反社会的勢力の排除は企業にとって必須の社会的責任です。そのためには反社条項の理解が必須。
でも「条項の意味や効果は?」 「暴排条項を契約書に入れるには?例文はないの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
反社条項(暴排条項)とは、暴力団排除条例(暴排条例)などで事業者の責務とされたため、契約書に盛り込むのが一般的になってきています。
テンプレートやモデル条項なども公表されています。
業界団体では、各業種に特有の条項も公開し、独自の取り組みを行っている例も見られます。
契約書は、取引や商談の場で交わすだけでなく、従業員の雇用や役員の就任、株式市場への新規上場などでも必ず必要です。
弁護士によるリーガルチェックなども行い、自社に必須の条項を定めて契約書を万全なものにすることが大切でしょう。
また、反社会的勢力の排除には、実際に契約書が守られているかを確認するだけでなく、契約前に相手の反社チェックも必須です。
この記事では、反社会的勢力を排除するための契約書に必須の反社条項について例文も交えて詳しく解説していきます。
さらに、反社チェックの必要性から自動ツールを導入した効率的な反社チェックの方法まで紹介します。
業界ごとに特有の条項や例文も解説し、最後まで読んでいただければ反社リスクを避ける効果についてもおわかりいただけるでしょう。Q&Aでもよくある質問にお答えします!
目次
反社条項は契約書に反社会的勢力ではないことを証明するために必須
反社会的勢力を排除するためには、契約書を交わすときに必須の条項があります。
これを反社条項、または暴排条項といいます。
反社条項(暴排条項)は、各都道府県の暴力団排除条例(暴排条例)により必須とされているものです。
反社条項(暴排条項)がある理由とは?
反社条項は、契約相手が反社とわかった場合、反社との関係がわかった場合には、契約を直ちに解除できる条項のこと。
相手の同意がなくてもすぐに、契約を解除できるよう定めることがポイントです。事業における契約は、取引相手との契約だけとは限りません。
従業員との雇用契約や、役員との委任契約、その他の関係者との契約においても、反社条項は必須の規定です。
反社条項を企業が契約書に入れることは、政府の犯罪対策閣僚会議が2007年、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」で推奨したことを契機に、広く普及してきました。(参照:法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」)
反社会的勢力を排除するための条項を設けることで、反社勢力が契約・取引に介入することを抑止し、万一、反社勢力と取引してしまった場合にも、契約関係を解消しやすくなります。
反社条項がないと取引先から信頼を得られず、契約の締結に影響が出ることもあるため、会社で使用する各種の契約書ひな形に、あらかじめ盛り込んでおくのがよいでしょう。
反社会的勢力を排除して企業を守る
反社条項は反社会的勢力から受けるであろう不当要求や脅迫といった行為から企業を守る役目も果たします。
反社会的勢力は、不当要求・暴行・脅迫などの強行手段を用いて、不当に企業から利益を得ようする傾向があります。よって不当な要求から回避するには、契約時に反社条項の中に取引の拒否・禁止行為を規定しておくことが必須です。
例えば反社条項に自ら又は第三者からの禁止行為として「暴力的な要求行為」「脅迫的な言動、又は暴力を用いる行為」などと条項文に入れておけば、反社会的勢力を排除し企業を守ることができるでしょう。
暴排条例により契約書に反社条項(暴排条項)が義務
政府の指針を受けて、各都道府県をはじめ、市町村などでも暴排条例が定められ、施行されました。
条例は、法律ではないものの、地方自治体の地域内において法律と同等の法的拘束力をもちます。
暴排条例では、反社会的勢力に対し利益供与することが禁止されています。利益供与をしてしまうと、勧告や公表、罰則を受けることになります。
罰則は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があり、刑法犯罪などと同じ刑事罰です。
条例では罰則こそないものの、契約書を交わす場合には、反社条項と、反社でないことの誓約書が事業者の義務とされています。
しかし条例遵守のためにも、反社会的勢力排除条項は設置すべきです。
暴排条例は都道府県ごとに異なるため、所属している自治体の条例を確認しておきましょう。
たとえば福岡県暴排条例(参照:福岡県警察)のように、暴排条例の制定当初は反社条項を努力義務としていなかった自治体でも、後に条例を改正して、反社条項と、反社でないことを表明・確約する誓約書を事業者に義務づけています。
契約締結前に、相手が反社でないかチェックすることは暴排条例の要請でもあります。
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政府が定める反社会的勢力排除条項の例
法務省が出している「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」には下記の文が記載されている。
暴力団排除意識の高い企業であったと しても、暴力団関係企業等と知らずに結果的に経済取引を行ってしまう可能性があること から、反社会的勢力との関係遮断のための取組みをより一層推進する必要がある。
反社会的勢力は、企業で働く従業員を標的として不当要求を行ったり、企業 そのものを乗っ取ろうとしたりするなど、最終的には、従業員や株主を含めた企業自身に 多大な被害を生じさせるものであることから、反社会的勢力との関係遮断は、企業防衛の 観点からも必要不可欠な要請である。
政府としても反社会的勢力排除に向けて、企業の取り組み強化を推進しているのが分かります。よって契約書に反社条項を記載することが、企業防衛の観点にくわえて社会的な責任を果たしているともいえるでしょう。
東京都が定める反社会的勢力排除条項の例
東京都暴排条例では、事業者の契約時における措置として、次のように規定しています。
誓約書
事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
契約書の反社条項
事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。(以下、略)
福岡県が定める反社会的勢力排除条項の例
福岡県暴力団排除条例では、事業者の契約時における措置として、次のように規定しています。
県民は、暴力団の排除のための活動に自主的に、かつ、相互の連携協力を図って取り 組むとともに、県が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、その行う事業(事業の準備を含む。以下同じ。)により暴力団を利することと ならないようにするとともに、県が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するものとす る。引用:福岡県警察第5条
大阪府が定める反社会的勢力排除条項の例
大阪府暴力団排除条例では、事業者の契約時における措置として、次のように規定しています。
府民は、基本理念にのっとり、相互に連携を図りつつ主体的に暴力団の排除 に取り組むとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するよう努め るものとする。
2 事業者は、基本理念にのっとり、その事業に関し、暴力団との一切の関係を持た ないよう努めるとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するもの とする。
3 府民及び事業者は、基本理念にのっとり、暴力団の排除に資すると認められる情 報を府に対し積極的に提供するよう努めるものとする。
反社条項がない場合のリスク
契約書に反社条項がない場合、契約相手が反社と分かっても、直ちに契約解除できない可能性があります。
この場合、民法の錯誤などを主張して解除通告するなどの方法もありますが、争いになるケースもあり、直ちに解除できないリスクがあります。
実際に裁判でも、反社条項がなかったせいで契約解除が認められなかった判例があるのです。
従業員が反社と分かった場合の退職についても同じです。
企業が内部で反社との関係が絶ち切れていないと、刑事罰、行政罰や行政処分、信用棄損や風評などのリスクがあります。
企業防衛のためにも、契約書の反社条項は必須です。
企業が抱える4つのリスク
企業は反社条項がない場合、4つのリスクを抱えます。
反社会的勢力が関与することによって、さまざまなトラブルが発生します。
企業にとっては大きな労力を奪われるだけでなく企業の評判へのダメージから生じる、収益の損失、運転資金や規制、コストの増加、株主価値の破壊などの複合的なリスクがあります。
反社会的勢力排除条項は、直接対峙せざるをえない場合に限らず、さまざまな問題を回避するためにも機能しているのです。
刑事罰
取引先や従業員に反社との関わりがあることによって、企業にダメージを与える最大のものは、刑事事件化すること。
刑事事件は犯罪であり、刑罰とともに、企業イメージを失墜させるものだからです。
たとえば、反社会的勢力への利益供与をしてしまえば、各都道府県の暴排条例違反となり、勧告、立ち入り、公表、それでも改善されない場合に命令となり、命令に従わないと刑罰が科されるリスクがあります。
刑事事件では、報道や風評、信用毀損による重大な影響を受けます。
業績にも直接影響するでしょう。
行政処分・行政罰
反社が経営に関与し、あるいは企業と密接な関係がある場合などには、許認可のはく奪や、指名停止、資格停止、契約不締結などの不利益な行政処分が行われます。
各種の規制をする法律に違反すると、行政指導、行政処分、最悪の場合には行政罰を受ける可能性があります。
信用毀損・業績リスク
反社に関係する従業員がいる、不明朗な取引先に関与しているといった風評が広まると、取引の中断や中止などにより、業績への影響は避けられません。
報道やインターネット、特にSNSなどで拡散されると、風評や、不買などの声が広まることもあるでしょう。
信用を取り戻すには時間がかかります。
インターネットに書き込まれ、拡散される情報は長期にわたり残り、失われた評判を取り戻すには、反社との関係を遮断し、体制を整えたことを世間に認めてもらう必要があります。
信用度を下げる事態を防ぐためにも反社条項が必須です
反社会的勢力排除に係る違約金の額とは
売買契約時に反社条項を設置しなかった場合、相手へ違約金の請求ができないといった業績に関わるリスクを抱えることになります。
反社条項を設置していなかった売買取引は、下記の内容が適用されず被害を受けてしまうので注意が必要です。(東京都暴排条例を例とする)
③ 買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないことを確約する。
④売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。
⑤第2 項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金○○○○円(売買代金の20%相当額)を支払うものとする 。
損害賠償・民事訴訟リスク
取引の中止、契約の解除などにより、取引先に損害を与えることもあります。
取引先だけでなく、従業員、役員も含めた関係者全数の反社チェックを徹底しなければ、取締役や担当責任者が善管注意義務に問われ、損害賠償請求されるリスクもあるでしょう。
取締役や担当者が善管注意義務を果たしたと証明するためには、定期的な反社チェック、チェック結果を証跡として保管することがきわめて重要です。
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契約書に反社条項がなかったことによる裁判例
契約書に反社条項がなかったことにより、トラブルが裁判にまでなったケースを紹介しましょう。
司法の判断が最高裁判所まで進んだ有名な判例です。
反社条項が必要であることが広く知れ渡った事件でもあります。
昭和38年、金融機関と信用保証協会との間で、保証契約の基本契約が締結されました。
保証契約は、債務者が支払わないときに、信用保証協会が代わりに支払い義務を負う契約です。
契約には、債務者が反社会的勢力であると判明した場合の規定がありませんでした。
金融機関から債務者へ平成22年に行われた融資で、融資の実行後に債務者が反社勢力であると判明。
公共事業の指名業者から排除され、手形取引停止の処分を受けた債務者から、返済が滞ったため、金融機関から信用保証協会に対し、保証債務の履行を求めました。
しかし信用保証協会は、反社関連企業と知らずに保証契約をしたため、保証契約は無効であると主張し、裁判になりました。
最高裁判決では、信用保証協会は、反社である債務者に代わって返済すべきとの判断になりました。
その要旨は下記の通りです。
事者双方は、融資、信用保証を行うことをそれぞれ業とする法人であり、債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明する場合もありうると想定できた
反社であると判明した場合に保証債務を履行しないとするならば、あらかじめ定める対応をとることもできた
しかし基本契約、各保証契約に反社と判明した場合の取扱いについての規定がなかった
債務者が反社でないとの誤認があったことが事後的に判明した場合に保証契約の効力を否定することまでを双方が前提としていたとはいえない融資の実行後に債務者が反社であると判明した場合には,融資金の回収に努め反社との関係解消を図るべきではあるが、反社でないことが両者間の保証契約の前提・内容になっているとして当然に契約の効力が否定されるとはいえない
契約の締結後に反社会的勢力であると判明した場合の規定がなく、相互に確認を行っていなかったために起こったトラブルだと明確にされました。
この事例からわかることは、契約書で反社条項を規定するとともに、反社チェックを行い、確認をすることが企業にとって避けられないということです。
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反社条項のある契約書と、反社チェックはセットで導入することが必須です。
反社条項(暴排条項)が必須となる契約書の種類は?
それでは、どのような種類の契約書に反社条項が必要なのでしょうか?
取引にあたっての契約書
取引にあたっては、業務委託契約書、商品購入契約書、共同開発契約書などのさまざまな契約書を交わします。
すべての取引先との契約で、反社会的勢力でないか、密接な関係がないかを確認し、排除するための反社条項が必要です。
請負契約、準委任契約など契約の種類を問いません。
相手が顧客、仕入先、下請けなどにかかわらず、また個人事業者やフリーランスでも必須です。
不特定多数の相手に提示される、預金やサービス利用約款などの約款についても同様です。
ではここから反社条項が必須となる代表的な契約書を紹介していきます。
売買契約書
売買契約書は、商品の販売や仕入れ、資材の調達などの物品を売買する際に交わす契約書です。
契約書でお互いの同意内容を書類として残すことでトラブル防止、トラブル時のリスクを最小限に抑える効力を持っています。
賃貸借契約書
賃貸借契約書は、物の貸与により使用・収益を相手方に許可する契約です。
物品レンタルや不動産賃貸契約などがあり、一定期間の契約が継続されることが特徴です。
請負契約書
賃貸借契約書は、物の貸与により使用・収益を相手方に許可する契約です。
業務の完了を約束し、発注者が仕事の完成によって報酬を支払います。住宅建物の建設工事の契約やホームページ制作、ITシステム構築等の電子上の作成物の契約が典型的な例です。
委任・準委任契約書
委任契約、準委任契約は、特定の業務を遂行する契約で、請負契約とは異なり業務の処理自体が契約の目的となり、成果物の修正などの責任は問われません。
委任契約は意思表示などの法律行為を伴う業務での契約で、準委任契約はそれ以外の内容の契約です。
入社にあたっての契約書
企業への入社にあたっても、雇用契約書に反社会的勢力を排除できる条項が必要です。
取締役に就任する際の委任契約などでも同様に、契約書に反社条項を入れなければなりません。
では入社に関連した契約書で反社条項が必須となる書類を紹介していきます。
雇用契約書
雇用契約とは、労働者が就業し、使用者が報酬を与える契約です。
雇用者側に雇用契約書の法的な作成義務はありません。しかし、労働契約法上は「文書として作成するのが望ましい」とされており、トラブル防止の観点からも作成するのが一般的です。
労働者派遣契約書
労働者派遣契約は、契約の当事者の一方が、労働者本人ではなく、労働者派遣を約束する契約です。
人材派遣会社と派遣先企業との間で締結します。
その他の契約書
その他の契約書についても見てみましょう。
誓約書などの相手に一歩的に確約する契約書
取引や入社、役員就任にあたっては、反社でないこと、将来も反社に関係せず、反社会的行為をしないことを表明し、確約する誓約書の提出が必要です。
誓約書を交わすことも、暴排条例では努力義務とされています。
誓約書など、一方が相手方に対し約束する書面も、書面の内容を提示して誓約を求める相手方に対し、その内容を承諾するという意味で、契約書の一種です。
誓約書と、取引や入社時の契約書とはセットであり、誓約書に反した場合には、直ちに契約を解除するという条項が、契約書の反社条項には含まれます。
企業と株主との確認書も、株主が反社でないこと、将来も反社に関係せず、反社会的行為をしないことを表明し、確約する一方的な契約書です。
株式市場への企業の新規上場申請や、第三者割当増資などの際に必要です。
団体への加入規約など
業界団体、任意団体などへの加入にあたっても、契約の一種である団体規約などに同意する必要があります。
反社会的勢力の加入を防ぎ、事後に反社であると判明したら脱退してもらうためには、規約などに反社条項を設ける必要があるでしょう。
その他のさまざまな契約書にも、契約の性質や内容に応じ、反社勢力を排除する条項を設けることが大切です。
反社会的勢力を排除するための契約書のひな型・テンプレート
反社会的勢力を排除するため、契約書に反社条項が必須ということはおわかりいただけたでしょう。
実際に契約書を作成するために、具体的な例文やひな形はないのか?と思われている人もいるはず。
反社条項のある契約書のひな型やモデル条項は、暴排センターが公表しており、各業界団体でモデル契約書を用意していることもあります。
ここではまず、汎用的なテンプレートを紹介します。
暴力団追放運動推進都民センターによるテンプレート例
東京都暴排条例に即したテンプレート例が、暴力団追放運動推進都民センター(暴追センター)から公開されています。
一般的な多くの契約書の条項に採用でき、とても参考になる例文です。
引用:暴力団追放運動推進都民センター「暴力団対応ガイド総合版」
ただし汎用的なテンプレートだけを過信せず、特に不動産業界や金融業界など、業界ごとに特有の条項も検討し、弁護士のリーガルチェックなども経て、自社に適した契約書を用意することをおすすめします。
誓約書、定型的な契約書、約款などは、取引先用、フリーランス用、従業員用、役員用、関係者用など、相手や用途によって、あらかじめ用意しておくことができます。
契約書ひな形の反社条項解説
東京都暴追センターのモデル条項に基づき、契約書に入れるべき反社条項について見ていきます。
モデル条項に書かれた反社条項の例文を紹介し、規定すべき内容についても項目毎に解説していくので、契約書を作成するうえで参考にしていただければと思います。
ちなみに「第〇条 反社会的勢力の排除」とあるモデル条文の「1、2、3」とあるのが、それぞれこの条文に記載がある第1項、第2項、第3項を指しています。
また第〇項の中に、①、②、③とあるのは、それぞれ第1号、第2号、第3号を表しています。
法令では一般的に、箇条書きのように分けているときは、「第3条第2項第1号」のような数え方をしますので、マメ知識として覚えておくと役に立つかもしれません。
(1)反社会的勢力の定義(属性要件)
第1項では、反社会的勢力を排除するために、まずは反社の定義をしています。
反社会的勢力のさまざまな類型を漏れのないように規定するため、「属性要件」といわれます。
1 甲は、乙(乙が法人である場合には、役員及び経営に実質的に関与している者を含む)が以下の各号に該当する者(以下 「反社会的勢力」という。)であることが判明した場合には、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。
① 暴力団
② 暴力団員
③ 暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者
④ 暴力団準構成員
⑤ 暴力団関係企業
⑥ 総会屋等
⑦ 社会運動等標ぼうゴロ
⑧ 政治活動等標ぼうゴロ
⑨ 特殊知能暴力集団
⑩ その他前各号に準ずる者
「その他前各号に準ずる者」で、包括的な規定をおくことにより、従来にない組織形態などでも適用できる可能性を残しています。
(2)反社会的勢力(属性要件)との関係性による適用
第2項では、反社会的勢力を属性要件て定義した第1項に続き、反社の定義にはあてはまらないが、反社との一定の関係をもつ者にも適用できるよう規定しています。
2 甲は、乙が反社会的勢力と以下の各号の一にでも該当する関係を有することが判明した場合には、何らの催告を要せず、 本契約を解除することができる。
① 反社会的勢力が経営を支配していると認められるとき
② 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められるとき
③ 自己、自社若しくは第三者の利益を図り、又は第三者に損害を加えるために、反社会的勢力を利用した又は利用して いると認められるとき
④ 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
⑤ その他役員等又は経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
警視庁「東京都暴力団排除条例 Q&A」では、「反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係」の一例として、次のような例をあげています。
相手方が暴力団員であることを分かっていながら、その主催するゴルフ・コンペに参加している場合
相手方が暴力団員であることを分かっていながら、頻繁に飲食を共にしている場合
誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合
暴力団員が関与する賭博等に参加している場合
このようなケースに該当すると、公共機関の入札から排除される、暴排条例違反の行政指導を受ける、改善されないと許認可の取消などの行政処分を受けるといった不利益を被るリスクがあります。
そこで、取引などの契約相手から反社を排除するために必須の条項となるのです。
(3)反社会的行為の定義(行為要件)
第3項では、反社会的行為の定義として、反社会的行為についても規定しています。
反社会的勢力を排除するためには、暴力団などの所属や属性だけでは万全ではないかもしれません。
組織実態を巧妙に隠している可能性もあるため、反社会的な行為についても定義し、さらに万全を期しています。これを行為要件といいます。
契約相手が反社会的勢力の属性で定義した類型に属していなくても、実際に反社会的な行為を行えば、反社会的であるとみなして契約解除できるようにするためです。
3 甲は、乙が自ら又は第三者を利用して以下の各号の一にでも該当する行為をした場合には、何らの催告を要せず、 本契約を解除することができる。
① 暴力的な要求行為
② 法的な責任を超えた不当な要求行為
③ 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
④ 風説を流布し、偽計又は威力を用いて甲の信用を棄損し、又は甲の業務を妨害する行為
⑤ その他前各号に準ずる行為引用:暴力団追放運動推進都民センター暴力団対応ガイド総合版
たとえば、暴行、傷害、脅迫、恐喝、威圧等の暴力的・威圧的な言動による不当要求や、業務妨害、法令違反をそそのかす行為などを指します。
実際に反社会的勢力や組織に属しているかどうかは問いません。
契約相手が一般人であった場合にも適用される条項です。
「その他前各号に準ずる行為」で、包括的な規定をおくことにより、例にない行為でも適用できる可能性を残しています。
ただし、どこまでの行為なら含まれるかは、具体的な事案に応じて弁護士に相談しながら判断することになるでしょう。
(4)無催告での契約解除条項
これまで見てきた第1項から第3項までには、下記の内容が規定されています。
「何らの催告を要せず、 本契約を解除することができる」
反社である、反社会的行為があると判明した場合に、催告することなくただちに解除できる条項で、リスクをすぐ断ち切るために必要な文言です。
無催告解除とは、解除予告も必要なく、相手の同意がなくても一方的に即時に契約を解除できる権利です。
債務不履行による契約解除(民法第541条)では、「相当の期間を定めてその履行の催告」をする必要があり、契約解除までに時間がかかります。
「取引上の社会通念に照らして軽微」な場合に、解除の有効性が争われるかもしれません。
反社であると判明したら、催告なしに解除できる反社条項は、契約書に必須の条項のなかでも最大のポイントです。
なお、取引や入社時に契約書とセットで、反社でないこと、将来にわたり関係しないことの誓約書をもらうことも一般的。
誓約書も暴排条例での努力義務となっています。
東京都暴追センターの「暴力団対応ガイド総合版」では、誓約書のモデル書式例も掲載されています。
誓約書、契約書のどちらにも無催告解除や損害賠償規定を置いており、裁判での争いを未然に防ぐため、二重に網をかけたような万全の規定になっています。
参照元:暴力団追放運動推進都民センター暴力団対応ガイド総合版
(5)再委託先の確認条項
第4項は、取引先の下請けなどの再委託先についても反社でないことの確認をする義務を取引先に科す例文です。
契約相手の下請け企業、再委託先までのすべてを、反社チェックすることは事実上、不可能です。
一方、反社会的勢力は、さまざまな隠れ蓑により取引に介入しようと機会をうかがっているものです。
反社チェックの責任を相手方に負担させることにより、自社のリスクを避ける重要な条項といえるでしょう。
① 乙は、乙又は乙の下請又は再委託先業者(下請又は再委託契約が数次にわたるときには、その全てを含む。以下同じ。)が 第1項に該当しないことを確約し、将来も同項から第3項各号に該当しないことを確約する。
② 乙は、その下請又は再委託先業者が前号に該当することが契約後に判明した場合には、直ちに契約を解除し、又は契約解除のための措置を採らなければならない。
③ 乙が、前各号の規定に反した場合には、甲は本契約を解除することができる。引用:暴力団追放運動推進都民センター暴力団対応ガイド総合版
(6)不当介入の排除・通報条項
第5項では、不当要求、業務妨害などの不当介入があった場合に、これを拒否し、再委託先にも拒否させる義務を規定しています。
さらに不当介入があったとき、通報や報告を行うこと、違反した場合には契約解除できる規定も置いています。
① 乙は、乙又は乙の下請若しくは再委託先業者が、反社会的勢力から不当要求又は業務妨害等の不当介入を受けた場合は、 これを拒否し、又は下請若しくは再委託先業者をしてこれを拒否させるとともに、不当介入があった時点で、速やかに不当介入の事実を甲に報告し、甲の捜査機関への通報及び甲の報告に必要な協力を行うものとする。
② 乙が前号の規定に違反した場合、甲は何らの催告を要さずに、本契約を解除することができる。引用:暴力団追放運動推進都民センター暴力団対応ガイド総合版
不当要求や業務妨害等の不当介入であれば、反社勢力にも一般人にも適用されます。
(7)損害賠償・違約金条項
取引先が反社であると判明したら、取引の中断や信用棄損、入札からの排除などにより、企業はさまざまな損害を被ることもあるでしょう。
そこで契約解除の条項に続き、損害賠償の規定を置いています。
損害賠償が認められる民法の規定としては、次のものがあります。
- 不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)
- 債務不履行による損害賠償請求(民法423条)
刑法や暴排条例に違反した場合には、不法行為にあたります。
契約違反では条項によっては債務不履行になることも多いでしょう。
甲が本条各項の規定により本契約を解除した場合には、乙に損害が生じても甲は何らこれを賠償ないし補償することは要せず、また、かかる解除により甲に損害が生じたときは、乙はその損害を賠償するものとする。
引用:暴力団追放運動推進都民センター「暴力団対応ガイド総合版」
第6項の前半は、契約を解除した場合でも、解除した側が損害賠償する必要がないことを規定したものです。
この規定がないと、反社であるとして契約解除した側が、債務不履行だとして損害賠償請求されるかもしれません。
第6項の後半は、契約を解除した場合に、解除した側に損害が生じた場合には、賠償請求できる規定です。
民法の損害賠償規定とともに、民法の規定に該当するかに関わりなく、契約解除なら即、賠償請求できると明確にしています。
業界によっては、原状回復義務や、違約金条項などを設け、さまざまなケースに対応することもあり、業種に応じた適切な規定を置くことが大切です。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら、ネガティブワードなどの推奨キーワードで、インターネット、SNSまでをリアルタイム検索できるほか、業界や業種、自社の業務に対応したキーワードを入れてカスタマイズすることも可能です。
契約書の条項と、反社チェックとで、一定品質のチェックを継続的に行うことにより、反社会的勢力を排除する体制を無理なく構築できるでしょう。
契約書に必須の反社条項がもたらす反社会的勢力排除の効果
東京都暴追センターのモデル条項に基づき、契約書に必須の反社条項をみてきました。
契約書に必須の反社条項を入れることで、どのような効果があるかについて解説します。
取引契約を即時解除できる
相手が反社会的勢力と判明した時点で契約を即時解除できます。
民法で規定されている催告の期間も必要がなく、問題が発覚すれば即時対応が可能です。
反社会的勢力・行為のさまざまな類型にも対応できる
反社会的勢力の属性ごとによる定義、行為別に合わせた定義を反社条項内に設定しておくことで、年々多様化し巧妙に正体を隠す反社会的勢力にも対応できます。
再委託先の反社チェックも可能
下請け、再委託先からも反社会的勢力を排除でき、反社条項によって再委託先の反社チェックの責任も取引先に転嫁できます。
契約解除に伴うトラブルを予防できる
契約解除に伴うトラブルを予防できます。
契約後に反社会的勢力との関与が判明した場合に、反社条項がなければ民法の債務不履行や、錯誤による契約などを主張して、契約解除することになるでしょう。
しかし、立証が難しく、争いともなれば時間もかかります。
契約書に反社条項が必須なのは、あらかじめトラブルが長引かないように明確に規定してあるからです。
契約解除に伴う損害リスクを避けられる
契約解除に伴う損害を負うリスクを軽減できます。
契約解除により、相手方から損害賠償を請求されることを予防し、逆に相手に対し損害賠償請求ができる規定で、裁判になっても立証が容易になります。
入社・委任契約でも同様の効果が得られる
取引の契約以外でも、従業員の入社、役員などへの委任など、さまざまな契約でも同様の効果が得られます。
定型的な約款でも同様の効果が得られる
銀行預金や保険の約款、通信販売やネットサービスの利用規約など、小さな文字で書かれた約款があります。
このように定型的に用意された約款でも、反社条項があれば同様の効果が得られます。
新規上場申請や上場規定の違反を避けられる
上場企業では特にコンプライアンスに厳しく、証券取引所との上場契約では、反社会的勢力の排除が求められます。
新規上場申請のための関係者間の契約や、役員・大株主などが反社でないことの確認書などで、反社会的勢力を排除することにより、上場規定に違反することも避けられます。
風評リスクを避けられる
風評リスク・評判リスクは、企業に対する批判や不評によって、信用やブランド価値が低下し、 損失を被るリスクです。
反社条項を設定することで、被害を最小限に抑える予防措置となり、導入することで、事実上「コンプライアンス宣言」と同様の効果があります。
契約時の相手方への確認ができる
新規取引や人材採用などの契約時に、契約相手の態度を確認し、虚偽の申告や偽装契約を抑制、けん制できる効果があります。
契約時は重要な反社チェックの機会ともなるのです。
反社チェックを怠った場合の法的リスク
反社チェックを怠ると、会社や役員が善管注意義務違反(民法第644条、会社法第330条など)となる可能性もあります。
取締役の善管注意義務違反により会社が損失を出せば、会社からの賠償請求、株主代表訴訟を提起されるかもしれません。
企業が反社会的勢力から身を守るために重要なのは、契約を結ばないこと。
反社条項の整備とともに、契約前の反社チェックも忘れずに行い、反社会的勢力の関与を予防する体制を作りましょう。
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【業界別・種類別】契約書に必須の反社条項(暴排条項)
契約書は、ひな形がそのまま使えるとは限りません。
自社の業界や業務の形態、特有の事情や業界の規制法などに則した、必要事項をもれなく入れることが大切です。
業界団体などでモデル条項を用意していることも多く、参考にするのがよいでしょう。
不動産業界
不動産業界では、流通系4団体(全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産流通経営協会、日本住宅建設産業協会)が、売買契約編、媒介契約編、賃貸住宅契約編のモデル条項を公表しています。
また不動産協会が、売買契約編、賃貸借契約編のモデル条項を公表しています。
国土交通省
平成21年6月より、不動産関係団体による協議会組織※を主体に、有識者も交える形で排除条項の活用に向けた検討が開始され、国土交通省・警察庁もこれに協力する形で協議・検討に参加し、議論が重ねられてきました。
最終的に、ここでの検討や議論の内容、方向性等を踏まえ、不動産関係団体が共同又は単独の形でモデル条項を策定するに至りました。
引用:国土交通省「反社会的勢力排除のためのモデル条項について」
警察庁「暴力団対策」でも、不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項・解説書を公表しています。
警察庁のモデル条項を元に、不動産契約の反社会的勢力排除条項をみてみましょう。
売買契約書
反社会的勢力の定義では、契約当事者の双方が、相手方に対し、反社でないことや反社行為をしないことを確約、表明するとともに、次の規定を設けています。
本物件の引き渡し及び売買代金の全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為引用:警察庁「不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項・解説書売買契約条項例
売買契約の進行に合わせ、不動産物件引渡や代金支払いまでの行為に言及する点がポイントです。
次に、下記の記載もあります。
買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動 の拠点に供しないことを確約する
違反した場合には、無催告での契約解除に伴い、売買代金の20%の違約金と、80%の制裁金の支払いを規定しています。
なお、暴力的言動などにより売買完了前に契約解除となれば、売買代金の20%が違約金となるようにされています。
媒介契約書
反社会的勢力の定義では、売主と買主の双方が、相手方に対し、反社でないことや反社行為をしないことを確約、表明するとともに、次の規定を設けています。
この媒介契約の有効期間内に、自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
媒介契約の有効期間中の行為に言及する点がポイントです。
賃貸契約書
反社会的勢力の定義では、貸主と借主の双方が相手方に対し、反社でないことや反社行為をしないことを確約、表明するとともに、次の規定を設けています。
「反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと」
これは、名義貸しなどを防ぐ規定です。
さらに、相手方に対する脅迫的な言動や暴力行為、業務妨害や信用毀損行為をしないことは、賃貸契約の期間中にわたり適用される点がポイントです。
次に、物件の使用について制限を設け、契約解除の要件としていることが重要です。
「本物件の使用に当たり、別表第 1に掲げる行為を行ってはならない。」として、次の使用を禁じています。
六 本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること
七 本物件又は本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴な言動を行い、 又は威勢を示すことにより、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせること
八 本物件に反社会的勢力を居住させ、又は反復継続して反社会的勢力を出入りさせること
不動産業界では、物件が反社に関わるかどうか、近隣に反社がいないかの確認を怠ってしまい問題になった事例もあります。
契約当事者の反社チェック、重要事項の説明には注意が必要です。
重要事項説明書
重要事項説明書にも反社条項による次の規定を入れるよう追加されています。
契約の解除に関する事項
暴力団排除条項に違反した場合は、相手方は、何らの催告を要せず、契約を解除する ことができます。引用:東京都宅建協会
契約の解除に関する事項に記載する規定のひな型は以下となります。
1 反社会的勢力の場合等
① 貸主又は借主が反社会的勢力である場合
② 当事者の役員が反社会的勢力である場合
③ 反社会的勢力に名義を利用させて契約を締結していた場合
④ 自ら又は第三者を利用して、脅迫的な言動又は暴力を用いたり、あるいは、偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し又は信用を毀損した場合上記①~④のいずれかに該当する場合、または、契約締結後に、自ら又は役員が反社会的
勢力に該当した場合は、その相手方は、契約を解除することができます。引用:東京都宅建協会
2 借主が反社会的勢力の事務所の用に供している場合等
借主が、本物件を、反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供した場合、本物件又は
本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴の言動を行い、又は威勢を示すことによ
り、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせた場合、本物件に反社会的勢力を居住させ、
又は反復継続して反社会的勢力を出入りさせた場合、のいずれかに該当する行為を行った
場合は、貸主は、契約を解除することができます。引用:東京都宅建協会
重要事項説明書において、反社会的勢力の排除に向けた規定を盛り込み、反社との関わりを無くす対策が必要です。
建設業界
建設業界でも、反社のモデル条項として、日本建設業連合会が企業行動規範を定め、暴力団排除条項に関する参考例(ひな型)を公開しています。
反社会的勢力の定義、反社でないことの確約・表明では、建設業界では下請け、孫請けなどが一般的であることを反映した規定になっています。
「下請負者及びその代表者、責任者、実質的に経営権を有する者(下請負が数次にわたるときはその全てを含む)」
として、数次にわたる下請けにも反社会的勢力、反社会的行為があったときの、無催告での契約解除を規定しています。
また、本契約と個別契約がある場合を想定し、本契約を解除できるようにしています。
本契約は取引関係の基本的な契約で、個別契約は個別の工事案件の契約を想定しています。
損害賠償条項は、個別契約を解除した場合に規定しています。
反社会的勢力が介入した場合の排除・通報義務については、「工事妨害」を業務妨害の例として明記していますが、汎用的なモデル条項と効果は同じです。
建設業で特徴的なポイントは、下請負者(下請負が数次にわたるときはそのすべてを含む)を定義している点、本契約と個別契約とを明記している点だといえるでしょう。
その他の業界でも、規定の内容には業界特有の事情や法規制を反映させるようにしてください。
行政庁が所管する業界では、自社の属する業界での処分歴や、過去の法令違反についての表明・確約などを求めることもあります。
金融業界
金融業界では、銀行や信用金庫、信用組合、政府系金融機関などでも、契約には反社条項が入れられています。
金融業界には、預金約款などの定型的な約款があります。
全国銀行協会が公表している暴力団排除条項参考例では、次の条文があります。
「私または保証人が、暴力団員等もしくは第1項各号のいずれかに該当し、もしくは前項各号のいずれかに該当する行為をし、または第1項の規定にもとづく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明し、私との取引を継続することが不適切である場合には、私は貴行から請求があり次第、貴行に対するいっさいの債務の期限の利益を失い、直ちに債務を弁済します。」
引用:全国銀行協会「銀行取引約定書に盛り込む暴力団排除条項参考例」
金融機関では、反社会的勢力による収益の隠匿、マネーロンダリングに警戒し、取引確認や本人確認をしています。
犯罪収益移転防止法により、確認が義務付けられています。
一方、一般の事業会社でも、反社への利益供与や、反社の経営への実質的な関与がある場合には、金融取引の中止、債務の返済などが求められることもあるでしょう。
暴力団排除条項の参考例では、以下のように規定しています。
「私または保証人に損害が生じた場合にも、貴行になんらの請求をしません。また、貴行に損害が生じたときは、私または保証人がその責任を負います。」
上場企業・新規上場申請
上場企業では証券取引所との上場契約により、高度なコンプライアンス義務を負っています。
上場企業は社会性を有するため、コーポレートガバナンスについての報告や、投資家への情報開示が求められます。
上場契約において反社会的勢力の排除対策は義務とされ、新規上場申請時には「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」を提出しなければなりません。
引用:東京証券取引所「提出書類フォーマット(上場申請時)」
確認書では反社会的勢力との関係がないことは、「当社グループ、役員又は役員に準ずる者、主な株主及び主な取引先」の範囲まで要求されます。
新規上場申請する企業は、自社と関わるすべての関係者に対し確認を求め、反社チェックをしなければなりません。
グループ企業や、役員、役員に準ずる関係者、主要株主、主要取引先の名簿をもとに、RoboRoboコンプライアンスチェックでインターネット、SNSまでをリアルタイム検索すれば、上場審査に必要な時点での反社チェックが実行可能です。
反社条項の遵守に必須の反社チェックとは?
反社会的勢力の排除に必須の契約書の条項について解説しました。
しかし反社条項を契約書に盛り込んだだけでは安心できません。
条項が適切に守られているかを定期的にチェックし続けることで、反社対策を行っている証明となり、問題があれば早期に発見できます。
企業が社会的信用を得るためにも、会社や役員の善管注意義務に違反しないためにも、契約前に自社内で反社チェックを行う体制を構築する必要があるのです。
取引先・商談先に必須の反社チェック
取引先や商談相手の反社チェックには、多大な負担がかかります。業務を効率化し、スムーズに反社チェックを進めるには、業務を自動化するツールの導入がおすすめです。
調査会社などの利用も有効ですが、費用も時間もかかります。とはいえ、重点的に調査する必要がある場合には利用するのも一つの方法でしょう。
契約後に万一、反社勢力が関係してしまったとしても、反社チェックで早期発見ができれば、リスクを最小限に抑えられるかもしれません。
取引先を取り巻く関係先も反社チェック
反社チェックは直接関わる相手だけでなく、取引先の関係者まで調べる必要があります。
具体的には以下の範囲まで視野に入れると安心です。
- 取引先と親しい税理士や弁護士
- 取引先の役員・社員・派遣・パート
- 取引先の発注先や下請先
反社会的勢力は思わぬ箇所で潜在化している可能性があります。ただし、対象範囲が広くなれば、担当者への負担は増大する点は注意が必要です。
従業員・役員に必須の反社チェック
従業員、役員についても同様に、定期的な反社チェックが必要です。
入社前の選考段階でもチェックが必要なため、ツールで名簿を使って自動的にチェックできる、RoboRoboコンプライアンスチェックがおすすめです!
反社に関係する従業員がいるといった風評が広まると、社会的信用が欠落します。自社に関わる全員のチェックを徹底する必要があるでしょう。
上場企業・新規上場申請に必須の反社チェック
上場企業申請にあたっても、上場審査項目である反社会的勢力との関係があっては認められません。
株式市場に上場した後も、不適切な関係があれば改善措置命令や上場廃止のリスクがあり、継続して反社チェックする必要があります。
日本取引所グループでは有価証券上場規定で、社内体制の整備と反社会的勢力の介入防止に努めることを規定しています。
新規上場審査のほか、市場変更時、第三者割当増資時などに、主要株主や取引先、関係者が反社会的勢力とは一切関係がないと確認することを求めています。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、新規上場を目指す企業にも導入され、導入社数は4000社以上を誇ります。
安いコストで導入・運用が可能で、上場審査に耐えられる反社チェックが可能なツールです。RoboRoboコンプライアンスチェックを利用した企業が毎年何件も新規上場を達成しています。
自動化ツール「RoboRoboコンプライアンス」を導入すれば効率的に反社を排除!
ここまで契約書に反社条項を設置する必要性を解説してきましたが、反社会的勢力を排除していくには反社チェックは欠かせません。
しかし、定期的な自社での反社チェックや専門機関での調査は、担当者の負担や費用が増大してしまうデメリットがあります。
したがって、徹底した体制を構築していくには、反社チェックを効率的に進めるツールの利用が必須です。
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1クリックで自動検索が可能
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反社チェックでは取引先や従業員等を定期的にチェックする必要があるため、一括検索できる件数が多いほど作業にかかる負担を減らすことができます。
反社チェックツールのなかには、一度に検索できる数が少ない、もしくは制限されている場合もあり、担当者の工数が多いツールも存在します。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、取引先の登録はExcelからドラッグ&ドロップで登録ができ、取引先の検索は何度でも1クリックで自動検索を行います。操作に慣れるとマニュアル不要で反社チェックも簡単。
一度チェックした企業の情報はフォルダで整理でき、調査結果を管理しやすい環境です。
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「RoboRoboコンプライアンスチェック」は従量課金の料金形態を採用しています。
1件あたりの単価は120円〜200円で、月の検索数に応じて単価が安くなるのが特徴です。
他社ではオプションになりやすい「AI機能による自動調査」や「調査結果取得」も、RoboRoboコンプライアンスチェックなら基本料金に含まれています。
コストパフォーマンスに優れた反社チェックツールなので、できるだけ料金を抑えたいという企業様におすすめです。
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- 利用企業規模 数名〜数万名
まとめ
反社会的勢力排除に必須の契約書の条項について、汎用的なひな形、業界特有の例文を解説しました。
契約書の条項の整備は、反社チェックとセットで行う必要があることもおわかりいただけたでしょう。
契約書に反社会的勢力の排除条項を設けることで、万一、契約後に判明した場合でも、契約の解除ができ、企業の反社リスクを大きく減らすことができます。
RoboRoboコンプライアンスチェックは、取引先、商談相手、従業員、役員など関係者の名簿を登録して、新聞記事やインターネットを自動的に検索できるツールです。
しかも相手先ごとに調査結果をフォルダ管理で保存でき、いざという時の証明や、証拠としての保管も効率的!
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「契約書の条項整備」と「反社チェックツールの導入」は、反社会的勢力排除の2本の柱です。
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反社条項に関するQ&A
ここでは、契約書についてよくある質問にお答えします!
反社会的勢力の排除に反社条項はなぜ必要なの?
反社条項は、契約相手が反社とわかった場合、反社との関係がわかった場合には、契約を直ちに解除できる条項。
反社会的勢力を排除するための条項を設けることで、反社勢力が契約・取引に介入することを抑止し、万一、反社勢力と取引してしまった場合にも、契約関係を解消しやすくなります。
詳しくは「1章反社条項(暴排条項)がある理由とは?」をチェック!
反社条項がないと暴排条例違反でも、罰則はないのでは?
暴排条例に罰則はなく、事業者の努力義務とされています。しかし暴排条例に規定されたのは、企業防衛の観点から必要だからです。
万一、取引先や内部に反社会的勢力が紛れ込んでしまった場合には、反社条項がないと契約解除も簡単ではなく、重大な違反が公表、報道などされれば風評リスクもあり、さらに指名停止、信用棄損などにつながるおそれがあります。
暴排条項における契約書の例は?
反社条項のある契約書のひな型やモデル条項は、暴排センターが公表しており、各業界団体でモデル契約書を用意していることもあります。
東京都暴排条例に即したテンプレート例が、暴力団追放運動推進都民センター(暴追センター)から公開されています。一般的な多くの契約書の条項に採用でき、とても参考になる例文です。
汎用的な例やテンプレートだけを過信せず、特に不動産業界や金融業界など、業界ごとに特有の条項も検討し、弁護士のリーガルチェックなども経て、自社に適した契約書を用意することをおすすめします。
契約書の例について詳しくはこちら!
既存の取引先との契約書に追加したい場合は?
以前取り交わした契約書に排除条項がない場合、取引の更新時に条項を追加した契約書を作成し、契約を更新しましょう。
それが難しい場合は、契約書とは別に、反社会的勢力とは関わりがないことを表明する誓約書を提出してもらうことも有効です。
その場合には、解除条項や損害賠償条項なども入れましょう
反社のための契約書を新規作成した場合に、印紙税はかかる?
契約書に反社会的勢力排除条項を新設しても、課税文書には該当しないため、印紙税の納付は必要ありません。
反社チェックをしないとどうなる?
反社チェックを怠ると、反社会的勢力との関係を早期に発見できないおそれがあります。反社との関係が進行してしまってからでは、既に法令違反の事案に該当していることもあり、刑事罰、行政罰や行政処分、信用棄損や風評などのリスクがあります。
詳しくは「反社条項がない場合のリスク」を要チェック!