コンプライアンスとは、企業が法律や社会的なルールに従うことです。コンプライアンス違反は社会的信用を失い、倒産に追い込まれるリスクがあるため、対策が重要です。この記事は、企業のコンプライアンスの実作業を行う担当者に向け、コンプライアンスの重要性や違反事例について解説します。コンプライアンス対策の参考にしてください。
目次
コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、企業が業務を遂行するに当たって守るべきルールのことを指します。ここでは、詳しい意味を解説します。
ビジネスにおけるコンプライアンスの意味
英語のCompliance(コンプライアンス)を直訳すると、「法令遵守」という意味です。日本ではコンプライアンスの意味が徐々に変化していき、業務上のルールだけでなく、世間のルールに従うことが一般的にコンプライアンスと呼ばれます。
ビジネスにおけるコンプライアンスも、業務上のことだけでなく、社会通念上のルール全般のことを意味します。昨今では企業がコンプライアンスに対して対策を行うことが当たり前の時代となっています。
コンプライアンスを重視する理由
近年では、これまでより一層コンプライアンスが重視されています。その理由について解説します。
最悪の場合倒産するリスクがある
2020年度に帝国データバンクが行った「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」によると、「粉飾」「業法違反」「脱税」などのコンプライアンス違反が判明して倒産した企業は、182件という結果になりました。倒産以外にも社会的信頼を失う、売り上げが減少する、損害賠償請求が行われるといった原因になるため、十分に注意する必要があります。
参考:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度)|帝国データバンク
コンプライアンス経営で得られるメリットがある
コンプライアンス経営とは、コンプライアンスをもとに企業倫理・体制を整えた経営のことをいいます。コンプライアンス経営を行うことで、企業価値の向上、リスクマネジメントなどのメリットがあります。
コンプライアンスを守る企業は事前対策により不祥事を防止し、損失を最小限にとどめるなどの効果があります。企業の在り方としてコンプライアンス経営を追求することが、社会的な信頼や、企業価値を高めることにつながります。
コンプライアンスとガバナンスの違い
コンプライアンスとガバナンスは、混同されやすい用語です。ここでは、意味の違いについて解説します。
お互いに因果関係がある
ガバナンスとは企業統治のことで、企業経営を適切に管理するためのシステムです。具体的には企業が適切に管理、監視されているのかを確認する仕組みで、社外取締役を設置したり、執行役と取締役を分けたりといった取り組みがなされます。
コンプライアンスは「従う」、ガバナンスは「支配する」という意味を持ちます。コンプライアンスとガバナンスは別物ではなく、コンプライアンスを強化するために、ガバナンスが存在するという因果関係があります。
身近なコンプライアンス違反事例
コンプライアンス違反は、身近に存在します。違反になるポイントを押さえ、対策の参考にしましょう。
社外へのデータの持ち出し
社外へのデータの持ち出しは、コンプライアンス違反につながるリスクが高まります。たとえば機密情報や個人情報の漏洩がコンプライアンス違反につながります。インターネットを使用する業務の場合は、個人情報流出が起きる可能性と隣り合わせであるため、常に注意する必要があります。
不適切なSNSの利用
たとえ個人アカウントだったとしても、悪ふざけの投稿や、特定の人物に対しても誹謗中傷、社内情報を発信するといった投稿は、企業の社会的イメージを著しく損ないます。社員に対してはSNSの利用マナーを徹底させることが重要です。個人の行動が企業のイメージに影響するということを意識させましょう。
個人情報の目的外の利用
業務上で得た個人情報を目的以外で利用すると、法令違反になります。個人情報を使用する場合は、あらかじめ利用目的を公表するか、個人情報を取得する際に本人に通知することが個人情報保護法で定められています。個人情報の取り扱いに関しては、非常に厳しく法律が定められているため、十分に注意してください。
自己判断で行う時間外労働
働き方改革によって、残業時間の上限は定められています。そのため、上司の許可を得ないまま自己判断で残業を行ってはなりません。会社としても、社員の労働時間と業務量を適切な管理が義務づけられています。ひとり当たりの業務量が多くなりそうな場合は、人員を増やしたり、業務配分を見直したりすることが必要です。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメントとは、性差別的な発言や言動のことをいいます。セクシャルハラスメントは男性から女性に対してだけでなく、女性から男性に対しても同様に認定されます。職場ではたとえば、「男だから」「女なのに」といった軽い発言も相手の受け取り方次第でセクシャルハラスメントと認定されますので、注意しましょう。
パワーハラスメント
パワーハラスメントとは立場や権力を利用した嫌がらせのことです。たとえば、お酒の付き合いの強要や、休日の過ごし方を尋ねるなどプライベートなことへの介入があげられます。指導のつもりであっても、過度な教育はパワーハラスメントに認定される場合があります。業務外であっても認定されることがあるため、発言や行動に気をつけなければなりません。
公共の場での会話
公共の場所で企業や取引先の情報を話すことは、情報漏洩につながります。社内でもお手洗い、エレベーターなど不特定多数の人の耳に入る可能性のある場所では、発言を控えましょう。たとえ家族であっても、顧客の情報を話してはなりません。些細なことからでも情報漏洩は発生するため、常日頃から会話の内容に注意が必要です。
備品や設備の不正利用
文具や備品、支給された携帯電話などは企業の所有物のため、私用に使ってはなりません。たとえば会社のパソコンで業務に関係ないネットサーフィンや、SNSの投稿をすることは情報流出のリスクになります。ふとしてしまいがちな行為ですが、情報漏洩や機密情報の漏洩などのコンプライアンス違反につながります。利用の際は、社内ルールを設けて明確化しましょう。
話題になったコンプライアンス違反事例
ニュースになったコンプライアンス違反事例について、3つの事例を解説します。
個人情報漏洩
2014年6月教育サービスを展開する企業で、顧客からの問い合わせで個人情報が社外に流出している可能性を認識し、社内調査を実施しました。その後、7月15日に警視庁に対し刑事告訴し、エンジニアが逮捕されました。情報漏洩で企業の信頼が低下し、顧客離れが進んだ事例です。
性能偽装
ゴム製品のメーカーで2007年、2015年、2017年とデータ改ざんや必要な検査をしていないなど、性能偽装が次々と判明しました。原因は検査に携わる人数が少なく、業務のノルマに対するプレッシャーからデータを改ざんしたというものです。この事例では2016年12期までで損失は1,134億円と非常に大きな損害になっています。
粉飾決算
粉飾決算とは経営状況が悪化しているのに黒字として不正な会計処理を行い、監査に提出することです。2018年1月には粉飾決算が原因で振袖の販売・レンタル業が突然閉店し、新成人が晴れ着を着られなくなりました。これは2017年9月に水増しした決算書類を提出し、銀行から3,500万円を騙し取り、2018年1月26日に破産手続きとなった事例です。
コンプライアンス違反は不正のトライアングルによって起こる
不正のトライアングルとは動機・機会・正当化の3つを意味します。ここでは、それぞれの内容を解説します。
企業が社員に動機を与えてしまう
企業が社員につくってしまう動機がコンプライアンス違反につながります。たとえば経理業務で、上司のチェックが甘い状態だったり、個人の裁量に任せすぎたりしていると、横領が起きやすいなどがあげられます。
違反しやすい機会が存在する
組織体制や環境など、違反しやすい機会の存在がコンプライアンス違反の原因にもなります。会社法を周知していなかったことで、社員が「つい」「うっかり」情報を外部に漏らしてしまうなどの可能性があります。
危機意識が低さが正当化を呼ぶ
コンプライアンス違反への認識や危機意識が低く、自らの行動を正当化することでコンプライアンス違反を生み出します。不正行為だと認識する研修を行い、意識を持ってもらうことが大切です。不正を行う動機と機会と理由の3つの条件がそろうとコンプライアンス違反につながりやすいため、防ぐ体制づくりが重要になります。
企業が取り組むべき対策
コンプライアンス違反を防ぐために企業が取り組むべき対策について、3つの手順を解説します。
社内規定を作成する
コンプライアンス違反を防ぐため、まずは社内規定を作成しましょう。具体的には、情報管理・労務管理・SNS利用などのルールを明確化します。情報管理は個人情報の漏洩を防止し、労務管理は長時間労働を是正します。社内でルールを周知することで、社員の意識が高まりコンプライアンス違反を防げます。
社員教育・研修を行う
社員教育や研修を行うことは、コンプライアンス違反を防ぐために効果的な施策です。コンプライアンスに対する認識を高めるには、社員にルールや意識が浸透するよう、定期的に研修や勉強会などを行いましょう。講義形式だけでなく、グループワークやディスカッションなど、参加型の研修を行うと効果的です。
体制を整える
コンプライアンスに関する体制を整えることも重要です。たとえば相談窓口を設置する、問題に対して迅速な対応を取れる担当部門を設置するなどの社内体制づくりを行います。すぐに相談できる場所を作ることで、問題の早期発見につながります。コンプライアンス違反になりそうなときに、弁護士や社労士などの専門家への相談も有効です。
まとめ
コンプライアンスとは、世間のルールに従うことです。昨今ではコンプライアンス違反が企業イメージを左右するほど、重大なものとして認知されています。最悪の場合は、コンプライアンス違反が原因で倒産するリスクもあるため、常日頃からコンプライアンスに対して、意識を高く向き合うことが重要です。
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