昨今、国や自治体、警察による反社取締りが強化されています。
暴力団対策法(暴対法)、暴力団排除条例(暴排条例)、その他の法律によって反社勢力との関係遮断が強く求められています。
企業にも社会的責任があるとされていますが、法律では、企業の責任や義務がどう決められているか、ご存じでしょうか?
反社に関する法律として真っ先に挙がるのが暴対法。
それ以外にも組織犯罪や犯罪収益の移転を禁止する法律、さらに各業界を規制する法律で、反社の排除が規定されています。
契約の条項や、法令に従った対策や、企業のチェック体制の整備はどうしたらいいのでしょう?
一見すると分かりづらい各分野の法律、主要な規定やその意味を、この記事ではわかりやすく解説!
法律に準拠して効果的、効率的に対策を行い、いざというときに対応できる反社チェック方法についても説明します。
目次
反社会的勢力は法律でどう規制されている?
反社会的勢力の取締り強化は、暴対法に始まり、2007年には政府の犯罪対策閣僚会議によって、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(参照:法務省)が公表されました。
これを受けて、全国の都道府県や市町村では、暴力団排除条例(暴排条例)が制定、施行され、業界を規制する各法律の多くにも反社勢力を排除する規定が盛り込まれています。
暴力団対策法をわかりやすく解説
暴対法は、反社会的勢力を規制するための基本法です。
⑴成立の背景
バブル崩壊後に暴力団をはじめとする反社会的勢力が、金融や土地取引など経済事件に関与する事例や、民事に介入する事案が目立ったことから、対策を求める声が高まりました。
1992年に暴対法が施行され、2008年には組織のトップの責任を規定。
⑵暴対法の構成
暴対法は、総則から罰則までの8章と附則により構成され、次のような内容が決められています。
- 暴力的要求行為の禁止
- 不当な要求による被害の回復等のための援助
- 対立抗争時の事務所の使用制限
- 加入の強要の規制
- 特定危険指定暴力団等の指定
- 指定暴力団の代表者等の損害賠償責任
- 国・地方公共団体・事業者の責務
- 不当な行為防止のための民間活動の促進
全国暴力追放運動推進センター(全国暴追センター)、各都道府県に設置された暴追センターは、この法律によって定められたものです。
暴追センターは、反社会的勢力の被害から守るための駆け込み寺。
相談や照会、被害者への支援や、反社勢力から離脱した人の就職相談などを行っています。
⑶禁止される行為の一覧
暴対法の第9条では、暴力的要求行為として次の27の類型の行為を禁止し、罰則を設けています。
口止め料の要求 |
事実を宣伝・公表しないことの対価として金品等を要求すること |
寄付金等の要求 | 寄付金、賛助金、その他の名目で金品等を要求すること |
下請け参入の要求 | 資材や物品の納入やサービスの提供を要求すること |
みかじめ料の要求 | 縄張り内の営業者に対し金品等を要求すること |
用心棒料等の要求 | 縄張り内の営業者に対し物品購入や用心棒料などを要求すること |
違法金利での請求 | 利息制限法違反の高金利での債務の支払いを要求すること |
不当な取り立て | 粗野、乱暴、迷惑な方法で債務の取り立てをすること |
借金免除の要求 | 債務の一部または全部の免除、猶予をみだりに要求すること |
不当貸付の要求 | 金銭貸付業以外の者に貸付や手形割引を不当に要求すること |
金融取引の要求 | 金融取引業者に対し不当な条件で取引を要求すること |
株式買取の要求 | 会社や取締役に対し会社の株式買い取りを不当に要求すること |
預金受入の要求 | 金融機関に対し預金・貯金の受け入れを不当に要求すること |
不当な地上げ行為 | 土地・建物の占拠など不当な方法により金品等を要求すること |
土地売買等の要求1 | 宅建業者に対し土地建物の売買・交換・賃借を不当に要求すること |
土地売買等の要求2 | 宅建業者以外に土地建物の売買・交換・貸借を不当に要求すること |
工事の不当要求 | 建設業者に対し不当に建設工事を行うよう要求すること |
施設利用の要求 | 集会施設など不特定多数が利用する施設使用を不当に要求すること |
示談への介入 | 交通事故などの示談に介入し金品等を要求すること |
金品等の不当要求 | 損害賠償その他の名目で因縁をつけて金品を不当に要求すること |
許認可等の要求 | 不当に許認可を要求し、不利益処分をしない要求をすること |
不認可等の要求 | 許認可しないこと、不利益処分をすることを不当に要求すること |
入札参加の要求 | 資格がないのに・国や自治体等の入札への参加を要求すること |
入札妨害の要求 | 国や自治体等の入札に特定のものが参加させない要求をすること |
他人の入札に介入 | 他人の入札参加妨害や、入札価格・条件について要求すること |
契約への不当介入1 | 国や自治体などに対し、売買等の契約を要求をすること |
契約への不当介入2 | 国や自治体などに対し、他人を契約から排除する要求をすること |
契約への不当介入3 | 国や自治体などと他人との契約に、不当に参入を要求すること |
金融取引、売買契約、入札などの経済活動に、反社勢力が巧妙に入り込む事案が多いことがうかがえます。
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⑷国・地方公共団体の責務
暴対法では、反社会的勢力を国・地方公共団体の入札に参加させないこと、不当な行為を防止、不当な影響の排除について規定しています。
また、事業者や国民、民間団体が自発的に行う反社活動を促進するため、情報の提供、助言、指導や、事業者の安全確保に配慮することを義務づけています。
⑸事業者の責務
事業者は、不当要求による被害の防止のため、事業活動を通じて暴力団員に利益供与をしないよう努めると規定しています。
暴対法では努力義務ですが、暴排条例では、事業者が反社勢力に利益供与することに対しては、罰則があります。
反社排除は企業にとって信用問題です。
大企業、上場企業ではリスク管理の観点から、反社排除のためのチェックなど、コンプライアンス体制を整備しています。
とはいえ、反社チェックを取引先や従業員すべてについて行うのは、手間も費用もかかります。
中小・ベンチャー企業では、専任の部署を設けるのは難しいことでしょう。
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組織犯罪処罰法のまとめ
組織犯罪処罰法は2000年に施行され、2017年に施行された改正法ではテロ等準備罪が加えられました。
⑴組織犯罪処罰法の構成
総則から雑則までの7章と附則により構成され、次のような規定があります。
- 組織的に行われた刑法犯の処罰
- 犯罪による収益の隠匿・収受行為の処罰
- 犯罪収益による法人等の事業経営の支配行為の処罰
- 組織犯罪による収益の没収
- 犯罪収益没収のための保税・追徴手続
出典:組織犯罪処罰法
犯罪の組織化、大規模化や、マネーロンダリングの国際化などを背景に、「国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約」に合わせて制定されました。
⑵組織犯罪とは
組織犯罪は、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われた一定の警報犯罪のことです。
団体とは、その目的または行為が組織的に反復して行われる多数人の継続的結合体です。
組織的に詐欺行為を行う法人などは、組織犯罪を行っているといえます。
⑶犯罪収益とは
犯罪収益は、財産上の不正な利益を得る目的で行った一定の犯罪行為により得た財産、犯罪行為の報酬として得た財産などのこと。
組織犯罪より範囲が広く、懲役・禁固4年以上の刑となる犯罪が含まれます。
企業にとっては、組織犯罪など関係ないと思うかもしれません。
ただし、懲役や禁固が4年以上で、一般の企業が巻き込まれても不思議ではない犯罪として、たとえば次のようなものがあります。
- 公正証書原本不実記載罪
- 有印私文書偽造罪収賄罪
- 金融商品取引法違反(相場操縦)
- 独占禁止法違反(不当な取引制限等)
- 出資法違反(違法貸付)
まさか、自分の会社でそんな犯罪は行わないという企業がほとんどです。
読者の皆さんの職場はそうでしょう。
ただし、注意すべき点もあります。
⑷犯罪収益に対し見て見ぬふりをすると?
取引先が犯罪に関わっているのを会社ぐるみで黙認し、犯罪収益の隠匿への協力や、謝礼などの受け取りをしてしまうと、組織犯罪処罰法違反となる可能性があります!
犯罪収益等の隠匿は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
犯罪収益等の収受は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
ただし、法令上の義務の履行として提供された場合や、契約時には犯罪収益から債務が履行されると知らなかった場合には、罪にはなりません。
取引先の反社チェックがいかに重要か、おわかりでしょう。
取引先の挙動や、取引記録を怪しいと感じたら、ツールを使ったスクリーニングと、重点的な調査が必要です。
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⑸金融業界や不動産業界は特に注意!
特に注意が必要なのは、金融業界や不動産業界。
犯罪収益を預金したり、株式などの投資商品の購入に充てたりすることがあるかもしれません。
不動産の購入資金についても同様です。
この場合、資金の出所が犯罪収益であると疑いを持ったら、直ちに反社チェックを重点的に行わなければなりません。
うすうす気づいても、見て見ぬふりしてはいけないのも当然!
こうなる前に、すべての取引先・従業員などの関係者について、定期的、継続的に反社チェックを行う必要があります。
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結果はAI判定で反社アラートにより判別可能です。
犯罪収益移転防止法のまとめ
2007年に一部施行され、翌年に全面施行されたのが、犯罪収益移転防止法です。
振り込め詐欺などの、多様な組織実態をもつ反社会勢力による犯罪が増加するなか、マネーロンダリング防止を目的として制定されました。
⑴犯罪収益移転防止法の構成
総則から罰則までの6章と附則により構成され、次のような内容が決められています。
- 特定事業者による確認などの措置
- 疑わしい取引に関する通知・届出などの情報の提供
- 特定事業者の監督
出典:犯罪収益移転防止法
⑵特定事業者とは
特定事業者には、金融機関、クレジットカード会社、宅建業者、電話代行会社、司法書士、税理士、弁護士などが含まれます。
特定事業者は、日弁連の自主的取り組みをする弁護士を除き、この法律にしたがって、取引時に本人確認をしたり、取引目的などを確認したりしなければなりません。
⑶犯罪収益の移転チェック
疑いのある取引は、届け出や、捜査機関への情報提供などをする必要があります。
捜査の結果、犯罪収益と判明した金品等は、組織犯罪防止法によって、没収などの措置がとられます。
振り込め詐欺などの被害者救済のため、「振り込め詐欺救済法」(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)があります。
金融機関による口座凍結や、被害者への分配手続きが規定され、口座凍結リストの公開も行われています。
各業界を規制する法律も
反社会的勢力に関する法律には、前述した基本法と、各都道府県の暴排条例があります。
他の法律では、特定業界の営業の自由を公共の福祉のために規制、制限する個別の法律のなかに、反社会的勢力についての規定があります。
各業界を規制し、許認可などの資格や、免許取得、立入検査などの手続き、罰則を定めるもので、業法といわれるものです。
反社会的勢力は、各業法によって、許認可の欠格事由に規定され、違反すると罰則や行政指導などがあります。
このため、反社の取り組みを各業界でも独自に行っています。
法律・条例での企業の責任は?
反社会的勢力の排除は、いまや企業の責務であり、社会の要請です。
反社勢力との関係遮断は、企業防衛のためのリスク管理の観点からも、避けて通れません。
国の指針と法律の関係は?
国の指針(法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」)では、企業が利益供与することの禁止、反社勢力との関係遮断を求めています。
ただし、国の指針は法律ではありません。
行政庁の運用基準・行動指針は、義務づけや罰則の根拠法令ではありません。
法令の種類を簡単にまとめ
法律は、国会で議決により成立する、強制力のある規範です。
法律には種類があり、行政組織や手続きを定める公法や、私人間の権利義務などを定める私法があります。
私人の権利義務や手続を決めた民事法、刑罰や手続を規定する刑事法、行政手続や行政処分を定める行政法があります。
禁止される行為などの内容を規定する法律は実体法、罰則などの手続きを規定する法律は手続法ともいいます。
法令の「令」は、政令、施行令、省令などのことで、政府などの行政が定めます。
法律の根拠条文に基づき、細目や詳細は政令で定めるといった役割があります。
暴排条例などの条例の効力は?
暴排条例などの条例は、地方自治法に基づき地方議会で制定されます。
その地域で法律と同等の効果をもつ、いわば地方版の法律です。
暴排条例には、地方公共団体・事業者の責務、利益供与の禁止、罰則などの実体法および 、勧告・命令などの手続法の側面があります。
反社への利益供与を企業が行い、命令などにも従わないと、最悪の場合には懲役や罰金もあります。
判例にも間接的な法的効果!
裁判所の判決が判例として定着し、一定の判断基準としての役割をもつことがあります。
判例は法律ではありません。
しかし法律の解釈基準として、間接的に一定の法的効果があることも。
反社会的勢力についての判例は、末尾のQ&Aでご紹介します。
暴排条例で企業の責任は?
全国の都道府県や市町村で制定されているのが、暴排条例です。
暴力団関係者の行為を規制するとともに、企業など事業者の責務についても規定しています。
事業者の義務として、反社でないことの誓約書、契約解除などの反社条項を入れる必要があり、企業の間にも普及しています。
⑴反社勢力とは
暴力団関係者には、密接に関わる者、関与や交際をしている者などが広く含まれます。
近年、反社勢力の活動実態は、巧妙に経済活動を装い、一般の民間企業や民間人に取り入るなどしています。
企業が反社排除をするためには、さまざまな属性の反社の類型や、反社会的行為をする者を広く定義して、取引契約や雇用契約に盛り込むことが必要!
一般人である関係者が反社会的行為をした結果、企業の信用が棄損し、取引や業績に甚大なリスクをもたらすケースも後を絶ちません。
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⑵事業者の義務・利益供与の禁止
反社との関与を規制する暴排条例では、事業者の義務として、暴力団員や協力者などの規制対象者に対し、利益供与をしてはならないとしています。
利益供与とは、暴力的不法行為の対価としての供与や、事業を通じて反社勢力の活動を助長し、運営に資する行為です。
金品には限りません。
違反すると、勧告、公表、さらに従わない場合の命令や、罰金・懲役を含む罰則があります。
⑶利益供与禁止の例外は?
利益供与にも、例外規定があります。
反社勢力の個人にも、憲法の生存権は認められ、住居や水道・ガス・電気・食料品などの日常生活での取引までは規制できません。
事情を知らないでした契約によって、事業者が利益供与した場合にも罰則はありません。
しかし、知らずに取引先や、従業員、役員などに反社が紛れ込む可能性に注意!
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⑷事業者の義務・反社でないことの確約
条例で、反社を助長し、利益供与となる疑いがあるときに、契約相手や代理人などが暴力団関係者でないことを確認する、事業者の努力義務があります。
企業が反社との関係を絶つには、誓約書を、すべての取引先、従業員、役員、その他の提携先や関係者からもらうことが望まれます。
誓約書の内容には、少なくとも下記の内容が必要です。
- 自分が反社でないことの確約
- 将来にわたり、自分が反社に関係しないことの確約
- 反社会的行為を行わないことの確約
違反したときは、契約解除に異存がないこと、損害が生じたときは自分に賠償責任があることも、契約書だけでなく、誓約書に盛り込めれば理想的です。
⑸事業者の義務・反社条項(暴排条項)
条例で、取引先が反社であると判明したら、催告なしに契約を解除できると契約書で規定する、事業者の努力義務があります。
損害賠償責任や、違約金条項、原状回復義務、契約解除後の秘密保持義務、競業禁止義務なども、契約書に盛り込めれば理想的です。
反社条項の法律上の意味は、後ほど詳しく解説します。
⑹反社条項は、反社チェックツールの導入で対策を!
契約書はいざというときのリスクを予防するためのもの。
実際に誓約書違反、契約違反があるかどうかは、取引先や関係者のチェックをしなければわかりません。
しかし取引先や従業員すべてを、調査会社に依頼していては、コストがかかりすぎてしまいます。
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一定品質のチェックを継続的に行うことで、実際に契約が守られているかどうかを判断でき、誓約書・契約書とともに、自社が責務を果たしている証明となるでしょう。
反社対策の契約書、誓約書、覚書の法的意味
契約書は、私人どうし、または公私の間で交わされる文書です。
誓約書や覚書も一種の契約書といえるでしょう。
契約書の条文は、反社でないことの確約、契約解除のための反社条項、損害賠償条項など、いざというときに企業を守る盾となり、武器にもなるものです。
契約自由の原則に基づき定めるのが契約書
契約自由の原則により、公序良俗など法令に違反しない限り、当事者間で契約内容は自由に決めることができます。
契約の一部に法令違反があるときは、その部分に限り無効となることがあります。
たとえば、利息制限法の上限金利を超える金利などがあるでしょう。
法律の適用範囲・内容が契約で具体的に明確化されることも
契約で取り決めた条項は、直接の法的規範・根拠となるわけではありません。
ただし法律の内容が契約で具体化される場合には、その内容に限って裁判にも耐えられる法的根拠となるものです。
詳しくは以下でご説明します。
法律にある債権・債務とは?
たとえば民法では、債権、債務といった決まりがあります。
債権は、約束を守り履行してもらう権利です。
債務は逆に、約束を守り履行する義務のこと。
「金銭を支払う約束」のような、借金や売掛金に限った話ではないのです。
この場合、民法の「債務」の内容は、契約書で具体的に取り決めることができるのです。
民法の「解除」の条件も、「債務」の内容を契約書で決めておけば具体化でき、裁判でも有効です。
法律に即した条項が、反社から企業を守る!
債務を履行しないと、契約解除できるという民法の条文があります(民法第541条)。
ただし軽微な場合の例外があります。
債務不履行に対しては、相手方に対し損害賠償できる民法の条文があります(民法第423条)。
反社でないことの誓約書、反社条項を含む契約書が重要なのは、条文化しておくことによる法的効果があるからです。
争いを未然に防ぎ、裁判でも勝てるようにしておくのです。
企業の反社対策に必要な契約条項のまとめ
契約条項は、リスク管理を万全にするため、弁護士に相談し作成することが必要です。
誓約書、定型的な契約書、約款などは、取引先用、フリーランス用、従業員用、役員用、関係者用など、相手や用途によって、あらかじめ用意しておくことができます。
⑴反社でないことの誓約の法的意義
自分が反社でないこと、反社との関係がないことの誓約は、その時点での事実の表明です。
しかし将来にわたり反社に関係しない、反社会的行為をしないことは、将来まで有効な約束(債務)です。
取引先や従業員が誓約書に違反したときは、債務不履行を理由として契約解除できる法的効果があります(民法第541条)。
さらに誓約書違反により、債務不履行による損害賠償請求ができる効果もあるのです(民法第423条)。
誓約書のほか、取引や雇用、役員への委任、準委任などの個別の契約書にも、同様の規定があるとよいでしょう。
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⑵誓約書をもらわない場合の法的リスク
将来にわたる誓約書の約束がないと、債務不履行を理由としては、契約解除、損害賠償請求が認められない可能性があります。
契約書の反社条項とは別に、入れておくべき条文です。
⑶反社チェックをしない場合の法的リスク
反社チェックを怠ると、会社や役員が、善管注意義務違反(民法第400条、第644条など)となる可能性も。
取締役の善管注意義務違反により、会社が損失を出せば、会社からの賠償請求や、株主代表訴訟を提起されるかもしれません。
善管注意義務違反により、行政指導、行政処分となる場合もあります。
不正な金融取引を見逃したときの金融商品取引法での業務改善命令など、行政処分はさまざまな法律で決められています。
⑷催告なしに契約解除できる反社条項の法的意義
反社であると判明したら、催告なしに解除できる反社条項は、契約書に必要な条文です。
誓約書にも同様の規定があるとよいでしょう。
債務不履行による契約解除(民法第541条)では、「相当の期間を定めてその履行の催告」をし、それでも履行がないときに、ようやく解除できます。
「取引上の社会通念に照らして軽微」な場合に、解除できるかはわかりません。
催告なしに直ちに契約解除できるのが、反社条項の法的効果です。
⑸反社条項を入れない場合の法的リスク
反社条項がなければ、民法の規定によって契約解除を求めることになります。
ただ、債務不履行による解除ができるかは、そのときの状況次第です。
それ以外でも民法には、錯誤により交わした意思表示は、取り消せるという条文(民法第95条)もあります。
しかし重大な過失が原因で反社とは気づかなかった場合などに、契約取消が認められない可能性もあります。
実際に判例もあります。
⑹損害賠償・違約金条項
取引先が反社であるとわかったら、企業はさまざまな損害を被るかもしれません。
- 事業の取引中断による損害
- 顧客からの賠償請求
- 顧客や社会からの信用を失ったことにより生じる損害
- 行政処分による入札参加停止、取引停止など
- 金銭的な直接の損害以外の信用リスク
刑法や業法(特定の業種の営業の自由を制限する内容の法律)などの法律や、暴排条例に違反した場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)ができます。
債務不履行による損害賠償請求(民法423条)も可能です。
ただ、不法行為かどうか、債務不履行かどうかの争いに、時間がかかるかもしれません。
契約解除なら即、損害賠償請求ができる条項は、こうした場合にも有効です。
原状回復義務や、違約金条項など、さまざまなケースを想定して多様な規定を設定しておくことが大切です。
契約書テンプレートの注意点
契約書としては、たとえば暴追センターが公開しているモデル書式があります。
ほかにも定型的なひな形が出回っています。
⑴モデル書式やテンプレートを過信しないこと
契約書は、ひな形がそのまま使えるとは限りません。
自社の業界や業務内容、テレワーク利用などの業務実態に合わせ、必要事項をもれなく入れることが大切です。
次に紹介する例文は、いずれも、モデル書式そのままでは対応できない条項です。
⑵業界特有の条項が必要かどうか?
不動産業界では、重要事項説明書などに反社条項を入れるでしょう。
金融業界、通信業界などでは、細かく定型的な約款があります。
行政庁が所管する業界では、自社の属する業界での処分歴や、過去の法令違反についての誓約を求める必要があるかもしれません。
業界団体への加入の拒絶、除名を受けても異議を申し立てないなどの条項が必要なケースもあります。
⑶法律の例外規定に該当しても対応できるかどうか?
反社勢力の個人に対しても、日常生活での取引までは規制できません。
ただ、知らずに取引先や、従業員、役員などに反社が紛れ込むことはリスクです。
現在は反社から離脱しているが、密接な関係を絶ったかどうか判断するため、5年経過条項を入れることも多いでしょう。
法令上は違反ではなくても、企業のリスク管理には、できる限り広く規定を条文化することが大切。
その条文を活用する機会がなかったとしても、弊害はありません。
⑷契約書は法律事務所に相談すること
反社対策には、企業内弁護士や、顧問弁護士のほか、外部の法律事務所の弁護士への依頼も検討しましょう。
契約書も弁護士に相談して整備したら、実際に履行されているか確認するため、反社チェック体制も同時に導入することが必要です。
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中小企業でも運用でき、株式上場を目指すベンチャー企業には必須です。
各業界の法律での反社の取り扱いと、業界独自の取り組み
各業界での許認可や規制、監督や様々な手続きを定める業法といわれる法律は、数えきれないほどあります。
これらの法律にも、反社であることを理由とした欠格事由など、関係条文があります。
そのため、自社の関係法令を知ることが大切です。
業界独自での反社の取り組みも行われています。
建設業法
建設業法は、建設工事の請負契約の適正化、発注者の保護などを目的とする法律です。
建設業の許可のほか、契約での不当に低い請負や、一括下請けの禁止などを規定し、これらに違反することはコンプライアンス違反です。
反社会的勢力の欠格事由では、国土交通大臣・都道府県知事は、反社に該当するなどの要件違反に対し、一般建設業、特定建設業の許可をしてはならないとしています(第8条、第15条)。
違反すると、建設業の許可は取り消されます(第29条)。
建設業界の取り組み
建設業界では、反社の取り組みとして、日本建設業連合会が、企業行動規範を定め、暴力団排除条項に関する参考例(ひな型)を公開しています。
宅地建物取引業法
宅地建物取引業法では、不動産業に免許制度を設け、必要な規制を行うことにより、宅地建物取引業の健全な発達を促進するための法律です。
宅地建物取引業の免許のほか、取引業者の名簿の備え付け、宅地建物取引士の資格試験などを規定しています。
反社会的勢力の欠格事由では、国土交通大臣・都道府県知事は、反社に該当するなどの違反に対し、宅地建物取引業の許可を受けられないとしています(第5条)。
違反すると、許可は取消となります(第66条)。
不動産業界の取り組み
不動産業界では、反社の取り組みとして、反社会的勢力排除のためのモデル条項や、反社データベースを業界団体会員に公開しています。
全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産流通経営協会、日本住宅建設産業協会や、不動産協会では、売買契約、媒介契約編、賃貸借契約などのモデル条項を用意しています。
各地の宅地建物取引業協会や、全日本不動産協会が、反社会的勢力データベースを提供し、照会や相談に対応しています。
貸金業法
貸金業法は、貸金業者の登録制度を設け、必要な規制を行うとともに、貸金業者団体を認可し、指定信用情報機関の制度を設け、貸金業者の適正運営を図るための法律です。
貸金業法では、反社会的勢力などの欠格事由に該当するときは、内閣総理大臣・都道府県知事は、貸金業の登録を拒否しなければなりません(第6条)。
銀行業界の取り組み
金融業界では、反社の取り組みとして、金融庁の監督指針により銀行業などの監督を行っています。
業界全体で反社勢力の排除に取り組んでおり、信用金庫・JAなども独自に取り組みをしています。
全国銀行協会では、約款などの反社条項の参考例を公表し、反社データベースによる照会のほか、組織犯罪処罰法、犯罪収益移転防止法によるマネーロンダリング対策に協力しています。
証券業界の取り組み
証券業界や保険業界でも、反社の取り組みを行っています。
日本証券業協会では、反社情報提供システムでの照会を行うほか、加盟する各証券会社での約款の反社規定や、相場操縦などの不正な証券取引のチェックを実施。
証券取引所の上場規定では、株式の新規上場や第三者割当増資などの際に、取締役などの関係者、大株主、株式の割り当てを受ける者の反社チェック、確認書の提出を義務づけています。
その他の業界の法律のまとめ
廃棄物処理法は、産業廃棄物処理業の登録をすることで、処理業者を規制するとともに、業界の適正化を図る法律です。
反社勢力に該当するなどの違反があれば、都道府県知事は該当事業者を産業廃棄物処理業に登録することができません(第14条)。
労働者派遣法でも、派遣業者の許可制度を設けています。
反社などの違反があれば、厚生労働大臣から労働者派遣業の許可は下りません(第6条)。
- 通関業法
- 貨物自動車運送事業法
- 探偵業法
- 不動産特定共同事業法
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
- その他の法律
数多くの他の法律にも、類似の反社条項があります。
RoboRoboコンプライアンスチェックは、新聞記事、インターネット、SNS検索により、行政処分、業界の反社事案などを、ロボットに自動検索してもらうことも可能です。
法律に違反した場合の企業の反社リスク
反社にかかわる様々な法令に、企業が違反した場合には、企業の経営を左右するかもしれません。
法的リスクは、企業の信用棄損、業績悪化にもつながる重大なリスクです。
刑事罰
刑法や、業法(各業界の規制法)などの法律のほか、暴対条例に、利益供与などに対する刑事罰があります。
会社に対する罰金や、取締役・違反した従業員など個人に対する懲役、禁固、罰金などの刑罰があります。
行政罰・行政指導
行政の法律や条例に違反すれば、営業許可はく奪などの行政罰、入札停止、指名停止などの措置を受けるリスクがあります。
勧告、公表などの行政指導、立入検査を受ける場合もあるでしょう。
民事の紛争
反社を理由とした契約解除により、事業に関わる別の取引先や関係者から、損害賠償請求などを受けるかもしれません。
企業の信用失墜を原因として、取引相手からの契約解除や、損害賠償請求、現状回復請求などを受ける可能性もあるでしょう。
取締役や、反社行為をした従業員など個人に対し、同様の請求が行われるリスクもあります。
法律・条例を遵守する反社チェック体制を
反社の法的リスクを避けるためには、コンプライアンス体制の整備が必要です!
取引先名簿、従業員名簿などでの管理および反社チェックは必須の取り組みです。
反社チェックは自動化ツールを導入し、チェック結果も誓約書、契約書と合わせて管理・保管することが必要です。
取引の契約時、業務提携時、入社・就任時、契約更新時にはもちろん、定期的チェックを継続して行いましょう。
反社チェックに必要な自動化ツールがおすすめ!
業務効率化のためにもチェックは自動化、RoboRoboコンプライアンスチェックなら、反社の疑いをAIで3段階の自動判定、疑いある場合の追加調査も業務代行で依頼でき、安心!
一定水準のチェックを行った記録や、調査結果の証跡保管ができるので、裁判にも耐えられる証拠能力を確保し、善管注意義務違反も予防できます。
いざというときに企業がとれる法律上の対応
これまでに解説した、誓約書や、反社条項のある契約書と、反社チェックツールの導入は、法的対応のための大前提です!
法律違反、契約違反には、契約解除で対応を
反社の疑いが生じたら、法律事務所の弁護士に直ちに相談しましょう。
重点調査を行い、解除するときは契約相手に対し、内容証明郵便・配達証明付での契約解除通知を送付します。
法務部やコンプライアンス部、業務担当者レベルだけで動くことは厳禁です。
トラブルに備え、暴追センターや警察にも相談しておくことも忘れずに!
従業員や役員、自社の関係者による違反では、退職、辞任の通知を送付します。
契約条項での、損害賠償・違約金などの確認
契約書の条項を確認し、損害賠償請求、違約金の請求などのため、書類・データなどの証拠を収集、保管します。
民事訴訟のほか、告訴などの刑事手続きが必要になることもあるでしょう。
弁護士らとともに慎重に進めます。
取引解除や退職・辞任に伴う対応
しかし、まともな交渉ができそうもなければ、無理に試みるのは禁物!
弁護士や警察、暴追センターを通さない交渉はしてはいけません。
取引先との契約解除により事業が中断・中止となる場合には、関係者間で事後処理を行う必要があります。
民事の場合・刑事の場合
民事訴訟など、民事の手続の窓口は裁判所となります。
手続の代理人は弁護士に相談・依頼します。
反社に関わる事案では、社内弁護士だけでなく、顧問弁護士のほか、外部の法律事務所への依頼も検討しましょう。
刑事事件は、相談・手続の窓口が管轄する警察署です。
弁護士に相談のうえ、法的証拠の収集、保管を行い、方針を立てましょう。
行政事件の予防策は?
反社に関わってしまったことにより、行政法の手続が必要になる可能性も。
許認可の欠格事由に抵触したり、行政指導、勧告などの対象となる事案もあります。
反社とは知らなかったなど、過失や、善管注意義務に違反していないことが証明できれば、処分を免れる可能性もあるでしょう。
善管注意義務・証拠保管対策には、RoboRobo!
善管注意義務を尽くしてきたことを証明できれば、損害賠償請求されても、責任が軽減されるかもしれません。
チェック結果の証跡の保管、業務代行での重点チェックなど、調査を尽くし、証拠の保管を継続的に行うことが、リスク管理には重要です!
反社チェックを一定の水準で、継続的に行っていれば、善管注意義務を尽くし、過失がないと証明できる可能性も高まります。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら、証跡もフォルダごとに保管し、API連携により社内の従業員・顧客管理システムなどとも同期した、反社チェック体制を構築できるでしょう。
まとめ
反社勢力排除を規定する暴対法、組織犯罪処罰法、暴排条例、各業界の規制法について、反社規定を解説しました。
万一、取引先や企業内部に反社が紛れ込んだら、民事、刑事などのもめごとや、行政指導、罰則などのリスクもあります。
自社の信用を守るため、法律に準拠して、効率的に対策を行い、いざというときに法的効果を発揮する反社チェックの導入が効果的!
誓約書での確約、契約での反社条項など、トラブルに備えた法的に有効な契約書は、弁護士にも相談して用意するのがよいでしょう。
法令遵守が実際にできているかの確認と証明のため、定期的なチェック結果と、契約書、取引先や社員の名簿などを証跡として保管しておくことも大切。
RoboRoboコンプライアンスチェックなら、反社チェックの自動化と、結果のAI判定によるアラートで、社内システムとも連携した運用が可能です。
コストも安く、圧倒的な業務の効率化で、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、3,000社以上の導入実績!
判例から読み解く反社の法律Q&A
反社に関連する判例をご紹介しますので、ご参考になさってください!
反社条項がなくても契約解除できる?
契約解除が認められなかった判例があります。
信用保証協会による保証契約の締結後に、債務者が反社会的勢力であると判明したケースでは、「契約の意思表示に要素の錯誤はない」として、錯誤による解除が認められなかった最高裁判例があります。
契約書や約款の条項を改訂したら遡って適用できる?
改訂後の約款が適用できるとした判例があります。
預金契約の締結後に、反社条項(暴排条項)を追加したケースでは、預金契約の解約の有効性を認めた最高裁判例があります。
その後に民法が改正され、定型的な約款を用いた定型的な取引について、定型約款の変更をする可能性がある規定をするなどの要件を満たせば、定型約款の不利益変更を認めることが明文化されました。
反社関係者の近所の不動産売買に説明義務はある?
売り主の説明義務違反は、隠れた瑕疵にあたるとした判決があります。
土地の売買契約で、近くに暴力団事務所があることを知らされずに購入したケースでは、東京地裁は瑕疵担保責任を認め、損害賠償請求のうち、購入代金の20%分が認められました。
判例をご紹介しましたが、裁判で証拠を集めて、弁護士に依頼し、何度かの法廷を経て判決を勝ち取るまでに長い時間がかかります。
弁護士に相談して契約書を整備、RoboRoboコンプライアンスチェックで反社チェックを自動化すれば、法的リスクも軽減でき、コンプライアンス業務が効率化できます。