法令遵守とは、法律や省令・規則、条例などを守ることです。
似た意味のコンプライアンスには、本来の法令遵守に加えて、企業が社会的責任を果たすためのルール、企業倫理や社会規範を遵守することも含まれます。
法令遵守を実行するには、内部統制体制の整備、社内規定・マニュアル・契約書等の整備、法令の周知・研修の実施など、従業員に対して法令の理解と遵守を徹底するための対策が必要です。
さらに相談窓口・内部通報窓口の設置や、法令遵守のための定期的なチェック体制の整備、違反やリスクを早期発見するための、コンプライアンスチェックも重要です。
法令違反をしてしまうと、刑事罰、行政処分、損害賠償などのさまざまなリスクがあり、多発する不祥事やコンプライアンス違反に対しては、各業界、各企業でも対策をとらなければなりません。
この記事では法令遵守の意味や、企業がコンプライアンスを重視するようになった背景、マニュアルや研修などの対策も紹介します。
介護業界や建設業界などの、具体的な業界ごとの違反事例や対策の取り組みも参考になるでしょう。
実際に法令遵守がされているか、企業にリスクはないかをチェックするには、ツールの導入が有効です。
コンプライアンスチェックを自社で自動的に実行できるツールも紹介し、法令遵守の監視やチェックを効率化する方法についても解説します。
目次
1 法令遵守とは?定義を解説
法令遵守とは企業などが法令や、広い意味では社会的なルール・規範を守ることを意味します。
「法令」には法律のほかにも、さまざまなものが含まれます。
そこで法令遵守の対象とされるさまざまな種類のルールについて解説します。
法令の種類
一口に「法令」といっても、法令には憲法・条約・法律・政令・省令・規則などの種類があります。
法令の定義は憲法にも規定はありません。
法律は、国が定めた規範として成立した成文法で、日本では国会の議決を経て成立するもので、一般的には法律や行政機関の命令を合わせて法令と呼ばれています。
法令にはさまざまな種類があり、改正もあるため調べるのも大変です。
法令を調べるには国立国会図書館が作成しているデータベースや、政府が運営するデータベースe-Govで検索するのが便利です。
※参考:日本法令索引|国立国会図書館
※参考:e-Gov | デジタル庁
(引用:e-gov法令検索)
①法律・政令・省令・規則
法令遵守の対象となる「法令」の本来的な意味は、法律のほか、法律に基づく省令・規則や、条例、さらに条約など、成文で定められた実定法です。
法律
法律は国の規範を成文化したルールとなるものです。
法律は原則、衆議院と参議院の両院で可決されたときに成立します。
国会で成立した法律は、公布された後に、施行されたときに効力を有します。
法律にもさまざまな種類があり、憲法の多くの条項に「法律でこれを定める」とあるように、もっとも気を配らなければいけない法令といえるでしょう。
新しい法律の制定や改正には、事業活動が影響を受けることも多く、ビジネスチャンスが発生する場合もあり、企業にとっても重要です。
政令(施行令)
政令は法律に基づき付属する命令で、施行令とも呼ばれ、政令は法律で委任された事項の範囲内で定められます。
憲法や法律を実施するために、法律には書かれていない細則を制定するものです。
政令では法律の委任がない場合に、罰則や国民に義務を与えるような制限を定めることはできません。
省令(施行規則)
省令は施行規則ともいわれ、たとえば文部科学省令や特許法施行規則のように、各省の大臣の行政事務として、法律や政令の施行にあたって特別の委任に基づき細則を定める命令です。
省令も政令と同様に、法律の委任がなければ罰則や国民に義務を与えるようなことはできません。
内閣府令
命令には、前述したように、内閣が制定する政令、各省の大臣が制定する省令のほかにも、内閣総理大臣が制定する内閣府令があります。
内閣府令は政令や省令とは主体が異なり、法律や政令を施行するために、内閣府の命令として発することができるという内容になっています。
②条例
条例は、地方議会の議決により成立し、その地方で効力をもつ法律にあたるものです。
条例は、憲法・地方自治法に基づき、各都道府県や市町村の権限に属する事務に関して、議会で制定される自治立法のことです。
政令などと同じく法律の範囲でのみ定めることができます。
条例の場合には、法令に特別の定めがある場合を除いて、違反者に対して罰則を制定することが可能です。
しかし、罰則においても法律の範囲を超えることはできません。
③命令・通達・告示
法令遵守の「法令」には、広い意味では、法律や条例などに基づき行政機関が定める、命令・通達などの行政指導や行政処分に伴う指導・基準なども含まれます。
行政指導や行政処分に伴う公文書は直接の法令ではないものの、地方自治法、行政手続法や条例に基づき、国や地方の行政によって発出されるものです。
これらに従わなかった結果、法令違反となることも多いため、企業に求められる法令遵守には次のものが含まれるといえます。
命令
命令とは行政機関が制定する規範のことです。
前述した政令や省令も命令ですが、これらは法律と同様に交付され施行されるものです。
一方、これらとは別に、国や地方自治体の行政が、具体的な法律や条例に基づいて定め、あるいは発出する命令があります。
命令には行政手続きや行政処分、行政指導などの過程で発せられるものもあり、根拠となる法令に基づいて手続きや内容が定められます。
一例として、労働基準法では、
「労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。」
とあるように、法令には多くの命令が規定されています。
通達
通達とは行政内部の命令のことです。
行政機関内部での命令であるため、企業や国民、裁判所には法的な拘束力を与えません。
通達は、上位の行政機関が下位の行政機関や職員に対して、職務に関する命令を発し、法令の具体的な解釈指針や、行政の基準を一律のものとするためのルールなどが定められます。
たとえば国税庁の通達によって、複雑な税金の課税対象や課税方法のルールが公表されている例などがあります。通達の内容に沿わない行動は法令違反となることもあり、実質的に命令のような性質を持っているといえるでしょう。
公示・告示
公示・告示とは、国や地方自治体が法令や条例など決定してことを国民に知ってもらうために用いられます。
これらは事実を広く知らしめるもので、法的な拘束力はありません。
内容を国民に対して周知し行政活動を円滑に行うためにするもので、たとえば選挙の公示、当用漢字・常用漢字の告示などがあります。
④慣習法・判例法
法令遵守の「法令」には、広い意味では、具体的に定められた実定法以外の慣習法や、判例なども含まれます。
慣習法
慣習法は、社会の成員の間に存在する慣行のうち法規範と意識されているもので、たとえば業界の商慣習などがあります。
法の適用に関する通則法では、法律と同一の効力を有する慣習として、
「公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する。」
と規定しています。
また民法第92条では、
「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において,法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは,その慣習に従う。」
とされています。
判例法
慣習法の効力は、実際には裁判で認定されるまでは不安定なものといえます。
慣習法が存在する場合にも、内容が不明確であることも少なくありません。
慣習以外にも、法令の解釈に争いがあって、それを争点に判決がなされ、定着したものを判例あるいは判例法といいます。
最新の裁判、特に最高裁判決などによって従来の判例が変更になることもあり、事業活動に関連する判例には企業も注意が必要です。
⑤就業規則・契約等
私人間の契約や取り決めなどは私文書であって、法令ではありません。
しかし私文書でも、法令に基づく権利義務などが明記された契約書、就業規則などを遵守することは、コンプライアンスに含まれると考えるのが一般的です。
契約違反・就業規則違反が法令違反(労働基準法など)となることもあります。
契約条項違反など、直ちに法令違反とはならない場合でも、民法の契約その他の条文が適用される法的な文書です。
法令の分野
法令には、さまざまな分類方法がありますが、企業活動においては次のような分野それぞれについて、法令遵守をし、企業活動がコンプライアンスに反しないようにしなければなりません。
①民事法
民事法は、不動産などの私有財産や、契約、債権(債務)などの決まりごと、私人間の争いごとやその解決手続きなどを規定する法令です。
民法はじめ、企業の活動や権利義務などを取り扱う会社法、民事の手続きを定める民事訴訟法、不動産登記法などがあります。
事業活動において契約や紛争解決などは重要なものであり、企業の法務部門においても民事の法令に関する分野の業務が多くあるでしょう。
雇用契約など従業員との間でも、民事法の適用があります。
②刑事法
刑事法は、社会の秩序を維持し、違反には刑事罰などの罰則がある法令です。
刑法や、組織犯罪処罰法、刑事手続きを規定する刑事訴訟法などのほか、行政法であっても刑事罰などがある独占禁止法などの公法や、暴力団排除条例などの条例にも刑事法といえるものがあります。
また著作権法のように、権利を定めた民事的な内容のほか、違反に対する罰則を定めた刑事法の性格を持つ条文が含まれる法律も数多くあります。
③行政法
行政の規制や許認可、手続きなどを定める公法を行政法といいます。
地方自治法、行政手続法などの一般法のほか、建設業法、銀行業法などの業界ごとの法律などがあります。
事業活動でも許認可や、法令に沿った届け出などの手続きが必要なことも多く、さらに所得税法、法人税法などはすべての事業法人にかかわりのある法律です。
④国際法
国際間の取引、権利義務などを規定する、国際間取引や企業の海外進出、海外人材採用などにあたり関係する法令が国際法です。
法の適用に関する通則法では、
「法律行為の成立および効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」
と規定されています。
当事者の合意による準拠法の選択のほか、事業活動や契約などの法律行為にもっとも密接な関係がある国の法律が準拠法となります。
2 法令遵守とコンプライアンス、言葉の意味を解説
法令遵守とコンプライアンスは同じ意味と捉えられることもありますが、正確には異なります。
ここでは、法令遵守に関連する言葉の違いと意味について解説します。
法令遵守とコンプライアンスは同義ではない
法令遵守は法律に明記されていることを守ることです。
一方コンプライアンスは、法律に加えて、法律には記載されていない社会的モラルや、倫理観といった企業としての正しい価値観を守ることも含まれます。
企業も社会の一員であるという理由から、企業の社会的責任が重要とされています。
消費者や社会一般の声も聞き、さらには消費者行政や国際機関などで示される規範、基準なども含めた広い意味での企業倫理、社会規範を遵守することも、企業のコンプライアンスであるという認識が定着しているのです。
そのため、企業がコンプライアンス遵守をしていくには、法律知識の周知、社内環境の改善など多くのことが求められています。
遵守と順守との意味の違い
「遵守」とそっくりな言葉に「順守」があります。
どちらも「じゅんしゅ」と読み、「遵守」のほうが厳格に守る意味だという解釈も聞かれますが、もともとは同じ言葉です。
もともとは「遵守」の表記であったところ、1954年(昭和29年)に「遵」の字が当用漢字表から削除されたため、新聞やテレビでは「順守」の表記が使われています。
しかし「遵守」も常用漢字とされており、公用文や教科書では「遵守」と表記しています。
法律や社会規範などを守る意味では、一般的に「法令遵守」の表記が多く使われています。
3 法令遵守の3段階
法令遵守は法治国家としては当然ですが、コンプライアンス強化の流れにより、企業の法令遵守は次第に広範囲に解されてきました。
企業が守るべき社会規範・倫理についての考え方を浸透させる手法として、企業倫理の3階層が知られ、以下の内容となっています。
- 第1階層 法令遵守の行動をする
- 第2階層 法令以外でも社内や業界内の規則を守った行動をする
- 第3階層 法令・社内・業界規則以外でも社会通念上の倫理観のある行動をする
①法令遵守
元々の意味の法令遵守が重要視された背景には、次の要因がありました。
- バブル期~バブル崩壊後に反社会的勢力の経済活動が目立っていたこと
- 犯罪の国際化と国際的な取り締まりの強化
- 企業による不祥事の多発
反社会的勢力を排除するための法令、条例の制定など、制度面からのコンプライアンス強化が大きく進んだのは1990年代から2000年代にかけてのことでした。
反社会的勢力の排除のための法令としては、暴力団対策法、暴排条例、組織犯罪処罰法、犯罪収益移転禁止法などがあり、金融取引での本人確認なども強化されました。
企業不祥事の排除としては、独占禁止法の強化などにより、談合、不正取引の横行への対策がされ、各業界の法律でも規制が強化されています。
さらに近年ではSNS、ネットセキュリティなど多彩な不祥事が発生している背景から、法令遵守の意識が高まっています。
しかし企業による不祥事や法令違反が、今も後を絶たないのも現実です。
企業が法令遵守できているかをチェックし、法令違反、コンプライアンス違反を早期発見するためには、SNSなどのインターネット、新聞記事を自社で自動的に実行できるツールの導入が不可欠といえるでしょう。
②就業規則・契約等の遵守
企業倫理・社会規範としては、法令遵守に加えて、取引先との契約や、就業規則などを守り、さらに人権保護や社会環境といった道徳的観点から企業活動の指針を決定し、組織で統率、運営していく考え方があります。
企業活動の国際化が進展し、日本の取引慣行だけでは通用しない事業環境の変化も、契約や規則、従業員の職場環境なども含めた企業倫理の確立を後押ししたといえるでしょう。
③企業道徳・社会規範の遵守
企業の社会的責任の重要性から、広義のコンプライアンス・社会規範を遵守する意識も拡大し、多様化しています。
企業倫理、社会規範の概念の拡大により、企業の内部統制、コーポレートガバナンス(企業統治)が当然のこととされ、企業でも倫理憲章などを設ける動きが拡大してきました。
さらに広義のコンプライアンスとして、環境保護、国際的な人権、差別への配慮などにまで企業の社会的責任が言われるようになっています。
経済界、証券取引所、金融業界などでも反社会的勢力の排除や、社会的責任重視の姿勢からの取り組みを強化しています。
コンプライアンス体制を構築するには、最終的に第3階層を目指していくことになります。
そのためにも、現在自社ではどの階層にいるのかを把握しておきましょう。
4 法令遵守義務違反の最新事例
しかし今日でも、企業による法令違反、ブラック企業などの労働問題、不正会計などの不祥事が相次いでいます。
たとえば介護業界、建設業など多くの人員を必要とする労働現場での長時間労働や、人手不足を背景とした不祥事のニュースが散見されます。
近年の企業の不祥事関連の特徴としては、法令違反をした企業の風評拡散や、従業員による不用意な書き込みでの炎上など、SNS関連の問題や、セキュリティ関連の事例も目立ちます。
具体的な最新事例をいくつか見ていきましょう。
法令違反
介護業界の事例では、介護保険法、業界の規制法などの違反行為が全国で多数発生していることが、たびたび報じられます。
2023年3月には厚生労働省が、介護事業所の指定取消・停止処分が、前年度に105件あり、特に介護報酬の不正請求が最多となったことが報じられました。
介護報酬は介護保険法に基づき、帳簿書類などを適正に管理、提出して保険給付されるものです。
法令に違反すれば、介護施設・事業所の指定取り消し、効力停止の処分などを受けるおそれがあります。
指定取り消しがされた理由としては、介護報酬の不正請求が28%、虚偽申請が16%、法令違反が15%、人員基準違反が13%で、いずれも介護保険法などに違反する行為です。
労働問題
労働問題の代表的な事例としては、違法な長時間労働や、安全管理義務違反、不当解雇などがあげられます。
これらは労働基準法、労働安全衛生法などに違反することとなります。
2022年9月には、日本建設業連合会が、管理職以外の建設労働者の半数近くが、前年度に年間360時間を超える時間外労働をしていたことを公表しました。
しかも約3割の労働者では、年間720時間を超える残業をしており、長時間労働を規制する労働基準法の建設業での特例基準をも上回っていました。
従来、建設業界では人材不足を理由に、長時間労働の特例基準により猶予が認められてきました。
しかし法改正によって、2024年には原則として年間360時間以内、月間45時間以内に減らさなければなりません。
違反した場合には、罰金などが科されます。
さらに、残業代の未払いも問題となっています。
厚生労働省の集計では、2021年度に労働基準監督署による是正がされた不払い賃金の事例は1000社を超え、総額で65億円を超えました。
また、2022年に東京都の労働局がまとめた建設現場の調査結果では、およそ2/3の工事現場で、安全衛生管理面での不備などの法令違反が発見されました。
法令違反での書類送検などの事例も相次いで報道されています。
不正会計・不正受給
不正会計も企業不祥事としては多く見られる事例です。
売り上げの水増しや経費のごまかしなどで、企業の実態をよく見せようとする事例のほか、従業員による横領、着服なども後を絶ちません。
2023年6月には、介護報酬の不正受給で、兵庫県神戸市の介護事業所2か所が、指定取り消しなどの行政処分を受けたと報じられました。
2021年12月に岡山県で起きた事例では、虚偽の申請により介護給付費を不正受給したことにより、新規受け入れ停止の行政処分がされた事例もあります。
虚偽申請の内容は、すでに退職・休職していたケアマネージャーについても介護給付費を受給していたことで、6か月間の新規業務停止とともに、約2100万円の返還請求がされました。
情報漏洩
情報漏洩は近年多い法令違反の事例です。個人情報保護法や、営業秘密の不正持ち出しなどの不正競争防止法違反に問われる行為です。
故意でなくとも、ネットセキュリティの甘さによる情報流出は、企業の信用を毀損する重大なコンプライアンス違反です。
2023年4月には、岩手県の地方自治体職員が、全市民約32,000人の個人情報を自宅に持ち帰り、SNSで話題にするなどしていたとして、問題が明るみにされ、報道もされました。
流出した個人情報には、住民票データ、診断書なども含まれており、かかわっていた職員は懲戒免職や停職処分を受けています。
5 法令違反の要因とリスクは?
法令違反には、刑事罰、行政処分などのさまざまなリスクがあります。
企業の社会的信用が毀損し、風評リスクにもさらされるばかりか、許認可取り消しなどの行政処分では業績にも悪影響が出るでしょう。
法令に違反していなくても、社会道徳などに反した行為が、信用毀損、消費者離れを招くことも珍しくありません。
法令違反のリスクを避けるには、まずはその要因を知り、対策を立てることが必要です。
①企業風土・法令軽視
法令違反について、かつては現在ほど企業人の意識も厳しくない時代がありました。
業界や企業の風土によっても、金融業のようにコンプライアンスに古くから厳しい業界と、比較的厳しくない業界などがあり、法令遵守意識も業界や企業によってまちまちです。
たとえば談合などが横行していた建設業界や、人材不足などを背景に長時間労働が常態化している業種なども見られます。
しかし今日では業界を問わず、コンプライアンスが重要視されており、法令遵守の体制を作ることは不可欠です。
②経営成績・営業ノルマなどのプレッシャー
企業の業績を良く見せようとする不正会計は、次のような理由で起こります。
営業マンが歩合給で給与をもらう業界などでは、売上目標達成のためのプレッシャーや、上司によるプレッシャーが強い企業も多くあります。
営業部署、営業所全体でのノルマ達成や、時には企業全体をよく見せる必要から不正に手を染めてしまうケースもあるでしょう。
たとえば資金調達のための決算数字の実現や、株式市場への新規上場のために企業の成長を演出する誘惑など、過去の事例でも目につきます。
一方、感染症や物価高、人材不足などを背景に、長時間労働や残業代の不払い、下請けに対する不当な値下げ要求などが起きやすくなる面もあります。
不正会計が発覚して決算訂正や、なかには上場廃止になった事例や、法令違反による罰則、行政処分もあり、リスクも多大です。
③法令の知識の欠如
法令の知識不足や、従業員全員に制度改正が周知されないために法令違反が起きることもあります。
法令には、自社の属する業界の法律だけでなく、契約や刑罰に関する一般法、SNSの使い方に関する知識なども含まれます。
法令の知識がなかったばかりに、違反行為をしてしまい、行政処分や、取引先からの損害賠償請求などのリスクが生じるおそれもあります。
④内部統制の不備
内部管理体制が整備されていない企業では、問題が起きた時の対応や、報告、連絡、相談体制を確立して法令違反の予防がうまくできません。
コンプライアンス違反が起きやすいばかりか、起きても発見されにくい体質であるといえます。
一人の担当者が長年行っている業務などでも、不正が起きやすいことが知られています。
内部統制の不備によるコンプライアンス違反も、法令違反であれば刑事罰や行政処分、損害賠償などのおそれがあるほか、上場企業のコーポレートガバナンス不備は改善報告書の提出などのリスクがあり、企業の信用問題にも結びつきます。
⑤社内規定・契約書等の不備
就業規則などの社内規定の不備や、反社対策の条項がある契約書の不備も、企業のリスク管理上は問題となります。
規定や契約書が法令に違反する場合は当然として、そうでなくともトラブルが生じたときに適切な解決ができないおそれや、従業員の離反を招くリスクなどがあるでしょう。
⑥コンプライアンスチェックの不備
法令違反、コンプライアンス違反がないかどうかは、日常業務での報告や相談のほか、チェック体制を構築することで予防や早期発見ができます。
取引先のコンプライアンスチェックを怠ると、法令違反や行政処分歴のある取引先と関わってしまうかもしれません。
さらには反社会的勢力と関係してしまうと、そのことが自社の暴排条例違反行為ともなってしまい、刑事罰や行政処分を招くおそれがあります。
人材採用や取引先選定でのチェックの不備によるコンプライアンス違反は、チェック体制を整備して防がなければなりません。
⑦従業員個人のモラル
上司から一般社員まで、従業員のコンプライアンス意識の不足による違反の事例も後を絶ちません。
ハラスメントや個人的犯罪、事業活動外での社会的非難を受ける行為などがこれにあたります。
従業員の個人的な法令違反であっても、業務時間外の事案であっても、時には企業自体の信用問題となり、SNSなどで拡散、炎上し風評がいつまでも残るリスクがあります。
企業にとって法令遵守が重要な理由
企業にとって法令遵守が重要な理由には、以下の3点があげられます。
- 法令違反による処罰
法令違反をしてしまうと、罰金や懲役などの処罰が科せられる可能性があります。行政処分に関しては、事例によって大小さまざまですが、最悪の場合、営業停止や許認可の取消にもなりかねません。
- 企業イメージの低下
処罰が科せられるだけでなく、法令違反によって企業の信頼が失われてしまい、イメージの低下を招いてしまうでしょう。
企業イメージの低下によって商品やサービスが売れなくなり、経営を立て直すことが困難になることも考えられます。
- 信用毀損による業績・財務への影響
こうした理由から、企業が法令違反をしてしまうと企業活動が正常にできず倒産の危険もあるといえるでしょう。
6. 法令遵守のためのコンプライアンス対策は?
企業が法令遵守する体制を整えるためには、次の対策が必要です。
①内部統制体制の整備
取締役会、社外取締役など経営陣が率先して法令遵守するための意識を高め、担当取締役などを置き、社内の報告体制を確立することです。
コンプライアンス担当社や、ツールやアウトソーシングも活用したチェック体制、法務部署などの体制も整備する必要があるでしょう。
②社内規定・マニュアル・契約書等の整備
就業規則などの社内規定や、企業のコンプライアンスマニュアルを整備し、契約書類、チェックシステムを整備することが有効です。
事例でも解説した介護業界でも、不祥事を受けて法令遵守マニュアルを各事業所で整備する動きが広がりました。
介護業界の法令遵守マニュアルには、介護保険法などの法令遵守に関するルールのほか、事業所の運営方針や、従業員の行動に関するルールも含まれます。
事故や苦情への対応マニュアルなど、介護事業者の構成員全員の遵法意識を高め、効果を上げている事例もあります。
③法令周知・研修の実施
社内研修やマニュアルの整備で、法令を従業員全員に周知させることは重要です。
事業活動の現場でのマニュアル等により、法令遵守の知識を徹底させ、具体的な業務手順に落とし込むことが必要です。
何も難しい法律の勉強をするような内容ではなく、実際の業務に照らして、取引先選定や契約の際の注意事項、業務遂行の手順、問題が発生した時の連絡体制など、従業員にわかりやすい周知方法をするのがよいでしょう。
介護業界のコンプライアンス研修では、介護保険法や労働基準法についての研修のほか、具体的な業務手順、介護報酬の手続きなど、従業員が正しい知識を身につけられる内容で実施されています。
④相談窓口・内部通報窓口の設置
社員からの相談を受け付ける、不正を発見した時の内部通報窓口を、社内に設置することが必要です。
また業界独自の相談窓口や、公益通報制度の利用について、周知させることも大切です。
建設業界では、建設業法の違反通報窓口「駆け込みホットライン」を設け、違法の疑いがある通報を受け付け、必要であれば立入検査、監督処分等の対応ができるよう活用されています。
⑤コンプライアンスチェックの導入
実際に法令遵守が行われているか、法令違反、コンプライアンス違反がないかどうかは、チェックすることにより発見でき、早期に芽を摘み、対策することができます。
コンプライアンスチェックは、クラウドで利用できるツールの導入がおすすめです。
法令違反、行政処分などの発見のほか、インターネットや特にSNSでの風評など、日常的、継続的に発見すべきコンプライアンス違反を発見するには、ツールの導入は欠かせません。
7 コンプライアンスチェックで法令違反を発見する方法
取引先、従業員、関係者の法令違反の発見には、『RoboRoboコンプライアンスチェック』の導入がおすすめです
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取引先や従業員を一括登録して、新聞記事とインターネットを同時に、自動的にチェックすることができます。
コンプライアンスチェックとは?ツールでできること
コンプライアンスチェックは、法令違反をはじめ、行政処分歴、取引先などの企業や個人についてのネガティブな情報を、検索により収集し、チェックするものです。
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アウトソーシングの活用
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までができます。
調査の効率化と品質向上をすべての規模の企業で実現でき、法令遵守体制を簡単に構築できるでしょう。
コンプライアンスチェック、反社チェック結果をもとに、最終的な取引判断や、人材採用の判断が行えます。
必要であれば、取引判断を行うための法的アドバイスを実施する弁護士事務所の紹介も可能です。
8 まとめ
企業が法令遵守を適切に行うには、体制の整備、法令周知、ツール導入、アウトソーシングの活用を行って対策することが必要であることを解説しました。
企業としてコンプライアンス対策をするためには、法令遵守だけでは不足です。
人として企業として社会通念上、適切な倫理観にもとづいた行動が求められています。
また、取引先や従業員が、法令を遵守しているかのチェックもしなければなりません。
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新聞記事も同時検索でき、検索結果が残るため、管理ツールとして機能し、他社よりも価格が安いことが魅力です。
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9 Q&A
- Q1 法令遵守の内容、種類は?
- Q2 法令遵守とコンプライアンスとの違いは?
- Q3 最近の法令違反事例の特徴は?
- Q4 法令遵守のための対策は?
- Q5 コンプライアンスチェックツールで何ができる?
- Q6 業務代行サービスで何ができる?
法令遵守についての疑問点をQ&Aにまとめました。
Q1 法令遵守の内容、種類は?
本来の意味での法令遵守は、法律・政令・省令・規則、条例などの法令を守ることです。
企業活動での法令遵守には、行政による命令・通達、行政指導や、慣習法・判例法で確立された法規範、就業規則・契約などの私人間での約束を守ることも含まれます。
遵守すべき法令には、民事法、刑事法、行政法、国際法などの分類があります。
企業のほか、そこで働く従業員も、法令遵守し、さらには広い意味でのコンプライアンス意識を高めることが重要です。
Q2 法令遵守とコンプライアンスとの違いは?
コンプライアンスには、法律遵守の意味だけではなく、社会規範、社会道徳や、企業が守るべき倫理観といった企業としての正しい価値観を守ることも含まれます。
企業倫理・社会規範は、企業も社会の一員であり社会的責任を果たすべきとの考えから、今日では重要となり、消費者や社会一般の声にも耳を傾け、コーポレートガバナンスを確立し、国際機関などの規範も含めた広い意味での企業倫理、社会規範を遵守することも、企業のコンプライアンスであるという認識が定着しています。
Q3 最近の法令違反事例の特徴は?
法令違反の近年の傾向としては、感染症や物価高、人材不足などを背景に、経営上の課題から、長時間労働や残業代の不払い、下請けに対する不当な値下げ要求、不正受給などの事例が多く見られた傾向があります。
SNSでの企業不祥事の拡散や、従業員による不適切な書き込みでの炎上や、ネットセキュリティ・情報管理の甘さによる情報流出も問題となっています。
Q4 法令遵守のための対策は?
法令遵守のため、企業が行うべき対策には次のようなものがあります。
- 内部統制体制の整備
- 社内規定・マニュアル・契約書等の整備
- 法令周知・研修の実施
- 相談窓口・内部通報窓口の設置
- コンプライアンスチェックの導入
- アウトソーシングの活用
『RoboRoboコンプライアンスチェック』の導入、『反社チェック業務代行サービス』の活用で、法令遵守体制の構築がどの規模の企業でも可能になりました。
Q5 コンプライアンスチェックツールで何ができる?
『RoboRoboコンプライアンスチェック』はクラウドで手軽に利用できる安価なチェックツールです。
- チェック対象社・者の一括登録
- 新聞記事やインターネットの自動検索
- SNSも含む検索結果は自動保管
- しかも3段階のアラートで疑わしい情報を抽出
これらの業務が自動的にできるため、業務を飛躍的に効率化でき、人員を有効に活用することが可能になります。
Q6 業務代行サービスで何ができる?
『反社チェック業務代行サービス』は、ツールを使ったチェックに加え、アウトソーシングで精度の高いコンプライアンスチェックを、丸ごとアウトソーシングできるサービスです。
- ロボットによる網羅的な情報収集(インターネット記事・新聞記事・官報・SNS等)
- AIと専門スタッフによるリスク情報の精査
- 証跡の保存・レポート作成
チェック結果をもとに、最終的な取引判断や、人材採用の判断ができるので安心です。