反社会的勢力の根拠は、反社会的勢力の法律から導きだされます。
お笑いタレントの闇営業騒動で話題になった反社会的勢力。一時期はテレビで報道されない日はありませんでした。反社会的勢力とのつながりが発覚し、お笑いタレントはテレビに出ることができなくなりました。
企業が反社会的勢力とのつながりがあることが発覚すると様々なリスクがあります。
個人だとしても就職できなかったり、結婚できなかったりということが起きることもあるでしょう。
この記事では反社会的勢力の法律から導きだされた定義や根拠について解説します。反社会的勢力の定義や根拠がわかれば、反社会的勢力とつながりを持たずに過ごすことができるでしょう。
また、反社会的勢力の根拠がよくわかり、反社チェックツールを使うことで反社会勢力を避けることができます。「転ばぬ先の杖」を手に入れておきましょう。
目次
反社会的勢力の定義
反社会的勢力と一口に言っても暴力行為、恐喝、詐欺、覚せい剤などを行う暴力団関係かな?くらいの認識でしょうか。
以下を説明することで反社会的勢力の定義がしっかり理解できるでしょう。
- 反社会的勢力の定義・根拠
- 反社会的勢力の具体例
- 反社会的勢力の事件
順番に解説します。
反社会的勢力の定義・根拠
詳しい定義は、2007(平成19)年6月19日に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」として政府から発表されています。
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。
反社会的勢力とは
◯暴力
◯威力
◯詐欺的手法
を駆使して経済的利益を追求する集団または個人
を意味します。
暴力団はもちろん反社会的勢力ですが、上記に含まれる個人も反社会的勢力といえます。
反社会的勢力の根拠となる具体例
反社会的勢力の具体例は以下のとおりです。
- 暴力団
- 暴力団関係企業
(暴力団が直接経営している、または資金提供している企業) - 総会屋
(株式会社の「株式を若干保有し、株主としての権利を権利行使を濫用することで会社から不当に金品を得ようとする者) - 社会運動標ぼうゴロ
(人権問題や環境問題に名を借りて企業等に対して違法、不当な要求を行っている者) - 政治活動標ぼうゴロ
(街宣活動等による組織の威力を行使して企業等に対して違法、不当な要求を行っている者) - 特殊知能暴力集団
(法律などの専門知識を悪用して株価操縦やインサイダー取引で証券市場や企業等から不当な利益を得ようとする者。税理士や弁護士が加わっていることもある)
暴力団関係者とは具体的にどのような集団のことでしょうか。
東京都暴排条例(第2条第4号)によると「暴力団関係者」は「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と規定されています。
「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」とは以下になります
- 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
- 暴力団員を雇用している者
- 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
- 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
- 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者
暴力団追放運動推進センターによる反社会的勢力の具体例として次の9つを挙げています。
- 暴力団
- 暴力団員
- 暴力団員であった時から5年を経過しない者
- 暴力団準構成員
- 暴力団関係企業
- 総会屋等
- 社会運動標ぼうゴロ
- 特殊知能暴力集団
- その他前各号に準ずる者
(引用:暴力団追放運動推進都民センター「暴力団対応ガイド総合版」)
上記のように「反社会的勢力」と言っても多種多様な集団や個人が存在していて、その線引きはあいまいです。
反社会的勢力の事件
反社会的勢力が関わった事件として3つ紹介します。
- 「みずほ銀行」暴力団融資事件
- 「餃子の王将」元社長射殺事件
- 「九設」倒産事件
1つずつ詳しく解説します。
「みずほ銀行」暴力団融資事件
みずほ銀行が暴力団に融資していることが発覚し、金融庁が業務改善命令を出した事件です。
2013年(平成25年)9月27日に金融庁は、株式会社みずほ銀行に対して業務改善命令を出しました。
金融庁HPによると理由は以下になると記載されています。
①提携ローンにおいて、多数の反社会的勢力との取引が存在することを把握してから2年以上も反社会的勢力との取引の防止・解消のための抜本的な対応を行っていなかったこと
②反社会的勢力との取引が多数存在するという情報も役員止まりとなっていること
(引用元:金融庁)
「餃子の王将」元社長射殺事件
餃子の王将の元社長が2013年(平成25年)12月19日に暴力団関係者から射殺された事件です。9年後の2022年(令和4年)10月28日、京都府警は特定危険指定暴力団・工藤会計の幹部である田中幸雄容疑者を殺人などの疑いで逮捕しました。
王将フードサービスと福岡県を拠点とする企業との間で貸付や不動産取引が行われ、それによるトラブルからの射殺だと考えられています。(参考:朝日新聞DEGITAL)
「九設」倒産事件
大分県の管工事や電気工事を手がける株式会社九設の社長が、暴力団関係者と飲食をともにしていたことが発覚し、銀行の融資を止められ、福岡県警の排除措置公表からわずか2週間足らずで倒産に至ったという事件です。
九設は従業員70人の地元では大手とされ、売り上げは年間50億円以上ありました。2021年(令和3年)4月27日に九設の社長が指定暴力団と親しい間柄だと認定され、福岡県警が「暴力団関係企業」として公表しました。
排除措置公表から2週間も経たない5月10日に同社は破産を申し立てました。倒産時の負債総額は約30億円だったとのことです。(参考:福岡の経済メディアNetIB-NEWS)
上記3件の事件を紹介しました。一度反社とのつながりが露見すると、順調だった企業でも2週間足らずで倒産に追い込まれることもあります。また、反社との金銭トラブルに巻き込まれると最悪命を落とすことさえあります。反社チェックができているか見直してみましょう。
反社会的勢力の特徴と根拠
反社会的勢力としては暴力団や暴力団関係企業など法人への対処が必要になりますが、実は個人にも気を付けなければなりません。
法人や個人に対して気を付けなければならない根拠をお伝えします。
法人の根拠
反社チェックは集団や法人に対して必要です。
会社経営をしていると多数の法人とお付き合いすることになるでしょう。その中に反社が紛れ込んでいる可能性もあります。反社とお付き合いをしていることがバレてから「反社だとは知りませんでした」と言ったところで通用しない世の中になっているのです。
「反社会的勢力の事件」で取り上げた「九設」倒産事件も「反社だとは知らなかった」と言ったところで通用しませんでした。
暴力団のフロント企業・舎弟企業が多いのは以下のとおりです。
- 建設業
- 金融業
- 人材派遣業
- 飲食業
また、暴力団のフロント企業・舎弟企業が多い地域も存在しています。
- 住吉会があり企業数の多い東京
- 山口組系の暴力団が多い名古屋
- 複数の暴力団拠点がある大阪
- 山口組がある神戸
- 工藤會がある北九州・福岡
以上のように業種や地域を挙げましたが、この業種・地域すべてが反社であるわけではなく、この業種・地域でなくとも反社であることが多々あります。
取引をするときには、反社チェックをしたり、取引先が反社であった場合に備えて反社会的勢力排除条項を記載しておくことは必要最低限の反社を避ける方法といえるでしょう。
個人の根拠
反社チェックは個人に対しても必要です。
個人事業主や法人の代表などはもちろんのこと、一般の人であっても、面接などの印象や書類だけでは誰が反社かわからないからです。
2020年10月22日、同志社大学の学生が持続化給付金200万円をだまし取った詐欺の疑いで逮捕されました。(参考:CHRISTIAN TODAY)
当時の同志社大学学長は「こうした反社会的行為に加担することがないよう強く注意を喚起します」と述べましたが、一般の人に見えながら反社会的行動をしている人物が実際に多数存在するのです。
反社は見た目では決して見抜くことはできません。そのような人が自社の採用に応募してきたり、取引先として現れたり、従業員の中に潜んでいる可能性もあります。
反社会的勢力の根拠である法律
反社会的勢力と関わりを持つと法人でも個人でも大変な目に遭うことはおわかりになったと思います。
どんな法律が反社会的勢力の根拠となっているかを知ることも重要です。反社の根拠となる法律や指針、条例は以下の3点です。
- 暴力団対策法
- 企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針
- 各都道府県の暴力団排除条例
順番に説明します。
根拠となる法律:暴力団対策法
反社の根拠となる法律は暴力団対策法です。正式名称は「市民生活や経済活動を侵食する暴力団の封じ込めを目的とする法律」で1992年(平成4年)3月に施行されました。暴対法とも呼ばれます。
当時盛んだった民事介入暴力を取り締まるために作られた法律です。
※民事介入暴力とは暴力団員が交通事故の示談や地上げ、債券取立てなどを市民に行い、不当な利益を得ること
暴対法の特徴は暴力団の指定制度を作ったことです。指定暴力団とは、構成員の犯罪履歴の割合が法令で定める比率以上であることなどの条件に該当する暴力団のことです。
その後1993年(平成5年)8月には不当な株の売買の要求、競売妨害などを禁ずる項目が加わりました。理由は暴力団の経済ヤクザ化を止めるためです。
根拠となる指針:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は2007年(平成19年)に「犯罪対策内閣会議」により公表されました。
暴対法により指定暴力団は一見おとなしくなりましたが、裏では組織を隠蔽したり、企業活動を装ったりしている暴力団も増えてきました。
また、政治活動や社会運動を標ぼうしている場合もあり、以前のようにはっきり「暴力団」だとわからなくなっていました。
企業はコンプライアンスの観点からも反社会的勢力と取引をしていない場合がほとんどではあるが、知らず知らずのうちに取引を行っている場合もあり、由々しき事態が進んでいたのです。
反社会的勢力と企業の関係遮断により、反社は資金提供を絶たれる形となるため、この指針が発表されたということになっています。
反社と企業の関係が絶たれれば、反社は資金源を絶たれ力を失っていくからです。
企業としても反社と関わりをもっているとどんな被害が及ぶかわからないため、「反社会的勢力による被害を防止するための基本原則」が提示されました。
以下の5つになります。
- 組織としての対応
- 外部専門機関との連携
- 取引を含めた一切の関係遮断
- 有事における民事と刑事の法的対応
- 裏取引や資金提供の禁止
根拠となる条例:各都道府県の暴力団排除条例
2010年(平成22年)4月1日に福岡県が全国に先駆けて暴力団排除条例を施行しました。2011年(平成23年)10月1日に東京都、沖縄県で施行され、すべての都道府県に暴排条例が施行されるようになりました。暴排条例は都道府県だけでなく、市町村でも出されています。
暴対法は、どちらかというと指定暴力団について取り締まる法律でしたが、暴排条例は反社会的勢力全体を規制する法律として機能しています。
また、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」とは違い、法的拘束力もあるため、違反すれば行政勧告・公表の対象となり、刑事罰もあります。この行政勧告により株式会社九設が倒産に追い込まれたことは「反社会的勢力の事件」でも紹介した通りです。防犯条例は、企業だけでなく地方自治体の責務についても規定してあり、地方自治体で法律と同等の効力を発揮し、反社会的勢力の撲滅に寄与しています。
反社チェックの方法
反社会的勢力と関わっていることがわかると、企業は倒産に追い込まれたり、暴力行為を受ける恐れもあります。(餃子の王将元社長射殺事件など)
このような事件に巻き込まれないように反社チェックを行う必要性があるでしょう。
反社チェックとは、取引の開始前に、その取引先が反社会的勢力ではないか、また反社会的勢力と関係がないかどうかを確認することです。
反社チェックは、取引先との取引前はもちろん自社の従業員を雇うときにも必要です。
取引前、雇う前だけでなく反社会的勢力とのつながりがないか都度確認すべきでしょう。
チェックする方法としては以下5つがあります。
- Google検索をする
- 警察・暴追センターに問い合わせる
- 専門の機関に調査を依頼する
- 反社会的勢力排除条項を設定する
- 反社チェックツールを活用する
順番に解説します。
Google検索をする
ネット記事を検索する方法で、誰でも手軽に無料でできます。
検索するときには「会社名」「取締役の名前」「株主の名前」と以下のキーワードを組み合わせましょう。
- 反社
- 反社会勢力
- 暴力団
- 違反
- 不正
- 詐欺
- 虚偽
- 半グレ
たとえば「〇〇株式会社 反社」「〇〇〇〇(人名) 詐欺」などです。
怪しいなと思ったらすぐに検索してみましょう。
警察・暴追センターに問い合わせる
警察や暴追センターに問い合わせてみるのもおすすめです。警察や暴追センターは企業や個人では調べられないところまで調査可能です。
暴追センターとは「暴力追放運動推進センター」のことで、暴力団対策法施行時に開設された組織です。暴力団被害者の方が無料で相談できます。全都道府県に設置されているので、対面での相談はもちろん電話、メールでも相談できます。
専門の機関に調査を依頼する
専門の機関とは、反社の情報を持っている調査会社や興信所のことです。企業だけで反社を調べることはリスクもあるため、上記の調査会社や興信所を頼るのもよいでしょう。専門の機関なので、時間をかけずに効率よく反社チェックができます。ある程度の費用がかかるのがデメリットですが、相手が反社だったことを考えるとリスク回避としてはいい投資となるでしょう。
反社会的勢力排除条項を設定する
反社会的勢力排除条項とは、契約をする際に反社会的勢力でないことを相互に示す条項のことで、暴排条項(暴力団排除条項)とも呼ばれます。
取引相手が反社会的勢力排除条項を拒否した場合は、反社である確率が高いでしょう。反社でないならすぐに条項にサインするからです。
反社会的勢力排除条項を締結した相手が反社だとわかれば、すぐに契約を解除できるようにしておきましょう。
反社会的勢力排除条項は、取引先の企業だけでなく雇用する社員や株主に対しても締結しておく必要があります。
反社チェックツールを活用する
反社チェックツールを使って反社チェックをする方法があります。反社チェックについてのノウハウを持っていなくても、反社チェックツールで検索することで誰でも簡単に反社かどうかを見分けることができるのです。
反社チェックツールは有料ですが、時間短縮と情報の制度を上げることができます。反社チェックツールといってもいろいろな会社が出しているのでメリット・デメリットを考えながら信用できる会社のものを選ぶのがいいでしょう。
まとめ
反社会的勢力の根拠として定義や法律について解説しました。
反社会的勢力は、暴力団だけでなくフロント企業や舎弟企業などに及び、少し調べただけではわからないようになっています。
反社会的勢力を排除することが必要で、そのためには反社チェックをすることが大切です。
反社チェックに、RoboRoboコンプライアンスチェックを使えば、かかる工数や人数、ランニングコストを削減でき、一定水準のチェックを継続的に実行するのも簡単です。
特許出願中の独自機能を搭載し、3段階の反社アラートで、ロボットが自動的に反社会的勢力の疑いがある対象を発見してくれます。
よくある質問
反社会的勢力の根拠についての質問をまとめました!
反社の定義は?
反社会的勢力とは
◯暴力
◯威力
◯詐欺的手法
を駆使して経済的利益を追求する集団または個人
を意味します。
暴力団はもちろん反社会的勢力ですが、上記に含まれる個人も反社会的勢力といえます。
反社の特徴は?
- 建設業
- 金融業
- 人材派遣業
- 飲食業
また、暴力団のフロント企業・舎弟企業が多い地域も存在しています。
- 住吉会があり企業数の多い東京
- 山口組系の暴力団が多い名古屋
- 複数の暴力団拠点がある大阪
- 山口組がある神戸
- 工藤會がある北九州・福岡
ただ、個人になると特に特徴といったものはなく、調べるしかありません。
反社の根拠となる法律は?
- 暴力団対策法
- 企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針
- 各都道府県の暴力団排除条例
暴力団対策法では指定暴力団の取締まりができるようになりました。
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、暴力団だけでなく、大きなくくりの反社会的勢力までの被害を防止するための指針が出されましたが、法的拘束力や罰則はありません。
2010年〜2011年には全国の都道府県で暴排条例が出され、法的に行政処分や罰則を出せるようになりました。
反社チェックのおすすめは?
- Google検索をする
- 警察・暴追センターに問い合わせる
- 専門の機関に調査を依頼する
- 反社会的勢力排除条項を設定する
- 反社チェックツールを活用する
無料で自社でできること、有料になるサービスを使うことなどさまざまな方法がありますが、RoboRoboコンプライアンスチェックなどの反社チェックツールを使えば時間短縮をして安全に制度の高い反社チェックができるでしょう。