SNSは、企業のPRや広告宣伝、顧客とのコミュニケーションに有効なツールです。
企業の広報担当者が発信したり、個人的に使うのも日常のことですね。
しかしSNSの拡散力は、使い方を間違うと信用棄損や風評リスクにつながりかねません。
「誰もが知っている企業がSNSでコンプライアンス違反!」
「従業員がアップロードした動画が拡散して炎上!」
といったニュースもよく見かけます。
原因を調べて対策を立てないと、思わぬトラブルや損害に巻き込まれることも。
SNSにまつわるコンプライアンス違反にはどのような事例があり、どう対応したのか。
この記事ではSNS全盛のいま、誰が、どのように、どういった動機でSNSでのコンプライアンス違反を行うのか、企業が対策すべき要因やリスク、最新の事例について解説します。
SNSで失敗しないための対策や、SNSのコンプライアンスチェック方法も、具体的事例やQ&Aでわかりやすく紹介!
企業の公式SNSも個人アカウントも、安心して運用できるようぜひご参考にしてください!
目次
SNSでのコンプライアンス違反は誰が要因?
企業に社会的責任が求められる社会の動向や、コンプライアンス重視の流れは今後とも変わりません。
一方で、SNSが普及し影響力が増しているなかで、企業にとっては顧客との関係づくりや宣伝、口コミなど利点もある半面、コンプライアンス違反の場面でもSNS特有の事例が目立つようになっています。
法令違反と広義のコンプライアンス
コンプライアンス違反には、本来の意味である法令違反のほかにも、社会道徳や社会常識などに反した場合の、広義のコンプライアンス違反も含まれます。
たとえば、企業のSNS広報担当者が、不適切な書き込みをしただけでは、通常は法令違反にあたりません。
しかし内容によっては企業の信用毀損や消費者離れ、風評などの観点から影響を免れないこともあるのです。
企業がコンプライアンスを遵守した行動をとることで、取引先や消費者、社会全体から信用を得やすくなります。
社会的な信用を得ることで、企業活動を安定的に継続することができ、逆に法令遵守はもちろんのこと、就業規則や社会的な倫理観、道徳観などに違反する行為があれば、企業には大きなリスクとなります。
企業によるコンプライアンス違反
企業自体によるコンプライアンス違反としては、刑事罰や行政罰などもある重大な法令違反があります。
パワハラ、セクハラなどの企業内部での違反などが、SNSなどの内部告発で発覚する事例も相次いでいます。
帝国データバンクの「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度)」によると、2020年度にコンプライアンス違反が原因で倒産した企業は182件。
9年ぶりに200件割れになったものの、コンプライアンス違反で倒産する企業も存在しているのが実情です。(参照元:帝国データバンク「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度)」)
法令違反でよくある事例としては、粉飾決算、脱税、業界の規制法違反、独占禁止法や景品表示法違反などがあげられます。
担当する従業員や役員の法令違反では、贈収賄、著作権侵害、情報漏洩などがあり、威力業務妨害や名誉棄損などの刑法犯罪も見られます。
SNSでは、企業の公式SNSがコンプライアンス違反の書き込みをすることもありました。
2022年、SNSを活用して企業ブランディングや集客のコンサルティングを行う企業が、実際には関与していない飲食店やホテルなどの成功事例を、あたかも自社実績であるかのようにWEBサイトに無断掲載していることが発覚し、炎上した事例があります。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら、SNSを含むインターネット検索も、ロボットが自動でリアルタイムに実行し、コンプライアンス違反や風評の書き込みを発見できます。
企業の提携者によるコンプライアンス違反
企業自身ではなく、提携相手がコンプライアンス違反を行う場合にも、企業の責任が問われかねません。
ステマという言葉を聞いて、おわかりでしょうか?
報酬を得ていることを隠して、公平な評価であるかのように見せかけた記事をSNSなどに投稿し、好意的な感想や、推薦コメントを投稿することは、ネットの世界では嫌われます。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に違反するケースもあるでしょう。
消費者庁は、景品表示法のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」で、
「『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法の不当表示として問題となる」
(参照元:消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」)
としています。
消費者庁は、ステルスマーケティング規制の動きとともに、いわゆるアフィリエイト広告の規制についても検討を行っています。
アフィリエイト広告は、WEBサイトやSNSに成果報酬型の広告を掲載し、記事などを書いて宣伝してくれる一般の人と提携した宣伝方法です。
アフィリエイト広告の出稿で企業と提携し、ブログやSNSで宣伝する個人のなかには、過剰で不適切な宣伝を行い、景品表示法や薬機法に触れるおそれのある表現が見られると問題視されています。
提携者による不適法な広告文について、消費者庁は企業にも責任を問う方向を打ち出し、既存の法令で取り締まりが可能なことを明らかにしています。(参照元:消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書」)
従業員によるコンプライアンス違反
従業員が就業時間中にふざけたり、会社や接客への不満から、コンプライアンス違反の投稿ををする事例も相次いでいます。
たとえ企業の法令違反などを告発する場合でも、公益通報、内部通報などの正当な方法ではなく、SNSに投稿することが、名誉棄損や業務妨害に該当する可能性もあります。
2022年、予約困難な高級レストランのシェフが、営業中の店内で常連客にふざけてモンブランのクリームをかける動画が拡散され、炎上しました。
従業員が会社の業務とは関係なく、個人で投稿するSNSが、企業に悪い影響を及ぼすこともあります。
RoboRoboコンプライアンスチェックで、SNS検索、インターネット検索を定期的に行い、炎上を未然に防ぐ予防策として導入されることをおすすめします。
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SNSでのコンプライアンス違反にはどんな種類がある?
SNSの特徴は、書き込みや投稿が簡単である一方で、良い情報も悪い情報も簡単に広がりやすいことです。
炎上という言葉からもわかるように、悪い情報ほど瞬時に拡散し、知れ渡ってしまうといえるかもしれません。
SNSでのコンプライアンス違反や、企業の違反行為がSNSで拡散すると、それまでに築いてきた信用、業績、評判を一瞬で毀損してしまうリスクがあります。
文章による情報書き込み
古くはSNSのない1999年に「東芝クレーマー事件」(参照:朝日新聞)で、カスタマー対応での暴言が問題となり、インターネット上でバッシングされたことがありました。
似たような事例は、以後も継続的に起こっています。
SNSでの拡散スピードは、文字での書き込み、特にTwitterによるところが大きいと知られています。「リツイート」といわれる転送機能によるものです。
逆に顧客が企業に対し理不尽な要求をするカスタマーハラスメントも社会問題となっています。
SNSで一般ユーザー側が悪者にされた場合でも、企業に関連してこうした話題が広まることは、適切な対応が褒められるケースでない限り、好ましいことではありません。
画像・動画による投稿
SNSの最近の傾向としては、文章や画像の投稿のほかに、動画投稿が顕著です。
動画撮影が容易になり、通信速度や動画配信サービスなどのインフラが整ったことが背景にあります。
動画は伝える情報量が多く、事実そのものを映し出すために、見る人に与えるインパクトが大きいことが特徴です。
古くは2007年に投稿された、飲食チェーン店での動画があります。
深夜にアルバイト店員が、メニューにはない巨大な盛りつけを作ってみせる動画を公開し、食材の不衛生な扱いも含めて問題となり、フランチャイズ店は契約が解除され閉店になりました。
そっくりな事例が最近も起きています。
写真でも、2013年にコンビニエンスストアのアイスクリーム用冷凍庫に寝そべった店員の写真が投稿や、飲食店の大型冷凍庫に従業員が入っている写真の投稿もありました。
店舗の閉鎖や、フランチャイズ契約の解除にまで発展する大問題です。
情報の拡散
いずれのケースでも、SNSは情報が発覚するや、その拡散力からあっという間にトレンドになります。
画像や動画をもとに、閲覧者によって事実関係の掘り起こし、会社や店舗、個人の特定がされるなどして話題になることがあります。
事実が発覚した後の企業の対応によっても、明暗が分かれます。
企業が対応を誤ると、こんどはそれが問題視され、さらなる炎上を招くケースも後を絶ちません。
ネット上に情報が残り続ける
SNSの怖さは、情報があっという間に拡散されることだけではありません。
インターネットではSNSに限らず、投稿された内容の多くが消えずに残ります。
特に匿名での投稿が多いSNSでは、削除要請が簡単ではなく、インターネット上に記録され後世まで残るため、企業イメージを回復するまでに長い時間を要します。
さまざまな形で情報漏洩が起こりやすい
企業コンプライアンス違反は、安易な発信や故意に発信した情報のみが原因になるわけではありません。
社員の不注意で起こる情報漏洩も含まれます。
パソコンなどのウイルス感染が原因で、情報漏洩が起こりやすくなります。
嫌がらせや内部告発の場合には、企業の秘密情報とわかったうえで、故意に営業秘密や個人情報が書き込まれるケースもあります。
あるいは、「ついうっかり」、「違反とは知らなかった」といった知識不足や、社会規範意識の不足が問題を招く場合もあるでしょう。
個人アカウントによる隠れた投稿
個人アカウントのなかには、閲覧できる人を限定したアカウントで、内部告発や、違法投稿がされるケースもあり、発覚が難しい投稿もあります。
しかし見た人が拡散したことにより発覚し、気づくケースもあるでしょう。
SNS投稿の動機別に見るコンプライアンスの問題
SNSは、使い方を間違えなければ有益なツールです。
実際に企業もマーケティングやカスタマーサポートに、SNSを利用することが一般的です。
SNSでのコンプライアンスの問題は、その要因や、投稿の動機を知って、予防方法などの対策を考えることが大切です。
法令や社会常識に反する書き込み
企業自信、担当者自身によるSNSでの発信が、法令や社会常識に反する場合には、企業そのもののコンプライアンス違反です。
たとえば顧客や関係者に対する誹謗中傷、コンテンツ利用での著作権侵害、広告宣伝での景品表示法違反などは、投稿そのものが直接、刑罰や行政処分などの対象になる可能性があります。
内部告発者や消費者による告発・不満の投稿
法令違反の内部告発は、その最初の要因は、告発される側の企業の違反行為です。
また、消費者による苦情、悪い評判は、たとえ法令違反ではなくても、実際に商品やサービスなどに問題があるのかもしれません。
しかし、企業に対する違反の告発や、不良製品などに対するクレームであっても、告発のやり方を間違えると投稿者にも法令違反のおそれがある場合もあります。
たとえば、名誉毀損や威力業務妨害、個人情報保護法違反などにあたるケースがあるでしょう。
不満や嫌がらせによる社会常識に反する投稿
従業員や取引先が、企業や上司、取引先に対する不満を募らせ、嫌がらせなどを動機として、不適切な告発や誹謗中傷、悪ふざけなどの投稿がされることもあります。
事実である場合はもちろん、事実でないケースでも、いずれの場合にも企業イメージが大幅に低下することは避けられません。
ハラスメントなどの告発
社内でのパワハラ、セクハラなどの事案で、被害者本人がSNS上に被害の詳細を告発するケースもあります。
なかには会社名や加害者の実名を書き込んだり、被害者の家族や友人が本人に代わって、不当な労働環境や人事異動、就職での不平等な扱いなどによる被害をSNSにより告発し、投稿が拡散されるケースも少なくありません。
機密情報・個人情報の書き込み
情報漏洩や個人情報の流出には、意図した情報漏洩のほか、意図しない情報流出もあります。
故意にやったのではない場合でも、情報流出の事実には変わりなく、企業のコンプライアンスや信用問題につながります。
たとえば、地方自治体の職員が自分の席で写真を撮影しSNSに投稿したケースでは、行った行為はそれだけでしたが、机にあった民間企業の機密情報を含む書類が写り込んでいたために、問題になった事例があります。
このように、SNSで指摘されて問題が発覚することも増えています。
マスメディアなどに報道され、騒動に発展するリスクも高まります。
SNSのトラブルは、早期発見、早期の対応と収拾がきわめて重要です。
リアルタイムでSNSを含むインターネット検索ができるRoboRoboコンプライアンスチェックは、ロボットが自動で巡回し情報を収集するため、早期発見には最適です。
SNSのコンプライアンスリスク
SNSでのコンプライアンス違反によるリスクは、それ以外の法令違反などのリスクと性質は同じです。
法令違反でも、サイバー犯罪などを除けば、SNSで特別な法律が適用されることはありません。
しかしSNSの拡散力から、特に風評被害の面で影響が大きくなることは特徴的です。
企業・従業員への刑事罰
法令違反で企業にダメージを与える最大のものは、刑事事件化することでしょう。
刑事事件になると、企業犯罪として、刑罰とともに、企業イメージを失墜させることになります。
報道や風評、信用棄損による重大な影響を受けるばかりか、消費者離れ、取引先からの苦情などにより、業績が悪化するリスクがあります。
進行中の事業に関連した事件が摘発されれば、直接の影響も計り知れません。
従業員の個人的な犯罪による場合でも、企業の管理責任が問われるケースがあります。
企業には法的責任がなくても、道義的責任を指摘されることもあるでしょう。
従業員による個人的犯罪であっても、それが反社会的勢力に関わるものであった場合には、企業自体にも暴力団排除条例(暴排条例)その他の法令に違反する可能性があります。
行政罰・行政処分
行政手続や、業界の規制法に違反すると、是正を求める行政指導や、許認可の取り消しなどの不利益な行政処分、最悪の場合には行政罰を受ける可能性があります。
企業による法令違反では、刑事事件の次に影響が大きいといえるでしょう。
法令違反によっては刑事罰に似た行政罰も、企業や担当者個人に科される場合があります。
業界を規制する法令として、たとえば金融商品取引法、建設業法、宅地建物取引業法、食品衛生法、労働者派遣法などがあります。
業種を限定せずに規制がされる、独占禁止法、景品表示法、特定商取引法などの法律もよく知られているでしょう。
行政処分の場合にも、報道や風評、信用棄損による重大な影響を受けます。
特に消費者に対し悪いイメージが広まれば、業績にも影響するでしょう。
早期に発見し、直ちに是正することが必要です。
損害賠償リスク
SNSでのコンプライアンス違反の場合にも、民事訴訟に巻き込まれるリスクがあります。
SNSへの投稿による被害者や、SNSで告発された違反行為の被害者からの請求や、問題が広い範囲に及ぶ事案では消費者からの請求などもありえます。
事案が企業やその役員による不注意を要因としているケースでは、損失を被った株主からの請求や、取締役に対する株主代表訴訟なども考えられます。
風評からの損害リスク
消費者や取引先からの評判が落ちれば、業績の悪化につながることもあります。
せっかく商談で獲得した取引の契約でも、契約の解除や、注文の減少があれば、見込んでいた売上や利益が失われます。
業績に重大な影響があり、経営を揺るがす事態に発展するリスクもあります。
情報漏洩・個人情報流出リスク
企業の営業秘密、個人情報などが漏洩した場合には、情報漏洩による損害や、個人情報流出に対する賠償責任のリスクが生じます。
企業の使用者責任
従業員や役員の個人的な法令違反であっても、企業が使用者責任に問われるケースもあります。
民法第715条では、事業のために従業員を使用する者は、第三者に加えた損害について賠償責任を負うことが規定されています。
使用者責任の規定に該当している場合には、雇用主が被害者から損害賠償請求される可能性があります。
たとえば、従業員がSNSを通じて取引先や顧客の情報漏洩した場合には、たとえ過失であっても、従業員だけでなく企業側も損害賠償の責任を負わなければなりません。
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SNSによるコンプライアンス違反の最新事例
SNSによるコンプライアンス違反の事例を、具体的に見ていきましょう。
企業のコンプライアンス違反がSNSでの内部告発から発覚
2022年の初頭、大手コンビニエンスストアのフランチャイズ店舗で、賞味期限切れのおでんを販売していたと、店の関係者がユーチューバー(Youtuber)に情報を寄せました。
動画配信で影響力のある有名ユーチューバーに情報をもたらし相談すれば、あっという間に情報が拡散します。
1か月も賞味期限切れていた商品も販売していた事例です。
店員は店長の指示で行わされていたと告白し、証拠の動画を撮影していましたが、企業への内部告発などの手段は行っていませんでした。
動画を確認した一般の消費者が会社に連絡し、発覚したという流れです。
企業側は、事実関係を認めて謝罪し、保健所への報告も直ちに行いました。
店は営業を続けたものの、おでんの販売は中止。
夜になって企業の公式サイトには「賞味期限切れ商品の販売に関するお詫び」と題した謝罪文が掲載されました。
この事例からいえることは、発端は店長による店員への指示がコンプライアンス違反であったことです。
しかし、フランチャイズ店舗に対する監督責任や、正式な内部通報手段が使用されなかったことも問題といえます。
従業員による悪ふざけ動画投稿事例
店舗などの従業員が、不適切な内容の動画をSNSに投稿し、拡散され炎上につながる事例は、後を絶ちません。
2019年、飲食店チェーンのアルバイト従業員が、食材をごみ箱に捨て、ふざけてその後にまな板に載せる一部始終を動画撮影し、SNSに投稿されました。
消費者やネット閲覧者からの苦情、嫌悪感を掻き立て、店舗には3日日で1300件あまりもの抗議の電話が殺到しました。
アルバイト2名が退職処分となり、会社側は刑事・民事両面での法的措置をとると公表しました。
実際に警察は、動画に映っていたアルバイト従業員を偽計業務妨害ほう助容疑で、その他2名を偽計業務妨害容疑で書類送検しています。
2021年にも有名ピザチェーン店で、アルバイト店員が動画撮影し、調理後に残った商品を食べる不適切な動画を公開し、SNSで炎上しています。
この件では会社が謝罪文を公表しています。
従業員の家族による個人情報流出事例
社員の家族が企業の内部情報・個人情報を漏洩した事例もあります。
金融機関の社員の家族が、来店した芸能人の個人情報をSNSに投稿した2015年の事例が有名です。
銀行に来た芸能人の情報は、プライベートな個人情報です。
銀行員としての守秘義務もあるでしょう。
投稿されたのは次のような内容です。
- 来店者名、銀行の名前、来店した理由
- 大まかな住所を知ったこと
- 免許証の顔写真のコピーをとってきたこと
こうした内容に、SNSで炎上しました。
該当する金融機関名も公になり、金融機関は公式サイトやSNSで、謝罪文を掲載するなどの対応を行いました。
翌日には株価が急落し、時価総額460億円の損失が発生しています。
企業の営業秘密流出事例
2017年、自動車メーカーの工場の従業員が、社外秘の情報を投稿したことで炎上した事例です。
工場の検査ラインで未発表の自動車を見つけた従業員が、SNS上に自動車の写真を投稿したことが炎上を引き起こしました。
消費者への被害はなかったものの、社外秘の情報が従業員によって漏洩したため、企業は工場の管理体制についてバッシングを受け、ブランドイメージを損なう結果になりました。
営業秘密は不正競争防止法で保護される情報であり、この場合は企業が被害者といえます。
工場内の写真も投稿され、投稿者は顔写真から特定されてしまいました。
ブログ・SNS投稿者と企業が賠償請求された事例
企業のブログでの投稿が信用毀損とされた事例がありました。
2019年、建物のリフォーム事業を行う企業が、ブログに「怪しい業者3選」の記事を投稿。
競合企業について、「余ったカネ」で「粗末な工事」を行っている、運営主体や会社所在地を偽り容易に判明しないように工作している「怪しい業者」であるといった内容を、会社のWEBサイトのスクリーンショットとともに公開していました。
さらに企業の公式Twitterで、「#詐欺」等のハッシュタグを付けたうえでブログのURを紹介したのです。
弁護士を交えた謝罪交渉を経たものの、結局は裁判となりました。
2021年に東京地裁は、これらの書き込みについて、民法ないし不正競争防止法に基づき、書き込み者と雇用主企業が連帯して55万円の損害賠償を支払えとの判決を下しました。
Twitterでのリツイート投稿で賠償請求されてしまった事例
東京地裁の2022年11月30日判決では、Twitterでの書き込みが名誉毀損にあたると認定しましたが、注目されたのはリツイートについての判断です。
名誉棄損の書き込みを、別の投稿者がリツイート(他者のツィッター上の投稿を引用する形式で投稿)することについて、
コメントの付されていないリツイートは、ツィッターを利用する一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、例えば、前後のツイートの内容から投稿者が当該リツイートをした意図が読み取れる場合など、一般の閲読者をして投稿者が当該リツィートをした意図が理解できるような特段の事情の認められない限り、リツイートの投稿者において、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当である
としました。
リツイートをした個人に対しても33万円の賠償請求が認められました。
名誉棄損に当たる元投稿に「いいね」で賛同を示しただけでは、名誉棄損による賠償責任を認めなかった裁判例がある一方で、コメントのないリツイートだけでも賛同表現と認められた事例です。
企業のコンプライアンス・営業秘密流出の複合要因の事例
2022年、餃子など大手中華料理チェーンのフランチャイズ店を辞めた元従業員が、「店の冷蔵庫にナメクジが大量にいる」などとTwitterに投稿し、食品衛生の問題や退職に至る経過を写真とともに投稿しました。
ゴキブリなど他の害虫や、消毒・掃除などの店舗の衛生管理、野良猫を店員が店で飼っていたこと、店長の氏名なども特定した投稿を続け、たちまち拡散され炎上することとなりました。
フランチャイズ本部の企業では、事実関係を直ちに調査。
事実が確認できた食品衛生の問題の一部や、店の外で猫を飼っていたことなどを認め、謝罪と食品衛生管理の方針などを表明しました。
保健所からは衛生指導を受けることとなりました。
インターネット上では投稿者に対して賛同する意見もあったものの、正当な本部への内部告発、保健所への通報などの手段ではなかったことから、非難の書き込みも相次ぎ、炎上することとなりました。
このようなケースでは、根本要因に企業のコンプライアンス違反がたとえあったとしても、投稿者が信用毀損、威力業務妨害などに問われる可能性もあります。
このケースでは、本部企業は投稿者に対する誹謗中傷もしないよう表明し、一方フランチャイズ店舗の企業に対しては契約解除を行い、店舗は閉鎖されました。
従業員・役員の個人的な法令違反
2022年、東京の老舗和菓子屋の社長が、別の自動車と交通事故を起こし、相手の車のドアを蹴る、罵声を浴びせるなどの行為をしたことが、SNSの動画で拡散されました。
この件から派生して、インターネット上ではこの企業とはまったく関係のない企業に対する問い合わせや、無関係の同社従業員の名前などが書き込まれ、店舗や従業員に対する誹謗中傷の書き込みもされ、炎上することとなりました。
同社ではインターネット上で事実関係をおおむね認め謝罪するとともに、取引先企業に対する謝罪も掲載し、相手の車の運転者との示談・和解に向けた話し合いをするとの方針を公表しています。
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SNSによるコンプライアンス違反対策
紹介した事例からも、SNSのコンプライアンス違反にはさまざまなケースや要因があることがわかります。
発端はちょっとした原因であることが多く、あらかじめ対策があれば事前に予防できた事案も多くあると見受けられます。
そこでSNSのコンプライアンス違反についての対策をまとめました。
コンプライアンス体制・規定の整備
コンプライアンス対策の方針や、人員・部署などの体制を整備し、就業規則などの規定や、契約書を整備すること。
必要に応じ弁護士によるリーガルチェックやアドバイスも受けるとよいでしょう。
就業規則はインターネットやメール、SNSにも対応した内容とする必要があります。
SNSの普及により、企業におけるコンプライアンス対策の重要性は増しています。
具体的な対策として、企業がコンプライアンス違反を起こさないためには、適切なSNSの使い方を理解しておくことが大切。
同時に、社員に対して、SNSの使い方を周知徹底させる必要があり、自社の公式SNS投稿ガイドラインなども必要です。
内部通報制度の整備
SNSは気軽に投稿でき、拡散力があるところから、内部告発などに使われがちです。
しかしやむにやまれず投稿するケースもあるものの、企業や個人の特定、営業秘密の漏洩、信用毀損などにより、投稿者が法令違反にあたり損害賠償請求される可能性もあります。
内部告発や相談には、従業員が企業のコンプライアンス違反を正当に申告する仕組みが必要です。
ハラスメントなどの相談窓口も設けるのがよいでしょう。
内部通報制度とは、コンプライアンス違反に該当する行為を発見した人、被害を受けた人が、相談・通報するための社内向けの窓口を設けること。
内部通報制度を導入するメリットとして、SNSで炎上する前に社内で解決策を講じ、改善につなげられるなどがあげられます。
公益通報制度を利用することもできます。
公益通報制度とは、生活の安心や安全などの公益を脅かす事業者の法令違反を、公的機関に通報し、通報者がたとえ企業の内部者であっても解雇などの不利益な取扱いが禁止される制度です。
社内のコンプライアンスマニュアルなどで、制度について周知しておくのがよいでしょう。
通報先としては下記の窓口があります。
- 厚生労働省
「公益通報者保護制度相談ダイヤル(一元的相談窓口)の概要」 - 消費者庁
「公益通報の通報先・相談先 行政機関検索」
SNSガイドラインの規定
コンプライアンスマニュアルに加えて、社内のSNSガイドライン・投稿ポリシーを準備しておきましょう。
SNSの使用法や注意点、リスクについてのガイドラインで、企業公式SNSのほかにも、従業員個人のSNSについても注意点を記載しておくのがよいでしょう。
SNSのガイドライン、投稿ポリシーを策定することで、社員だけでなく社外の関係者に会社の方針を明確に示すことができ、法令上の問題や、使ってよい表現、駄目な表現などを具体的に説明することが効果的です。
SNSのガイドラインや投稿ポリシーは、コンプライアンス研修の資料としても有効です。
コンプライアンス研や規定・ガイドラインの周知
企業がコンプライアンス違反にならないための対策として、コンプライアンス研修の実施が有効です。
研修でSNSのリスク事例を取り上げ、誤ったSNSの使い方が企業のリスクになることを周知すれば、社員による不適切な投稿への抑止になります。
コンプライアンス違反は、「違反だとは知らなかった」や「ついうっかり」など、社員が企業コンプライアンスを理解していないことが1つの要因です。
企業のリスクを最小限に抑えるには、コンプライアンス研修などの対策が欠かせません。
また、投稿者個人が法的責任を問われ、賠償請求されるリスクなども周知することが必要です。
SNSの利用方法の研修
社員がプライベートでSNSを利用する際の使い方も教育する必要があります。
新人社員を含む全社員に研修を行い、リスクを自覚してもらいましょう。
コンプライアンス研修は、さまざまな分野の法令違反、社会規範や道徳のほか、SNSのリスクを想定したプログラムを実施しましょう。
SNSのリスク事例の解説や、自社の運営メディア、SNSなどに即した内容が重要です。
コンプライアンス研修は、全社員に参加させる必要があります。
新人社員向けや専門部署向けなどのように、対象者ごとに行うとよいでしょう。
リモート研修やeラーニングの活用も、いつでも繰り返し使えるためおすすめです。
SNS研修の内容
SNS研修では、具体的にどのようなことを伝えたらよいでしょうか?
自分の行動によって何が起こるかを、具体例や社内の実情に合わせて、自身の立場に則して解説することが効果的です。
悪意がない内容をSNSに投稿しても、コンプライアンス違反になる場合があります。
従業員の投稿が取引先の不利益につながるほか、企業が使用者責任に問われるケースもあります。
従業員には自身の行動に責任があると自覚してもらわなければなりません。
個人レベルでのSNS利用も含めた研修を
コンプライアンス研修では、社員がプライベートでSNSを利用する場合も含めた教育が必要です。
たとえば、投稿の公開範囲を設定するように促す、業務に関する投稿は一切禁止する、個人の特定につながる情報は投稿しない、などがあげられます。
業務時間外でも、制服、名札、社員証を身につけて撮影するリスクや、SNS上で実名、勤務先を公表するリスクについても伝えます。
営業秘密や他人の個人情報を守るだけでなく、投稿者個人をも守るためであると理解してもらいましょう。
SNSのコンプライアンスチェック方法
社内で、SNSの投稿を監視する体制を整備するのも1つの方法です。
SNSの監視を社内で行えば、自社に関する不適切な投稿を発見しやすくなります。
外部のツールやサービスを用いて、特定のキーワードでフィルターにかければ、自社や製品などに関する投稿を洗い出すことが可能です。
不適切な投稿を早期に発見できれば、炎上によるリスクを抑えることもできるでしょう。
企業のコンプライアンスチェック、SNSなどの風評チェックは、ツールで自動的に実行することが可能です。
ツールを使ったコンプライアンスチェック
インターネット検索は広く情報を探索することができますが、手作業で数多くの検索をする場合や、全社的に統一した基準でチェックするのには向きません。
RoboRoboコンプライアンスチェックを導入すれば、SNSを含むインターネット検索と、新聞記事検索が、同時に自動的に実行できます。
社内のコンプライアンス違反や、SNSでの不適切な投稿など、調査対象のすべてを短時間に、安いランニングコストでチェックでき、検索結果の保管を自動で行うことが可能です。
問題があったときの対応方法
SNSでの社内での投稿や、従業員がSNSで問題を起こした場合、あるいは自社の風評がSNSやインターネットで流布されている場合には、ツールで早期発見することが重要です。
問題を発見したら、まずは事実確認をし、必要であれば従業員からの聞き取りを行って、対応方法を検討します。
事案により、弁護士への相談や、第三者委員会を設置しての調査が必要なこともあるでしょう。
事実究明を行い、対応方針を確認したら、コメントやお詫び、必要であれば記者会見などを行い、事実関係や対応方針を公表します。
対応を間違えて事実を隠蔽したり、言い訳や反論をしたりすると、かえって問題がこじれて炎上する危険があります。
ただし不当要求には毅然と対応し、法令違反のSNS投稿を削除要請できるかといった検討も併せて行いましょう。
まとめ
SNSは拡散力が大きく、影響は甚大です。
社員によるSNSでの何気ない投稿が炎上を招き、企業の信用やイメージの低下を引き起こすことも、具体的な事例から学び取れるでしょう。
コンプライアンス違反によるリスクを最小限にするためには、事前の体制整備、従業員研修と、定期的なチェックが重要です。
ツールでのSNSの監視や内部通報制度の導入などを検討しましょう。
コンプライアンス違反が発覚した場合の検討をしておくことも大切です。
対応策を検討する際は、さまざまなコンプライアンス違反の類型ごとに、対応方法をマニュアル化しておきましょう。
また、社会への謝罪が必要になった場合を想定し、正しい謝罪方法も把握しておきましょう。
RoboRoboコンプライアンスチェックは、取引先などのコンプライアンスチェックを自動的に実行できるクラウドサービスです。
チェック検索結果も残せるため、証拠の保管、従業員管理ツールとしても活用できます。
Q&A
ここでは、よくある質問についてお答えします!
どのような業種でSNSでの炎上事例が多いですか?
オンライン上に存在するSNSや口コミなどの投稿は、業種別で見た傾向では、飲食業や接客などのサービス職種、インターネットなどの通販事業、化粧品や美容などの商品に、比較的多くの悪評やクレームが発生しています。
ただしSNSでのコンプライアンス違反は、どの業種にも起きうるものと考え、さまざまな可能性を想定しておくことが必要です。
謝罪が必要になったときのポイントは?
・オンラインでもオフラインでも、消費者の声を聞く
・顧客からのクレームには事実を確認し誠実に対応する
・社内に報告して情報を共有し、迅速かつ適切な方法で情報発信をする
・事実確認、公表や謝罪、再発防止策の策定、関係者間の話し合いなど、事後対応を徹底する
従業員のSNSもチェックするべきか?
従業員が業務とは関係なく、業務時間外に個人的に投稿するSNSを管理するのは無理と考えましょう。
任意でSNSの申告をしてもらうことはできますが、故意にコンプライアンス違反を行うSNS投稿者はわざわざ申告はしないことも考えられます。
むしろSNS研修を行い、内部通報制度を充実させる、社内からさまざまなコンプライアンス違反をなくす対策が効果的です。
なお、従業員個人のSNSであっても、コンプライアンス違反があった場合には一定の調査はできるでしょう。
ただし法令違反や、企業情報の特定・営業秘密の漏洩などの、会社に迷惑が及ぶ行為を禁じることは必要で、就業規則などに明示しておきましょう。
メールでの裁判例ですが、
「企業秩序に違反する行為があった場合には、違反行為の内容等を明らかにするなどの目的のため、事実関係の調査を行うことができる一方で、その調査は、必要かつ合理的なものに限られる」
とされた事例があります。
匿名のSNS投稿者を調査する注意点は?
2022年10月に、プロバイダ責任制限法の改正法(参照:総務省)が施行されました。
インターネットでの誹謗中傷など、権利侵害からの円滑な被害者救済を図るため、発信者情報の開示について新たな裁判手続が創設されています。
非訟手続で発信者情報の開示請求を行い、裁判所による開示命令までの間、必要とされる通信記録の保全のための提供命令・消去禁止命令が設けられました。
投稿の際の通信ログの保全や、SNSなどのログイン型サービスで発信者の特定をするためのログイン情報の開示請求なども可能です。
具体的に問題が起きた際には、弁護士に相談して対応を考えることが必要です。