国内最大級のビジネスチャットツール「Chatwork(チャットワーク)」を提供する株式会社kubell(クベル)。同社のサービスは、2024年6月末時点で60万社以上の導入実績を誇り、多くの企業の業務インフラとして活用されています。
今回お話を伺ったのは、コーポレート本部 総務部マネージャーの平山有輝子さんと、同じくコーポレート本部 CSE部のエンジニア枝松隆幸さん。同社では年間1万件を超えるコンプライアンスチェックを、主にネット検索を用いた手作業で行っていましたが、判断のばらつきやチェック漏れのリスクが課題となっていました。
こうした背景から、業務工数の軽減とチェックの正確性向上を目的に「RoboRobo」を導入。RoboRoboAPIをつかって基幹システムと連携をすることで、業務の効率化を実現しました。運用保守の責任者であるお二人に、導入の決め手や今後の活用について詳しく伺いました。
目次
1万件を超えるコンプラチェック……チェック品質の均一性に課題残り、精神的な負担に
平山:弊社の主なサービスは「Chatwork」というビジネスチャットツールです。国内最大級のビジネスチャットで、多くのお客様にご利用いただき、業務のインフラとしても定着しています。
また、新たにBPaaS(Business Process as a Service)事業を展開し、「Chatwork アシスタント」という業務プロセス代行サービスを提供しています。これは、主に中小企業の経理や労務、事務作業などの負担を軽減するために、SaaS(Software as a Service)を活用しながら、日々の業務を代行し、業務効率化や人材不足の問題解決につなげるものです。
平山:上場企業として、東京証券取引所のルールを遵守する必要があります。また、取引先やユーザーとの契約でも、反社会的勢力との関係を否定する条項が含まれています。そのため、新規取引だけでなく、既存取引先についても年1回の定期チェックを実施しています。
枝松:私たちのようなIT企業にとって、コンプライアンスチェックは重要です。仮に取引先に反社会的勢力との関係があると、サービスの停止につながる可能性があり、ユーザーや投資家の信頼を失うことになります。それを防ぐためにも、コンプライアンスチェックは欠かせません。
平山:RoboRobo導入以前は、ネット検索を用いて手作業でチェックしていました。毎年1万件を超える取引先のチェックは非常に工数が大きかったですね。担当者によって判断基準がばらつくこともあり、チェック品質の均一性が課題でした。
当時は総務部と経理部でチェック業務を行っていましたが、経理部が忙しい四半期には、対応が遅れることもありました。手作業のため、チェック漏れのリスクもあり、精神的な負担も大きかったように思います。
導入後の作業工数が約10分の1になり、社内のインフラとして定着
枝松:平山さんたちの課題解決に向けて、CSE部でRoboRoboを含め複数のツールを比較・検討しました。その中で、API連携の容易さと、ドキュメント整備のしやすさが決め手でしたね。
他社でもコンプライアンスチェックの工数を減らせるものはありましたが、私たちは長期的に社内システムの構想を持っており、その構想に沿った拡張性を重要視していたのです。そこで、APIの仕様が整っているRoboRoboを選定しました。
枝松:社内のデータベースとRoboRoboをAPIで連携し、検索結果をリアルタイムで反映できる仕組みを自社で構築しました。結果、申請後わずか数十秒で結果が返ってくるため、業務が非常にスムーズになったと社内では好評です。
開発にかかった時間は1ヶ月未満で、1人月程度の労力でした。もともと大規模な開発ではありませんが、API連携の経験があるエンジニアがいたため、よりスムーズに進みましたね。
平山:これまでは手動でチェックを行っていたので、1万件のチェックに約3人月の労力がかかっていましたが、導入後は作業の工数が約10分の1に減り、大幅な工数削減につながりました。以前は総務部と経理部で分担していましたが、今は総務部だけで業務を遂行できるようになりました。
1人月程度の開発工数でこれだけの成果が得られたのですから、実感としては導入後すぐにコスト償却できたと考えています。
実作業の部分でも、これまで手作業でのチェックがほぼ不要になり、精神的な負担が軽減されました。また、余った時間をリスクマネジメントやオフィス環境の整備に充てられるようになったのは生産性向上に大いに役立っていると思います。
枝松:技術者の観点から申し上げると、検索結果が自動処理されるので、業務の一貫性が保たれ、手作業のブレも解消されました。さらに、APIを使って自動化できたため、RoboRoboの画面は開かずに、弊社の管理システム上で結果が見られるようになったので、複数プロダクトにログインをする手間が削減でき、業務スピードが大幅に向上したと思います。
RoboRoboとの連携で広がる今後のビジョン
枝松:課題というより要望ですが、AIを活用した注目度判定の精度向上に期待しています。最終的には、リスク評価も自動化され、完全に手放しで運用できるシステムになるといいですね。また今後もAPI連携を活用し、契約管理や取引履歴の一元化も進めたいと考えているので、そこでもぜひご協力をお願いしたいところです。
平山:枝松さんの言う通り、今は検索された記事をAIが「高・中・低」という区分で分類されていて、これも十分に便利ですが、「この会社はOK」「NG」というように、明確な判断ができるとさらに良いですね。
そうなれば、目視確認が不要になるので、完全自動化が実現できるのではと考えています。今でも気持ち的には手間はほぼ0だと言えるぐらいですが、完全に0だと言える状態になれば嬉しいです。
取材協力=きいてかく合同会社(いからしひろき・横川あきな)