不動産業界は、RoboRoboコンプライアンスチェックへお問い合わせいただく企業様のなかでも、かなり多くのお声がけをいただく業界の1つです。
特に不動産賃貸業となると、賃貸契約の締結にあたって借主・貸主・管理会社や保証会社など取引1件あたりに非常に多くのステークホルダーが存在し、それらの1つ1つの信用を調査する必要があり、RoboRoboがお役に立てるシーンの大きいビジネスと言えるでしょう。
そんな不動産業界のなかで、賃貸業務のコンプライアンスチェック効率化や既設システムとの連携をうまく実現できたのが三菱地所ハウスネット株式会社です。
三菱地所グループの一員として不動産事業を手掛けるこの企業は、ビジネス領域としては不動産売買と不動産賃貸(賃貸管理・賃貸仲介)の2領域を主軸としています。
この三菱地所ハウスネットで人力だった部分から人の手をなるべくなくしていこう・効率化していこうというのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の本懐だと語ってくれたのは、賃貸業務企画部の村元英明グループ長。
座右の銘は「一生懸命のんびりしよう」であり「究極のなまけ」こそが自身の求めるDXの最終形だと言う村元氏は、不動産賃貸事業グループのなかでDX推進を担当されています。
今回は村元氏に、RoboRoboコンプライアンスチェック導入の経緯や使用感をうかがいました。
村元 英明 (むらもと・ひであき)
豊富な職種経験を経て、2014年三菱地所ハウスネット㈱に入社。営業職を経験したのち、2018年より企画業務を担当するようになる。
特に不動産賃貸事業部門におけるDX推進の中軸を担い、SFA・BI・RPA・ETLなどの導入・定着・効率化に注力している。
目次
三菱地所ハウスネットがRoboRoboコンプライアンスチェック導入以前に抱えていた課題
(村元)
まず、弊社における賃貸事業グループ全体としては、大きく分類すると、実際に事業を行う業務部門と私が身を置く企画部門の2つがあり、それらが統合されているようなかたちです。
そのなかで賃貸業務企画部の役割というのは、営業戦略に基づく施策の展開に始まり、マーケティング戦略・人事戦略や、加えて顧客ロイヤリティの向上につながる施策を検討するなどといったことが主です。
そして、その傍らで事業基盤の安定化というミッションも担っていて、私が担当しているのはこちらのほうです。
たとえばDX推進やITガバナンスの強化、ほかには業務の標準化・効率化や人材の価値向上といった課題に取り組んでいます。
なかでも私はDX推進にフルコミットしているようなかたちで、DXの導入・推進・運用をメインの業務としています。
弊社にはいわゆる情報システム部門のようなものがなく、ハードウェア関連のためのヘルプデスクはあるものの、社内システムの保守・管理や推進を専門に担う部署がありません。
そこを各事業グループの業務企画部が担っておりまして、私などは初め、「1人情シス」のような感じで業務を行っていました。
私自身が前職までにさまざまな職種を転々としてきた経緯があり、そのなかでシステムエンジニアを5年半ほど経験していたことから今に至ります。
最近では部下にもITリテラシーがついてきて、一緒にプロジェクトを進めてくれているという状況です。
営業担当者が1件あたり8分以上をかけて反社チェックを年間約2.5万件実施することによる工数逼迫
(村元)
反社チェックを多く行っている部署というのが、大きくは2つあります。
1つは、賃貸のお申込みを受けてからその受付から賃貸借契約を締結するまでのプロセスを管理するリーシング部です。
この部署では入居審査を実施するので、その審査の過程で反社チェックを行っています。
もう1つの部署は、賃貸契約の更新を管理するグループですね。
このグループは賃貸借契約更新のタイミングで、たとえば「入居者が入れ替わっている」「入居者の属性に変更がある」といったシチュエーションが起きた場合に、前回の更新時からどのような変化があったのだろうかとリファレンスチェックを行っています。
後者の更新部門が行うチェックは比較的定型化されていて、リスト化された対象者についてひたすらチェックをかけていくという作業があります。
他方でリーシング部のほうは、お申込みを受けてから社内の審査を通過していく過程で比較的ご成約の確度が高そうだと判断されたタイミングで反社チェックをかけます。
そこで最終的なジャッジを行うというプロセスになっていますね。
インターネット検索等からエビデンス保存というフローによる業務工数過多
RoboRoboコンプライアンスチェックをご導入いただいて、実際の作業はどの程度効率化されたのでしょうか?
(村元)
以前の反社チェック業務は、インターネット検索等を行い、担当者が内容を確認して判断するというのが従来の反社チェック業務だったんです。
この反社チェック作業は、対象者1件あたりおおよそ8.4分でした。
それが、RoboRoboコンプライアンスチェックを導入することで、今の時点では1分程度にまで短縮されました。
単純に検索等をするという行為と、その証跡を保存する行為のすべてが削減できており、残りは「判断する」という作業のみになりました。
営業部門での反社チェック対応によるお客様への提案スピード鈍化
このAI判定の精度や使用感についてはどうお感じになりましたか?
(村元)
そうですね、AI判定のところでいうと、注目度が「低」「中」「高」といったかたちで表示されますよね。
弊社内のルールとしては、「RoboRoboコンプライアンスチェックで注目度が『中』以上であれば必ず目を通して確認しましょう」というかたちにしています。
「中」以上は必ず確認という貴社のルールは、導入当初からそのようにされていたものでしょうか?
それとも、運用の過程で「『中』も確認しなければならない」と感じて変更されていったのでしょうか?
(村元)
それについては前者の、導入当初からの運用ルールになります。
最初から注目度「高」と「中」は必ずチェックというかたちにしました。
やはり、AIが完全に正しい判断をするものと手放しで楽観することはできないでしょう。
AI判定の確からしさが担保されない限りは、この懸念は必ず残ってしまうものだと考えています。
ですので、率直なところを述べれば、RoboRoboコンプライアンスチェックのAI注目度判定が劇的な効果を持つものだといった評価はしていません。
依然として目視で確認して人間が確からしさを担保するというプロセスが欠かせないため、判断工程の大きな削減というのは起きていないのです。
とはいえ、注目度「低」のところはあまり見る必要性がないだろうという判断ができるようになり、「中」と「高」だけ見ればよくなったという点は、作業者の精神的負荷低減といった定性効果があると感じています。
三菱地所ハウスネットがRoboRoboコンプライアンスチェック導入を決めた理由
ところで、数ある反社チェックツールのなかで貴社がRoboRoboコンプライアンスチェックをお選びくださったのは、どのような点を評価してのことなのでしょうか?
(村元)
反社チェックツールの導入にあたっては、判定精度・コスト感・既存ツールとの連携性の3つを軸にしていました。
- AIを活用した危険度判定の正確性
- 圧倒的なコストパフォーマンス
- 既設利用ツールとの連携性(API連携)
特に3点目の既存ツールとの連携性、つまりAPIによる他社ツールとの連携可否をかなり重要視していて、そこが決め手になりました。
選定ポイント①:AIを活用した危険度判定の正確性
(村元)
反社チェック業務の効率化を考え出した当初は、独自開発ソフトウェアによる業務改善を想定していました。
しかしながら、反社チェックというものにはセンシティブな部分もありますので、そういったものを自社開発して期待通りの働きをしなかったらという懸念をぬぐい切れませんでした。
もし独自で作って良からぬ結果が出てしまった場合に、お客様にたいへんなご迷惑をおかけしてしまうからです。
ですから、ここはやはり餅は餅屋に頼るべきだという考えに至ったんです。
そこで、導入ツールに求めた第1のポイントは、その調査結果の確からしさだということになりました。
ただし、前述の通り、現時点で完璧な精度を持っているツールがあるわけではないだろうとも考えていました。
しかし、そうであっても利用実績の増加に伴ってAIにデータが蓄積されていき、その精度は上がっていきますよね。
導入判断にあたっては、成長の可能性に投資すべきという考えでした。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、AIの精度向上を含む大小のメジャーアップデートを半期に1回以上の頻度でリリースしています。
お客様からのご意見・ご要望もふまえながら、ユーザビリティ向上のための細やかなバージョンアップまで余念なく開発を続けています。
選定ポイント②:圧倒的なコストパフォーマンス
ほかにも反社チェックツールに求められていたポイントはありますでしょうか?
(村元)
あとはコストですね。
導入・運用コストに対して定量的な効果をリターンとして、ROI(投資利益率)を試算しました。
よくある話ですけれども、「社内人員が作業すればタダ」という考え方がありますよね。
今までは気合と根性で検索して業務を遂行していた。
それをアウトソーシングしてしまうと、それまで必要なかったコストがかかってしまうと。
業務効率化ツールの導入というと、どうしてもそのように捉えられてしまうことが多いんですよね。
この点について、反社チェック業務の作業内容・工数を人件費換算し、それがなくなることによってどれだけの費用削減があるか。
導入・運用コストが投資額、削減額が利益としてROIを出して、利益的なツールであると判断ができることが必要な条件でした。
(村元)
定量的な部分としては、やはりチェックの自動化による工数削減として効果があると思います。
加えて、定性的な効果もあったと考えています。
反社チェックのインターネット検索って、やはり同じことの繰り返しという精神的な苦痛を伴う作業ですよね。
そこからの解放という効果があるのではないかなと考えていますね。
実を言うと、導入当初は使用方法が社内に浸透しておらず、現場のほうではRoboRoboをまったく使ってくれなかったんですよ。
そこで説明会やレクチャー動画といったものを作って普及させたら、次第に現場からインターネット検索するという行為自体が無くなっていきました。
今ではRoboRoboにログインできなくなると即座に大騒ぎになるほどで、RoboRoboがもたらす効率化の実感のようなものを抱いてもらえたのかなというように思っています。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、反社チェック1件単位の従量課金プランだけでなく、年単位・月単位のお得な契約プランも用意しております。
長期契約プランでは月間・年間のご利用件数によって1件あたりの単価を見積もらせていただきますので、チェック頻度の高い企業様から低い企業様まで柔軟にフィットすることが可能です。
選定ポイント③:既設利用ツールとの連携性(API連携)
(村元)
私自身が一番主眼に置いたところは連携性でした。
反社チェックを単純に自動化してくれるツールというのは数多くありますよね。
ただ、反社チェックという行為自体が簡単になるだけというのは、あまり求めていませんでした。
反社チェックの結果を社内で利用しているいろいろなSaaS――たとえば弊社が既に利用していたBIツールやSFAツールに連携させられるかどうかが重要でした。
端的に述べてしまえば、RoboRoboコンプライアンスチェックの管理画面を見なくてもRoboRoboが使えるといった状態が望ましいというふうに考えていたんです。
現場のユーザーからしてみると、既設のSaaSに加えてさらにRoboRoboを入れましたとなったとき、ある業務では社内イントラのインターフェースを開き、反社チェック業務のときにはRoboRoboの画面を開くというのは非常に煩わしいことです。
2つのID・パスワードを管理しなければならず、2つのツールを別個に確認しなければならない。
利用するツールが増えればその数も増え、ひどい場合にはPCのモニタ周りにID・パスワードを記録した付箋が大量に貼り付けられてしまうかもしれません。
現場のユーザーの目線で見れば、1つのものしか見たくない。
だから、複数の製品は利用したいのだけれども、それらのアウトプットを参照するだけなら1つの画面だけ見ればいいという状況を作り上げたかったんです。
私としてはそこを反社チェックツールの選定ポイントにしており、API連携機能の有無というのは個人的に大きい要素でした。
RoboRoboコンプライアンスチェックでは、API連携オプションをご利用いただくことでSFA・CRMツールなどさまざまな既設システムと機能連携することが可能です。
エンジニアをはじめカスタマーサクセスのメンバーも充実しておりますので、ツールの導入からAPI連携開発伴奏まで幅広くご相談いただけます。
導入にあたっての手厚いサポートもRoboRoboコンプライアンスチェックの魅力
API連携という点については、貴社の基幹システムとBIツールがあって、そこにRoboRoboのAPIリクエストを出して利用しているというかたちですよね。
貴社にはこのAPI連携についてオプションをご利用いただいておりますが、実際にAPI連携が運用に乗るまでにはどのくらいの期間を要したのでしょうか?
(村元)
リードタイムとしては半年ほどかかったように思いますが、実際には進行していない期間もあったので、実質は2か月くらいです。
貴社とキックオフの打ち合わせを行い、そこでAPIの仕様を聞いてから実際に設計などを行い、試行錯誤を経てようやくできたというところまでが2か月ほどです。
(村元)
そうですね。
弊社のシステム網のなかにETLツール(データ統合管理ツール)があるのですが、ETLツールと他のツールを連携させたい場合、一般にはPython(パイソン)などの言語でコーディングをしてAPIを実行します。
ところが弊社が利用していたETLはノーコードツールだったので、どうしても一般的なコードとは異なり癖も強いものでした。
そんななかでエラーが起きたときにログを見ても、私もそれをうまくは理解し切れない状況にありました。
そこで貴社に相談して、エラーログもそのまま送って「こういうエラーが出たようなのですが原因はわかりますか」と聞いてみました。
そうしたら、ETLのログを読み取って「もしかしたらここがちゃんと定義できていないのではありませんか」と指摘をいただいたりとかして。
結果としてようやく実動に至りました。
ほかのベンダーさんでは「ETLのベンダーに聞いてください」と一蹴されてしまうことが多いなか、RoboRoboコンプライアンスチェックでは実装プロセスの詳細までサポートしていただけたのが嬉しかったです。
(村元)
RoboRoboのエンジニアチームはほかのベンダーさんでは対応してくれないところまで寄り添ってくれました。
こういうサイクルを経て、2か月という短期間でAPI連携をつなげるというところまでできました。
業務効率化が拓く新しい生産性・付加価値創出
では、その削減されて生まれた余剰の時間というのは、どういった業務にあてられているのでしょうか?
(村元)
今の時点では空いた時間をどこに回してということはできていないんです。
これまでチェック業務のために発生していた残業時間が減ったというところでして、あくまで超過時間が減っただけというのが実状です。
もちろん、それはそれで大きな効果と言えますけれども。
ただ、これからはRoboRoboコンプライアンスチェックも含めていろいろなツールを活用し、どんどんどんどん作業時間を削減していきたいと考えています。
たとえば、RoboRoboを使っている主な部門はリーシングの営業部署なのですが、彼らの営業業務にもっと時間を割けるようになるといったことが必要になるのかなと思います。
反社チェックは事務作業でしかなく、営業職が行う事務作業、つまりそこが単純に損失と言えます。
もっと営業という行為にコミットできれば良いと考えています。
たとえば、入居者募集のシーンでオーナー様に対してより効果的な賃料の提案ができるであったりとか、キャンペーンを組むことで空室期間を短縮できるであったりとか。
ほかにも宅配ボックスの設置やインターネット無料などといったバリューアップの提案を行うことで、他の不動産会社との差別化を図れるかもしれません。
ほかの企業も当然ながらに実施していることではあるのですけれども、さらに別の方法がある・もっと付加価値の高い方法があるといったふうなかたちで営業力を強化させるようなところにまで時間を転化できていくと、会社としては良いんじゃないかと考えています。
そこから転じて、反社チェックの工数削減がそのまま営業力・付加価値創出の力に転化できるというのも、不動産賃貸業界ならではのメリットと言えるかもしれません。
それでは最後に、RoboRoboコンプライアンスチェックに対する今後の期待や要望を教えていただけますでしょうか?
(村元)
そうですね……、反社チェックって、やはり完全な自動化はできないという現状があるんですよね。
必ず人の目でチェックをして、そして人が判断するというルールがある。
そのルールを変えないことには完全自動化ができないんです。
これについては時間が解決する問題でもあるのかなと思います。
それと同時に、「人間の判断のほうがかえってよくないのではないか」という見方もあると考えているんですよね。
人間の判断には必ずバイアスが掛かるので、外見などでそのチェック対象者の信頼性を疑ってしまう可能性は大いにあります。
ですから、そのときにAIによる判定精度が高くなっているというのが期待するところなのかな。
数値などのエビデンスで、確からしさが十分に担保され、単にチェック時間を短縮させるツールというところを超えてもう1つ上の次元の、「AIのほうが人間よりも厳しいチェックをする」というような。
そしてその先はもう人間に判断させないというのが行き着くところなのだと考えています。
労働人口はどんどん減っていくわけですから、「物理的にリソースが足りないので機械に任せるしかない」という時代は絶対にやってくる。
そのときに、RoboRoboコンプライアンスチェックがそうしたジャッジを1番よくできるツールであるというふうになっていれば良いのではないでしょうか。
そういうSaaSツール×AIの相乗効果というところは間違いなく貴社もご検討されている領域だと思いますので、そこに期待をしています。
おっしゃる通り、私たちのRoboRoboの今後の在り方というものは、ただ反社チェックを提供するツールでなくても良いのではないかと考えています。
もともとRPAを母体としている企業ですので、反社チェック機能やSFAなどとの連携機能に留まらない自動化・効率化を提供して参ります。