解除の通知を行うことが大切です。
契約書にきちんと反社条項を定めており、なおかつ相手が反社会的勢力だと断定できる場合、即座に契約解除できます。
ただし合法とはいえ、反社会的勢力と連絡を取るのはリスクもあります。できる限りリスクを抑えたい場合、弁護士を通して通知を行うと良いでしょう。
弁護士から受任通知や内容証明郵便などが届けば、手を引いてもらえる可能性が高いです。
②物件の明け渡し訴訟
賃貸物件で、入居者が物件の明け渡しを拒否した場合は訴訟や強制執行を行いましょう。
まずは入居者が反社会的勢力である証拠を掴み、きちんと立証できるようにした上で裁判を申し立てます。自力での証拠収集が難しいなら、調査会社に依頼してレポートを作成してもらうと確実です。
判決が確定しても明け渡し拒否が続く場合、強制執行により退去させられます。
まとめ|不動産取引では反社チェックが重要!取引規模ごとに最適な調査方法を選択しよう
今回は、不動産取引における反社チェックのやり方について解説しました。
不動産売買や賃貸契約で反社会的勢力と取引してしまい、損害を被った事例は少なくありません。契約書には必ず反社条項を定め、取引先のチェックも徹底しましょう。
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