反社チェックはいつするのが良い？タイミングとポイント、具体的な方法について徹底解説

反社チェックはいつ、どのタイミングで実施すべきでしょうか？

反社チェックとは、企業が反社会的勢力の関わりを回避するために行う手段を指します。反社と接点を持った企業は、自社だけでなく、取引先や関係者など、社会全般に対して大きな悪影響をもたらす結果となります。

この記事では、主に企業のコンプライアンス担当者が、反社チェックを行うタイミングやポイント、方法について詳しく解説します。

こうした情報を踏まえ、企業の担当者は反社チェックを問題なく実施できるよう、積極的に取り組んでいただきたいものです。

反社チェックのタイミングとポイントは？

最初に結論から言えば、反社チェックを行うタイミングは「早ければ早いほどよい」のが事実です。

その理由は、取引先と契約を締結して実際に金銭の授受を実行した後では、その時点で反社の活動資金になる金銭を既に支払ってしまっているため、意味がないからです。

このため、反社チェックのタイミングは、取引先との契約締結後や債務の履行前でも手遅れです。なぜなら、実際の金銭のやり取りがなくても、実体として既に関係を持ってしまっているからです。

当然ながら、契約後に取引先が反社であることが発覚した場合には、その時点で必要な対処を行うこととなります。

また、反社チェックのタイミングと同様に重要となるのが、チェックする際のポイントです。

反社チェックのタイミングとポイントについて詳しく解説します。

反社チェックが必要な理由

反社について改めて説明すると、個人や集団として活動する「反社会的勢力」のことです。

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律（暴力団対策法）」では、「集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体等」と定義されています。

そして、反社は暴力や恐喝、また詐欺といった、一般的な倫理観とはかけ離れた手段で不当な経済的利益を得ようとします。

これに対抗するために行う反社チェックは、企業が自社の取引先や契約相手が反社ではないか、また反社と繋がりがないかについて確認する手段です。

反社は、明らかにそれと判る暴力団や総会屋だけではなく、一般企業を装って社会に潜んでいる場合もあります。こうした反社と一切の関わりを持たないよう、反社チェックを行うことが非常に重要となります。

以下に、主な理由について解説します。

企業の健全な運営継続

一般企業が反社と取引を行ったことが明らかになれば、その企業が、たとえ結果的にであっても反社に資金を提供したとみなされ、社会から厳しい評価を下される危険性があります。

仮に取引相手が反社であると認識していなかった場合でも、外部からはその実態や真偽は確認できません。

どのような理由や背景があったとしても、一旦反社と取引をしてしまうと、その企業は自社の信用を失墜し、顧客離れが進み、更には取引や融資の停止といった重大なペナルティにまで繋がる懸念があります。

また、反社と関わった事実を隠蔽（いんぺい）した場合には、厳しい行政処分や罰則が科せられることになります。

そうなれば、企業が健全な運営を継続することは不可能です。

反社の資金源にNO!

反社の資金源は多種多様です。

いわゆる暴力団が企業の「用心棒」として行動する際に得る収入をはじめ、特殊詐欺や債権回収、違法薬物売買や賭博、自動車窃盗やコピー商品のインターネット売買、ダフ屋行為や密漁、アダルトサイト運営・興行などなど。

表面化していて判別しやすいものや、地下に潜って見分けにくいものまで、非常に複雑な資金源を有しています。

反社が活動を拡大し、資金源を豊富に確保してしまうと、結果的には社会の治安にも大きな悪影響をもたらします。

反社と取引すると、このような悪質な活動の資金源となり、大きな問題となります。反社チェックをしっかりと行うことで、反社の資金源を断つことが大切です。

従業員の保護

反社と関わりを持つと、上述のとおり、企業のイメージ損失や社会的信用の失墜に繋がってしまいます。

そして、場合によっては、反社との関係を知りえた第三者がこの状況を悪用し、当該企業に対して不当な要求を行って、これに応諾しない場合は反社とのつきあいを世間に公表するなどの脅迫を受ける恐れも生じます。

さらに、当該企業の従業員に対しても、待ち伏せしたりなどして、直接の脅迫や強要を行うことすらあります。そうなれば、従業員の精神的・肉体的苦痛は非常に大きくなり、企業としての活動に甚大な影響を及ぼしてしまう結果となります。

自社の従業員を外部からの不当な要求から守り、保護するためにも、反社チェックは必要不可欠です。

政府や自治体との連携

政府は、反社との取引を防止するため、2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を示しています。

この指針には、反社会的勢力による被害を防止するための基本原則が明記されており、企業は、この基本原則に基づいて行動することで、暴力団をはじめとする反社との取引に際しての禁止事項や、また一旦反社と関わり持ってしまった場合に行う対処方法や具体的行動の内容が確認できます。

この政府指針を受け、各省庁や地方自治体でも様々なガイドラインを作成しているので、こうした指示やガイドラインを活用し、連携していくことが重要なポイントとなります。（参照：法務省）

金融庁の指導

上記の政府指針を受け、金融庁ではその翌年となる2008年に、金融商品取引業向けの総合的な監督指針（参照：金融庁）を定めています。この指針には、反社会的勢力からの被害を防止するための具体的かつ詳細な規定が明記されています。

一例を挙げれば、各金融機関に対して、取引企業に関する事前審査やデータベースの強化などを義務づけています。

こうした金融庁の指針は、金融機関だけでなく、一般企業にも有益な要素となります。一般企業でもこの指針を活用し、反社を十分理解した上で、反社対策を強化することが求められます。

都道府県の暴力団排除条例

全国の各都道府県では、それぞれが暴力団排除条例を定め、一般市民が暴力団との接触を防止することを目的として運営しています。

この条例ではまた、企業に対しても、外部との取引や契約に際して、当該取引先に対する反社チェックの実施を求めています。

代表的な事例として、下記に東京都と大阪府の暴力団排除条例を挙げます。

• 東京都暴力団排除条例
• 大阪府暴力団排除条例

なお、この条例に基づく反社チェックは「努力義務」であり、仮にチェックを実行しない場合であっても具体的な罰則の対象とはなりませんが、罰則の有無に拘わらず、企業としては自己防衛のためにも是非活用すべきです。

反社チェックのタイミング

企業活動においては、常に外部の取引先や関係者との連絡・調整などの接触が必要となります。その際には、取引先企業や株主の中に反社会的勢力との関係が疑われる人物や組織が存在していないか、取引前にしっかりと確認しておくことが重要です。

また、外部だけでなく、企業の内部にいる社員や関係に対しても、予断なく反社との関わりがないかを注意しておく必要があります。

社内外を通じて必要となる、具体的な反社チェックのタイミングについて解説します。

外部との取引開始に際して

まず第一に、企業が外部の企業や団体などと「新規に」取引や契約を開始するタイミングで反社チェックをすることが重要となります。

その際の注意点としては、新規取引先の経営者や関係者、また取引先と距離の近い間柄である弁護士や税理士などに至るまで、幅広くチェックすることがポイントとなります。

なお、契約締結の前までに反社チェックが間に合わない場合もありますので、チェックの結果次第では契約破棄が可能となる旨を契約書に記載しておくと安心です。

さらに、こうした反社チェックの取組を既存の取引先に対して過去に実施していなかった場合には、現在継続中の取引先に対する反社チェックも行う必要があります。

反社チェックは一度で終了するのではなく、継続的・定期的に継続して実施することが大切です。

役員就任や社員の雇用に際して

次に、自社で定例あるいは臨時に役員を改選した際、新規に役員就任したタイミングで反社チェックをすることがポイントです。

また、社員の雇用は、役員改選とは異なり年間を通じて頻繁に行われるため、年中行事ともいえますが、新入社員に対してその都度、反社チェックすることが必要です。

役員に対する反社チェックは就任前に、また従業員への反社チェックは雇用前に、それぞれ実施します。

なお、役員に対する反社チェックに際しては、当該役員本人だけではなく、その配偶者や家族にまでチェックを拡大する必要があります。社員の新規雇用に際しては、全員に対して反社チェックに関する誓約書の提出を求めることが大切です。

新規上場に際して

そして、反社チェックのタイミングとしては、企業が新規上場するタイミングが挙げられます。

その理由として、例えば東京証券取引所の上場基準に、反社会的勢力排除の項目が下記のような内容で明記されていることなどが挙げられます。

「新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること。」

引用元：日本取引所「上場審査の内容」

このように、上場した際に反社会的勢力との関係が発覚すれば、上場廃止となる危険性もあります。そして、上場廃止になれば株価の大幅下落などにもつながり、会社経営は大きな危機に瀕（ひん）してしまいます。

また、新規上場の際には当該企業が所轄の証券取引所に対して「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」を提出することが義務づけられています。

必然的に求められることとなる確認書を正確に記載・提出する際に、その裏付けとなる反社チェックを実施することとなります。

なお、この確認書に明記すべき内容としては、当該企業と子会社の役員や上位株主、また取引先企業などが挙げられます。

所轄の証券取引所では、当該企業が提出した確認書をもとに、独自調査を実施して、事実関係の詳細を確認します。

反社チェックのポイント

通常の企業活動においては、外部の取引相手に対して普段から注意深くその行動や事業内容を観察しておくことで、相手が反社なのかどうかを素早く見極めることが可能となります。

この章では、反社チェックのタイミングと同様に大切となる、反社チェックのポイントについて解説します。

取引経緯をチェックする

反社チェックのポイントとして、まずは外部との取引を開始したそもそもの理由や背景と経緯、またそれに至るまでの全体的な流れなどについて確認しておくことが大切です。

取引や契約に際して、その相手が、当該契約締結を特段理由もないのに急いでいたり、また普通に考えれば考えられないような好条件を提示してきたりと、不審な点が見受けられる場合があります。

このような場合には、怪しい兆候を見逃さないためにも、過去の取引経緯を詳しくチェックすることが大切です。

また、取引相手自身に問題がなくても、その取引を仲介した業者などが反社であったという事例も多々報告されています。外部との取引経緯について、漏れなくチェックすることがポイントとなります。

一例を挙げると、大分県にある電気設備関連事業者（九設）は、同社の社長が反社である暴力団に名義を貸し、違法にキャバクラを営業させたとして警察に取り調べられました。

その際、社長は当初「相手が暴力団員とは知らなかった」と述べていますが、結局同社は、この事件の影響によって社会的制裁を受け、自己破産に追い込まれました。（参照：NetIB-NEWS）

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契約書で反社条項を明記する

次に、契約書における反社条項の活用について挙げていきます。

前述したとおり、全国の地方自治体が定める暴力団排除条例においては、契約書に暴力団排除に関する特約条項としての「努力義務」を規定しています。

• 東京都暴力団排除条例
• 大阪府暴力団排除条例

取引相手がこの書面を確認した際に、契約書上で該当する項目について削除や修正を申し出てきた場合、その相手には反社の可能性が疑われます。

また、取引相手に対して反社会的勢力ではない旨を表明する確約書の提出を求める方法も同様に効果的です。その際に、相手が提出を躊躇したり、拒否したりといった態度を示した場合には、非常に危険なので当該取引を中止すべきでしょう。

相手の所在を確認する

そして、実際に取引相手についての裏づけを取ることが大切となります。

通常の場合、取引に当たっては、営業や渉外を通じて相互に事務所の所在地などは当然のこととして確認していますが、それがネットやメール、電話だけでの場合には、本当に交渉相手がしっかりと所在しているかどうか不明確です。

こうした状況では、万一に備えて交渉相手の事務所や営業所に赴き、その実態を確認することが大切です。

実際に現地を確認した際に、交渉経緯で聞いていた相手の情報と比べるとオフィスの規模が小さく感じられたり、不審な人物が出入りしている場合には、反社の疑いが生じます。また、人の出入りが全く無いような場合には、ペーパーカンパニーの可能性も考えられます。

少し手間はかかりますが、物理的な状況確認も大切です。

反社チェックの方法

反社チェックの必要性とそのタイミング、ポイントについて解説しました。

次に、反社チェックの具体的な方法について解説します。

主な項目ごとにみていきますが、大切なことは、まず自社で可能な範囲で取引相手に関する情報をしっかりと把握する努力を怠らないことです。

そして、自社での対応が難しい場合には、専門調査機関に依頼し、的確なアドバイスを受ける姿勢も大切となります。

法人登記を調査する

企業の登記簿と呼ばれるのが法人登記ですが、この法人登記には当該企業に関する様々な必要情報が集約されています。

そして、この登記情報は国税庁の法人番号公表サイトで確認可能なので、必ず事前に確認することが大切です。（参照：国税庁）

法人登記を調査する際のチェックポイントとしては、反社の可能性を確認するため、主に次の点を確認します。

• 商号や本社所在地が度々変更された経緯がある
• 法人番号が存在しない
• 事業のイメージが明確でない項目が多数掲載されている

このような場合には、当該企業の活動実態が不透明で、本当に正しく事業を行っているのか疑わしいので、注意が必要です。

少しでも不審な点があれば、徹底的に調査することをお勧めします。

監督官庁サイトの行政処分情報や、ネットや新聞記事の情報を確認する

取引先が該当する業界を監督する官庁のサイトに掲載されている行政処分情報や、インターネット、また新聞記事などで相手の様々な情報を確認することが可能です。

⑴監督官庁サイト

取引相手が許認可に関する業界の場合、各監督省庁のサイトで当該企業に関する行政処分の情報を公開しています。いくつかの事例サイトを挙げます。

• 建築・宅建業者：
  国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」（参照：国土交通省）
• 金融商品取引業：
  金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等」（参照：金融庁）
• 人材サービス業：
  厚生労働省「人材サービス総合サイト」（参照：厚生労働省）

これ以外にもさまざまなサイトがあるので、確認してください。

⑵インターネット検索

インターネットの検索エンジンを使って、取引相手に関する様々な情報を個別に確認する方法もあります。

検索の際には、相手の法人名や役員名と、暴力団・違法・行政処分・詐欺・不正などといったネガティブキーワードを組みあわせて検索すると照会できる場合があります。

⑶新聞記事検索

また、新聞記事のデータベース（DB)検索をする方法もあります。

新聞各紙は過去の新聞記事をDB化しているので、取引先における過去の違法行為やスキャンダル、行政処分の内容などが確認できます。検索キーワードとして、取引先の法人名や役員氏名などを入力すると照会できます。

ネットと新聞それぞれの特徴として、最新の情報はインターネットで、また古い過去の情報は新聞記事が、それぞれ検索する際に有利となります。

業界団体や暴追センター、専門調査機関に調査を依頼する

さらに、業界団体や暴追センター、専門調査機関に調査を依頼することが可能です。

それぞれについてみていきます。

⑴業界団体

業界団体とは、それぞれの業界の利益を確保する目的で構成されている団体です。

取引先が所属する業界団体では、それぞれが独自の反社DBや照会システムを構築している場合が多いので、当該の業界団体に確認します。

主な団体としては次のものが挙げられます。

• 全国銀行協会
• 日本証券業協会
• 不動産流通推進センター

上記DBでは反社関連の情報を照会可能です。

⑵暴追センター

暴力追放運動推進センター（通称「暴追センター」）が全国の各都道府県に設置されています。

暴追センターの対応範囲としては、取引先が反社であるか否かの判定や関連情報の提供、相談業務や、実際に反社から被害を受けた企業や個人の救済措置などが挙げられます。

暴追センターの会員になれば反社に関するデータを定期的に入手可能なので、活用すべきです。

なお、データベースを照会するためには、年会費5万円を支払って各センターの賛助会員となる必要があります。東京都の場合について下記に挙げます。

• 東京都の賛助会

⑶専門調査機関

信用調査会社や興信所などの専門調査機関を活用する方法があります。

まずは自社で取引先に関する企業情報の確認やDB検索などを丁寧に実施し、取引先について調査することが大切です。

その段階で取引先に関する不審な点が確認された場合は、専門調査機関に依頼して更に詳細な調査を実施すべきです。

依頼を受けた専門調査機関は、内定調査や独自の反社DB活用など、プロ機関としてあらゆる手段を駆使しながら詳細の調査を実施しますので、信頼できます。

なお、当然ながら専門機関に依頼する場合には相応の費用が発生し、また調査が完了するまでに時間もかかるので、事前に確認することが大切です。

チェックツールを活用する

反社チェックを厳密に行うのは、不慣れな企業にとっては大変な作業となりますが、ネット上で簡便に反社チェックが可能なツールがあります。

「RoboRoboコンプライアンスチェック」は、取引先が法令を遵守していなかったり、企業倫理や社会規範に反するような活動がないかを自動でチェックができるクラウドサービスです。

是非一度活用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

企業が外部の取引先と連携して業務を行う際に反社チェックが必要となる理由、反社チェックのタイミングとポイント、また具体的な反社チェックの方法について詳しく解説しました。

企業にとって、反社チェックを通じたコンプライアンスの遵守は自社の社会的信用に直結する最大の要点となります。

この記事を読んで、最適な方法でしっかりと反社チェックを行っていただきたいものです。